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肥満の男性と妊孕性の関連を総括 生殖能力は減量で改善する? 急激な減量は逆効果?

肥満は男性不妊の一因として知られているが、減量をすることで妊孕性は改善するのだろうか。また、近年、減量の手法として急速に広がっている薬剤による減量と、非薬物療法の減量で、妊孕性への影響はことなるのだろうか。このような疑問に関するシステマティックレビューの報告を紹介する。

肥満の男性と妊孕性の関連を総括 生殖能力は減量で改善する? 急激な減量は逆効果?

治療可能な男性不妊の一因としての肥満。その治療により妊孕性が改善するのか

不妊症の半数は男性に原因があるとされている。男性不妊は、解剖学的要因や遺伝的要因または染色体異常によるものの場合、治療が困難とされる。しかしそれら以外に、喫煙、飲酒、薬物乱用、そして慢性疾患である肥満や糖尿病など、修正可能な男性不妊のリスク因子も知られている。

これらの中で肥満については、例えば普通体重の男性に比べて肥満男性の不妊症の頻度は約50%高いという報告がある。また、肥満は精子数、精子の運動性、DNA断片化などと関連があるとする報告もみられる。

ただし、肥満に該当する男性不妊症患者が減量した場合に、妊孕性がどの程度改善するのかは明らかにされていない。減量・代謝改善手術やGLP-1受容体作動薬により、効果的に減量を達成できる肥満症治療が普及したことにより、減量による男性不妊改善効果を臨床疑問として検討する意義が従来よりも高まっている。

こうした背景のもと、今回取り上げる論文の研究では、男性不妊症の肥満者の減量による妊孕性への影響を、システマティックレビューとメタ解析により検討している。

システマティックレビューの手法

文献検索には、PubMed、Web of Science、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Scopusが用いられ、2023年12月6日に検索を実施し、2024年12月に新たに追加された論文の有無を確認した。

包括基準は、肥満・過体重(BMI25以上)で生殖年齢(18~50歳)の男性を対象に、減量効果が確立されている介入(食事・運動介入、減量・代謝改善手術、薬物療法の三つ)を行い、介入前後の生殖能力(精液分析、妊娠率、生殖補助医療のアウトカム)を評価している研究で、英語で報告されているものとした。除外基準は、動物実験、学会報告、レター、メタ解析、英語以外の論文、未発表論文とした。研究参加者に50歳以上の男性が含まれている場合、全体の平均年齢+1標準偏差が50歳未満であれば適格とした。

一次検索で2万3,673報がヒットし、重複削除後の1万3,358報を2名の研究者が独立してスクリーニングを行い、58報を全文精査の対象とした。採否の意見の不一致は討議により解決した。

良好な生活習慣は妊孕性の高さと関連し、急激な減量は良くも悪くも働く可能性を示唆

最終的に、32件の研究報告が適格と判断された。研究手法が類似しているメタ解析可能な報告が2件以上ある場合にはメタ解析を実施し、5件以上ある場合はメタ回帰分析を実施した。メタ解析に適さない報告については、ナラティブレビューを実施している。

ここでは、食事・運動介入、減量・代謝改善手術、薬物療法という三つの介入のメタ解析の結果の一部を紹介する。

生活介入(食事・運動)による減量の妊孕性への影響

並行群間無作為化比較試験のメタ解析

生活介入による精液量への影響を検討した並行群間無作為化比較試験の報告は3件で、すべて対照群と有意差がなく、メタ解析の結果も非有意だった(標準化平均差〈SMD〉=0.03〈95%CI;-0.12~0.18〉、異質性〈I2〉=0.0%)。

生活介入による精子濃度への影響を検討した並行群間無作為化比較試験の報告は4件で、1件は介入による有意な改善を報告し、他の3件は非有意だった。メタ解析の結果は非有意だった(SMD=6.66〈-7.21~20.53〉、I2=51.9%)。

生活介入による精子の運動率への影響を検討した並行群間無作為化比較試験の報告は3件で、2件は介入による有意な改善を報告し、他の1件は非有意だった。メタ解析の結果は非有意だった(SMD=9.24〈-1.94~20.41〉、I2=89.4%)。

生活介入による精子の正常形態率への影響を検討した並行群間無作為化比較試験の報告は2件で、1件は介入による有意な改善を報告し、他の1件は非有意だった。メタ解析の結果は非有意だった(SMD=4.77〈-4.67~14.20〉、I2=85.3%)。

前後研究・観察研究のメタ解析

生活習慣と精液量との関連を検討した前後研究・観察研究の報告は5件で、すべて関連が非有意であり、メタ解析の結果も非有意だった(SMD=0.07〈-0.03~0.16〉、I2=0.0%)。

生活習慣と精子濃度との関連を検討した前後研究・観察研究の報告は6件で、すべて関連が非有意であり、メタ解析の結果も非有意だった(SMD=1.29〈-1.03~3.61〉、I2=23.6%)。

生活習慣と精子の運動率との関連を検討した前後研究・観察研究の報告は5件で、1件のみ関連が非有意で、その他はすべて有意な関連を報告しており、メタ解析の結果も有意だった(SMD=10.56〈8.97~12.15〉、I2=0.0%)。

生活習慣と精子の正常形態率との関連を検討した前後研究・観察研究の報告は4件で、1件のみ関連が非有意で、その他はすべて有意な関連を報告しており、メタ解析の結果も有意だった(SMD=0.59〈0.23~0.94〉、I2=0.0%)。

生活習慣と精子のDNA断片化との関連を検討した前後研究・観察研究の報告は4件で、1件のみ関連が非有意で、その他はすべて有意な関連を報告していた。メタ解析の結果は非有意だったが、研究間の異質性が顕著だった(SMD=-6.95〈-16.05~2.15〉、I2=98.3%)。

減量・代謝改善手術による妊孕性への影響

減量・代謝改善手術による精子量への影響を検討した研究の報告は13件で、4件は術後の有意な改善を報告し、1件は有意な悪化を報告していた、他の8件は非有意だった。メタ解析の結果は非有意だった(SMD=0.13〈-0.26~0.52〉、I2=88.6%)。

減量・代謝改善手術による精子濃度への影響を検討した研究の報告は13件で、3件は術後の有意な改善を報告し、1件は有意な悪化を報告していた、他の9件は非有意だった。メタ解析の結果は非有意だった(SMD=-4.84〈-18.23~8.54〉、I2=99.2%)。

減量・代謝改善手術による精子の運動率への影響を検討した研究の報告は12件で、3件は術後の有意な改善を報告し、2件は有意な悪化を報告していた、他の7件は非有意だった。メタ解析の結果は非有意だった(SMD=2.00〈-4.54~8.54〉、I2=96.5%)。

減量・代謝改善手術による精子の正常形態率への影響を検討した研究の報告は13件で、術後の有意な改善と有意な悪化の報告がそれぞれ4件であり、他の5件は非有意だった。メタ解析の結果は非有意だった(SMD=0.10〈-1.75~1.95〉、I2=95.8%)。

減量・代謝改善手術による精子のDNA断片化への影響を検討した研究の報告は3件で、2件は術後の有意な改善を報告し、他の1件は有意な悪化を報告しており、メタ解析の結果は非有意だった(SMD=-0.89〈-13.68~9.90〉、I2=92.8%)。

薬物療法による妊孕性への影響

メトホルミン投与による精子濃度および精子の正常形態率への影響を検討した研究が2件あり、いずれも1件は有意な改善を報告し、他の1件は非有意と報告していた。メタ解析の結果は、精子濃度については非有意である一方(SMD=1.28〈-5.07~7.62〉、I2=74.2%)、正常形態率は有意な改善が示された(SMD=4.40〈1.94~6.86〉、I2=33.6%)。

リラグルチド投与による精子濃度の影響を検討した研究が3件あり、1件は有意な改善を報告し、他の2件は非有意だった。メタ解析の結果は非有意だった(SMD=0.58〈-24.76~25.91〉、I2=38.1%)。

妊娠率を評価した研究の不足など、大きなギャップが存在する

これらの結果を基づき著者らは以下のように総括している。

「減量介入と男性の妊孕性に関するデータは、おもに精液の質を調べた観察研究に限られており、妊娠率は検討されていなかった。生活習慣介入後の精液の質の改善は、栄養と身体活動の最適化による潜在的な有益性を示唆している。一方、外科的介入による変化は限定的であり、肥満に関連する精子機能不全は減量によって用量依存的には改善されないこと、また、急速な減量によって悪影響が現れる潜在的な可能性も示唆している。

全体として、無作為化比較試験の報告が限られていること、妊娠率の検討が不十分であること、近年頻用されるGLP-1受容体作動薬に関する評価がまだ少ないことなど、大きなギャップが見いだされた」。

文献情報

原題のタイトルは、「The effect of obesity interventions on male fertility: a systematic review and meta-analysis」。〔Hum Reprod Update. 2025 Oct 9:dmaf025〕
原文はこちら(Oxford University Press)

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