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若年女性の鉄欠乏性貧血、8週間の鉄剤補給で倦怠感と筋持久力が改善 VO2maxは限定的効果

鉄欠乏性貧血の若年女性に対して経口鉄剤による介入を行ったところ、倦怠感の評価スコアと筋持久力が有意に改善したとする研究結果が報告された。一方で筋力は有意な改善がなく、VO2maxは本研究における有意水準未満の改善にとどまったという。

若年女性の鉄欠乏性貧血、8週間の鉄剤補給で倦怠感と筋持久力が改善 VO2maxは限定的効果

鉄欠乏性貧血に対する経口鉄剤の有用性を単群前後研究で評価

鉄欠乏性貧血は世界で最も一般的な栄養障害ということができ、とくに生殖年齢の女性では、月経による鉄の喪失だけでなく、体重を減らすという目的での食事制限が、鉄欠乏のリスクを高めている。鉄欠乏性貧血の自覚症状としては倦怠感が多く、これには持久力や筋肉機能の低下が関与していると考えられる。

鉄欠乏性貧血に対して、体内の鉄貯蔵を増やすための栄養指導が行われるが、食品中の鉄含有量と吸収効率を考慮すると、食品由来の鉄のみでは十分な改善が困難と考えられることも少なくない。そのような場合の医学的介入として経口鉄剤の処方が主要な選択肢となる。経口鉄剤による身体能力への影響が既に複数の研究で報告されている。しかし既報研究は貧血のない鉄欠乏状態への介入であるなど、鉄欠乏性貧血による筋力や筋持久力などへの影響は不明点が残されている。

これを背景として、この論文の研究では、若年の鉄欠乏性貧血の女性の疲労と身体機能に焦点を当て、経口鉄剤服用の有用性を検討している。

硫酸第一鉄494.5mgを8週間の服用で、疲労や筋肉機能が改善するか?

研究参加者は18~30歳の鉄欠乏性貧血の女性23人だった。貧血以外の慢性疾患、過去4カ月以内の献血歴、喫煙、妊娠または授乳中、研究参加3カ月前以降のビタミン、ミネラル、ハーブなどのサプリメントの摂取、および重度の貧血(ヘモグロビンが8g/dL未満)などに該当する女性は除外されている。

研究デザインは対照群を置かない単一群に対する介入の前後研究で、全員が1日160mgの鉄(硫酸第一鉄247.25mgを朝夕2回)、8週間服用した。吸収効率を高めるため、朝は朝食摂取の1時間以上前、夕方は夕食摂取の1時間以上後に服用するよう指示した。

評価項目と統計解析

介入の効果は、倦怠感、筋持久力、筋力、有酸素運動能力について検討された。

これらのうち倦怠感については、貧血女性の倦怠感の評価として妥当性が検証済みの自記式質問票である多次元疲労尺度(multidimensional fatigue inventory;MFI-20)を用いて、全般的な疲労、身体的疲労、精神的疲労、活動性の低下、モチベーションの低下を評価した。MFI-20の合計スコアの範囲は4~20点で、スコアが高いほど疲労が強いと判定する。

筋持久力は右膝を90°に屈曲しその姿勢を維持できる時間で評価、筋力は大腿四頭筋の等尺性筋力を評価、有酸素運動能力は20mシャトルランで評価した。

これら合計8項目の介入前後の変化の有意性は、0.05を8で除した値である0.00625を有意水準として設定し検討した。なお、事前の統計学的検討でこの有意性の評価に必要なサンプルサイズは21と計算されていた。

経口鉄剤の服用で倦怠感とともに筋持久力が改善

研究に参加した23人のうち7人が脱落し、解析は16人を対象に行われた。この16人は年齢21.69±1.92歳、BMI 21.32±2.88だった。

介入により有意な改善が認められた項目

8週間の介入後、以下に示すように、貧血の改善とともに倦怠感の改善、および筋持久力の改善が認められ、いずれも有意だった。

貧血関連指標

ヘモグロビンは介入前が10.19±1.27g/dL、介入後は12.37±0.97g/dLで、平均差(MD)=2.18g/dL(95%CI;1.67~2.68)、血清フェリチンは同順に8.87±3.3μg/L、26.19±9.19μg/L、MD=2.19μg/L(12.64~21.98)、いずれも有意に改善していた(p<0.001)。

倦怠感

疲労尺度(MFI-20)の総合スコアは介入前が15±1.82、介入後が10.31±1.35で、MD=-4.69(-5.8~-3.57)、身体的疲労はMD=-4.88(-5.88~-3.87)、活動性の低下はMD=-3.63(-4.61~-2.63)であり(以上はいずれもp<0.001)、精神的疲労(p<0.001)およびモチベーションの低下(p=0.006)も有意に改善していた。

筋肉パフォーマンス

筋持久力は26.43±14.95秒、36.41±12.13秒、MD=3.09秒(3.39~16.57)であり、有意に改善していた(p=0.006)。

介入による変化が非有意だった項目

一方、大腿四頭筋の筋力は介入前が24.77±6.65kg、介入後が24.74±6.64kgでMD=-0.03kg(-0.39~0.33)であり、有意な変化がなかった(p=0.86)。また、VO2maxは同順に中央値26.6、29.6mL/kg/分と上昇していたものの(p=0.008)、事前に設定していた有意水準(p<0.00625)には至らなかった。

著者らは、「8週間の鉄補給により、鉄欠乏性貧血の筋持久力は改善したが、筋力は改善しなかった。これらの身体的改善は、ヘモグロビンと血清フェリチンの上昇、そして倦怠感スコアの低下によって説明できる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Efficacy of 8-week oral iron supplementation on fatigue and physical capacity in young women with iron deficiency anemia: An uncontrolled pilot clinical trial」。〔PLoS One. 2025 Oct 16;20(10):e0334499〕
原文はこちら(PLOS)

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