女性トライアスロン選手は3割がREDs、5割がLEAリスクの可能性 エネルギー管理の必要性高まる
ハイレベルの女子アマチュアトライアスロン選手の3割にREDsリスクが認められるとする研究結果が、ポーランドから報告された。さらに、選手の5割に1種類以上のLEA関連症状が認められるという。また、LEAリスクの高低で二分すると、栄養素の摂取量には有意差がないものの、リスクの高い選手はタンパク質を植物性食品から摂る傾向がみられたという。
トライアスロンの人気の高まりとともに、REDsリスクの研究の必要性も高まっている
REDsは、Relative Energy Deficiency in Sportの略で、日本語では「スポーツにおける相対的エネルギー不足」と訳される。アスリートが長期または重度の「利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)」にさらされることで発症する症状・病態。骨代謝、免疫、心血管代謝、メンタルヘルス、および女性では月経機能や妊孕性などに影響が生じ、パフォーマンス低下、選手生命の短縮につながり、スポーツから引退後にも一部の影響が持続する。一般に持久系スポーツはLEA、そしてREDsのリスクが高いとされている。
LEAによるREDsは性別にかかわらず生じるが、女性では月経機能異常により把握されやすい。近年、トライアスロンの人気が高まり、女性の参加も増加しており、そのような集団ではREDsリスクが好発している可能性が想定される。ただし、データがまだ不足している。とくにトライアスロンは、比較的研究が行われてきているランナーと異なり、スイム(水泳)やバイク(自転車)も行うため、エネルギー基質は脂肪や脂肪酸の割合が多く、REDsリスクも従来の持久系競技での研究からの知見とは異なる可能性もある。
以上を背景として、今回紹介する論文の著者らは、ポーランド国内でトップクラスのアマチュア女子トライアスリートを対象に、REDsの有病率とその関連因子を検討した。
3日間の栄養素摂取量と活動量を把握し、LEAリスクスコアとの関連を解析
この研究には、ポーランド国内のオープンカテゴリーで上位20位以内、年齢別カテゴリーで上位10位以内の女性アマチュアトライアスリートを選択。18歳未満、BMI18.5未満、摂食障害の既往、妊娠中、閉経期、管理不良の糖尿病は除外した。事前の統計学的検討で、必要なサンプル数は16人以上と計算された。
FacebookとInstagramを通じた募集に22人が応募。食事・トレーニング日誌等への記入が不十分な選手を除外し、解析対象は20人となった。主な特徴は、年齢37.8±9.00歳、BMI21.6±2.03、競技歴5.5±2.5年、トレーニング時間11.0±3.76時間/週、1回のトレーニング時間84.3±25.4分。
REDs、LEAリスクの判定法について
研究参加者には、3日間にわたり、食事記録、トレーニング記録をとってもらい、手首タイプの活動量計を装着して生活してもらった。
LEAとREDsのリスク評価には、女性のLEA質問票(Low Energy Availability in Female Questionnaire;LEAF-Q)を用いた。LEAF-Qは、怪我、消化器症状、月経異常という三つのセクションに分かれた計25項目の質問からなり、通常、スコアが8以上の場合にREDsのリスクありと判定する。本研究でもそのカットオフ値を用いた。また、REDsの発症に先行して生じると考えられるLEAの兆候を検出する目的で、5点というカットオフポイントも設定。5点以下でLEA関連症状がない場合を、LEAである可能性が低い「low LEA(以下、L-LEA)」群、6点以上でLEA症状が一つ以上ある場合を、LEAである可能性が高い「high LEA(以下、H-LEA)」群と分類した。
エネルギー出納には差がないが、高リスク選手は植物性食品由来の栄養素摂取量が多い
では結果だが、LEAF-Qスコアが8点以上でREDsと判定される選手は、20人中6人(30%)だった。また、LEAF-Qスコア5点以下/未満およびLEA症状の有無に基づき、ちょうど半数の10人ずつがL-LEA群、H-LEA群に分類された。H-LEA群では、10人中8人に月経異常、3人に消化器症状、2人に怪我が確認された。
次に、消費エネルギー量に着目すると、絶対値および体重で調整した相対値ともに、有意な群間差はなかった。ただし、トレーニング時間はH-LEA群が9.5±1.35時間/週、L-LEA群が12.5±4.79時間/週で、LEAリスクが高い群のほうが短かった(p=0.0374)。
続いて栄養素摂取量については、主要栄養素はすべて群間差がなく、平均すると炭水化物が53%、タンパク質が18%、脂質が29%だった。
ただし、タンパク質を動物性と植物性に分けて比較した場合、植物性タンパク質の摂取量がH-LEA群26.6±13.3g/日、L-LEA群16.2±4.4g/日であり、わずかに有意水準未満ながら、LEAリスクが高い選手は植物性タンパク質を多く摂取する傾向があり、効果量(Cohenのd)は1.04と大きな値を示した。
また、多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、H-LEA群12.2±4.7g/日、L-LEA群8.2±2.2g/日であり、LEAリスクが高い選手のほうが有意に多く摂取していた(p=0.0115、d=1.09)。PUFAをn3とn6に分類して比較すると、n6において群間差が引き続き有意であり(p=0.0329、d=1.02)、n3は非有意となった(p=0.2066、d=0.59)。
このほかに、H-LEA群の選手は食物繊維の摂取量が多い傾向も認められた。
著者らは、本研究が対象をトップレベルの選手に限定したためサンプルサイズが小さくなったことから、結果解釈の一般化が制限される可能性があるという限界点を挙げたうえで、「植物性タンパク質、食物繊維、PUFAを多く含む食品は、エネルギー密度が低く、女性トライアスリートのLEAにつながる可能性があるのではないか」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「A Preliminary Study of Nutrients Related to the Risk of Relative Energy Deficiency in Sport (REDs) in Top-Performing Female Amateur Triathletes: Results from a Nutritional Assessment」。〔Nutrients. 2025 Jan 7;17(2):208〕
原文はこちら(MDPI)