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習慣的な栄養素の摂取状況が体幹部骨格筋の量や質に及ぼす影響は性別によって異なる可能性がある 日本の若年成人での検討

日本の若年成人を対象に、超音波画像法で評価した体幹部骨格筋の厚さやエコー強度(筋内脂肪蓄積度の指標)と、習慣的な栄養素摂取量や動脈硬化度などとの関連を検討した結果が報告された。栄養素摂取状況と骨格筋量および筋内脂肪蓄積度との関連は、男性においてのみ有意であった一方、女性の筋内脂肪蓄積度は動脈硬化度の指標との関連が有意だという。なお、この結果は名古屋大学総合保健体育科学センター/大学院教育発達科学研究科の北川芙南氏および田中憲子氏らの研究グループによるもので、「PLOS One」に掲載された。

習慣的な栄養素の摂取状況が体幹部骨格筋の量や質に及ぼす影響は性別によって異なる可能性がある 日本の若年成人での検討

四肢より加齢変化が早く現れる体幹部骨格筋の量・質と栄養素摂取状況との関係を若年男女で検討

骨格筋の萎縮(筋量の減少)や質の低下(筋内脂肪の蓄積)は、心血管代謝や身体機能低下などのリスクと関連することが知られている。また、加齢に伴う骨格筋の量や質の低下は、四肢よりも体幹の方が早く現れることが報告されている。よって、体幹部における骨格筋の量や質の低下に関連する因子の特定が重要と考えられる。

骨格筋の量や質に影響を及ぼし得る因子として、筋力トレーニングとともに、栄養素の摂取状況が該当する。骨格筋の量や質に関する研究は、高齢者を対象としたものが多く、若年者、特に女性での知見は少ない。また体幹部骨格筋の量や質と、栄養素摂取状況との関係については不明な点が多い。

これらの背景のもと、北川氏らは、若年の男性と女性を対象として、体幹部骨格筋の量や質と、栄養素摂取状況および動脈硬化度などとの関連を検討した。なお、骨格筋の量や質を評価するゴールドスタンダードはCTまたはMRIだが、本研究はコストや結果の汎用性を鑑み、超音波画像法による筋厚(骨格筋の量の指標)とエコー強度(骨格筋の質の指標)を用いた検討を行った。

研究対象者と評価指標について

研究対象者は、20~26歳の日本人の男性26人、女性24人であった。年齢の中央値は男性・女性ともに22.0歳であった。男性・女性とも、運動習慣を持つ者は含まれていなかった。

習慣的な栄養素摂取量は、簡易型自記式食事歴質問票(brief-type self-administered diet history questionnaire;BDHQ)で把握した。また、身体活動質問票(global physical activity questionnaire;GPAQ)により日常の総エネルギー消費量を把握した。

体格部骨格筋の量と質は、超音波画像法を用いて、第3腰椎の高さにおける筋厚とエコー強度により評価した。このほか、動脈硬化度の評価のため、上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)を測定した。また、採血により糖・脂質代謝の指標を測定した。

若年男性は体幹部骨格筋の量や質が栄養素摂取状況と有意に関連し、若年女性は体幹部骨格筋の質が動脈硬化度と有意に関連

では結果について、まずは主な評価項目の測定結果を性別にみていこう。なお、正規分布していない測定パラメータが多かったため、結果はすべて中央値で報告されている。

男性

体格指数(BMI)は20.9 kg/m2、ウエスト周囲長は74.0 cmであった。エネルギー摂取量は1,996 kcal、各栄養素のエネルギー比率は、タンパク質:14.8%、脂質:29.9%、炭水化物:55.0%、飽和脂肪酸(SFA):7.8%、一価不飽和脂肪酸(MUFA):11.0%、多価不飽和脂肪酸(PUFA):6.8%であった。総エネルギー消費量は1,735.7 kcalであった。

体幹部骨格筋の筋厚(trunk muscle thickness;trunk MT)は16.5 mm、体幹部骨格筋のエコー強度は51.4 a.u.(任意単位)であり、trunk MTを体重の立方根(3分の1乗)で除した補正値(trunk MT/BM1/3)は4.2 mm/kg1/3だった。baPWVは1、080.3 cm/秒だった。

女性

BMIは19.6 kg/m2、ウエスト周囲長は70.0 cmだった。エネルギー摂取量は1,540 kcal、各栄養素のエネルギー比率は、タンパク質:14.1%、脂質:31.9%、炭水化物:53.2%、SFA:8.7%、MUFA:11.4%、PUFA:7.2%だった。エネルギー消費量は1,452.0 kcalだった。

Trunk MTは13.8 mm、体幹部骨格筋のエコー強度は55.8 a.u.、trunk MT/BM1/3は3.6 mm/kg1/3、baPWVは994.0 cm/秒だった。

体幹部骨格筋の量と有意に関連する因子

次に、体幹部骨格筋の量の指標である、筋厚を体重で補正した値(trunk MT/BM1/3)と、各評価指標との関連を、スピアマンの順位相関係数(rs)を算出して検討した。すると、trunk MT/BM1/3は、男性において、炭水化物のエネルギー比率と負の相関(rs=-0.402、p=0.042)を、PUFAのエネルギー比率と正の相関(rs=0.476、p=0.014)を示したが、女性では有意な相関を示した栄養素はなかった。

エネルギー摂取量、総エネルギー消費量、BMI、ウエスト周囲長、baPWV、および採血による糖・脂質代謝の指標は、性別を問わず、いずれもtrunk MT/BM1/3と有意な関連を示さなかった。

体幹部骨格筋の質と関連のある因子

続いて、体幹部骨格筋の質を表すエコー強度と各評価指標との関連を検討すると、男性においてはSFAのエネルギー比率と正の相関(rs=0.397、p=0.045)が認められたが、女性では有意な関連のある栄養素はなかった。一方、女性ではエコー強度とbaPWVとの間に正の相関(rs=0.504、p=0.012)が認められ、骨格筋の質が動脈硬化度と関連していることが示唆された。

エネルギー摂取量、エネルギー消費量、BMI、ウエスト周囲長、および採血による糖・脂質関連指標は、性別を問わず、いずれも体幹部骨格筋のエコー強度と有意な関連を示さなかった。

以上の結果を基に、著者らは、「若年成人男性では、日常における栄養素摂取状況(炭水化物や多価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸のエネルギー比率)が、体幹部骨格筋の量および質と有意に関連していた。一方、若年成人女性では、動脈硬化度が体幹部骨格筋の質と有意に関連していた。これらのデータは、体幹部骨格筋の量や質に関連する因子が、若年の男性と女性とで異なることを示唆している」と総括。また、「若年男性では習慣的な栄養素摂取状況が、若年女性では動脈硬化度が、体幹部骨格筋の量や質の予測マーカーとなり得るのではないか」と付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Factors associated with trunk skeletal muscle thickness and echo intensity in young Japanese men and women」。〔PLoS One. 2025 Jan 6;20(1):e0312523〕
原文はこちら(PLOS)

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