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食品単位ではなく、「バランスが良い献立」のプリン体はどのくらい? 国内外4スタイルで検討

痛風や高尿酸血症の治療・予防のためにプリン体摂取量を制限しようとすると、タンパク質が減り炭水化物が増えるという結果につながることが多い。これを避けるために、一般的に「バランスが良い」とされている食事スタイルを遵守したとしたら、プリン体摂取量を「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」が推奨する「400mg/日」程度に抑えることができるだろうか。この臨床疑問の答を探った研究の結果が「Nutrients」に掲載された。帝京大学名誉教授の金子希代子氏らによる研究で、日本の「食事バランスガイド」の推奨を含む4種類の食事スタイルでプリン体含有量が検討されている。

食品単位ではなく、「バランスが良い献立」のプリン体はどのくらい? 国内外4スタイルで検討

食品のプリン体含有量の情報はあっても、食事単位のプリン体含有量の情報は少ない

プリン体は体内で細胞分裂、エネルギー代謝、シグナル伝達などに使われた後、最終的に腎や腸管を経由して尿中または便中に尿酸として排泄される。しかし、尿酸産生過剰または排泄低下のために血清尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が続いていると、関節などに尿酸塩結晶として蓄積され痛風関節炎を引き起こす。また、たとえ痛風関節炎を来さないとしても高尿酸血症は動脈硬化のリスクファクターの一つと目されており、生活療法、合併症次第では薬物療法もすべき状態と位置づけられている。

尿酸値を下げるための生活療法として、減量と並びプリン体の摂取量を抑えるという栄養指導がなされることが多く、そのためにプリン体含有量の高い食品のリストなどが用いられている。ただ、それらの情報を食生活に生かすには、自分で食材の重量を測りながら調理しない限り、調理後の料理の‘かさ’から重量を推測してプリン体の量を計算するという作業が求められ、あまり現実的と言えない。さらに、プリン体含有量の高い食品は高タンパク質食品に多く、それを控えることで炭水化物食品の摂取量が増えてしまうこともあって、糖代謝異常やサルコペニアリスクへの影響という懸念も生じる。

一方で、一般生活者に対する食事・栄養関連の基本的な指導として、「バランスの良い食事」が推奨されている。例えば国内では、農林水産省と厚生労働省により策定された「食事バランスガイド」が活用されている。しかし、そのような「バランスの良い食事」スタイルとした場合にプリン体摂取量がどの程度になるのかというデータがなく、高尿酸血症や痛風の治療や予防に利用できるのかという点は、これまで明らかでなかった。金子氏らの研究は、このような背景の下で実施された。

国内外の4種類の食事スタイルのレシピでプリン体含有量を比較

この研究では、日本の「食事バランスガイド」のほかに、米国農務省による「MyPlate」、および、欧米において健康的な食事スタイルとして定着している「地中海食」、高血圧・心血管疾患リスク抑制を主眼として米国立心肺血液研究所が開発した「DASH食」という4種類の食事スタイルを解析対象とした。

これら4種類の食事スタイルの特徴を生かした、1日3食、3日分のレシピ(計36食分)を作成し、既報研究(食品中のプリン体含有量を高速液体クロマトグラフィーにより測定した2014年の金子氏らの報告)などのデータを参照して、そのレシピに従い調理した料理に含まれるプリン体量を割り出した。その結果、各食事スタイルの1日あたりの摂取エネルギー量と摂取プリン体量は、以下のように計算された。

食事バランスガイドではエネルギー量が1,830~1,918kcal/日の範囲でプリン体含有量は308.5~366.1mg/日、MyPlateでは同順に1,832~2,010kcal/日、308.7~335.0mg/日、地中海食では、1,510~2,287kcal/日、346.6~394.0mg/日、DASH食では1,600~1,713kcal/日、325.9~493.9mg/日。なお、エネルギー量は主として脂質食品と炭水化物食品の重量に依存し、プリン体含有量は用いる食材の細胞数に依存するため、両者は必ずしも相関しない。

バランスの良い食事スタイルのプリン体含有量は、ガイドライン推奨に概ね準拠

一方、日本痛風・尿酸核酸学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版」には、プリン体に関して、「1日の摂取量が400mg程度になるよう推奨される」との記載がある。よって、検討した4種類のバランスの良い食事スタイルは、いずれもほぼ、このガイドラインの推奨に準拠することが示された。

唯一、DASH食でプリン体含有量が493.9mg/日となる日があったが、その日のレシピでは夕食に「トマトとセロリを添えた鶏肉」という料理があり、鶏肉(200g)がプリン体含有量を大きく押し上げていた。

バランスの良い食事は、高尿酸血症・痛風の患者に対する栄養指導にも有用

以上、一連の結果に基づき著者らは、「各国の食事ガイドラインなどで推奨されているバランスの良い食事スタイルに含まれるプリン体の量は、308.5~493.9mg/日の範囲だった。鶏肉200gを含むレシピを除いて、1日あたりプリン体の量が400mgを超えることはなかった。ガイドラインの推奨に従ったバランスのとれた食事は、プリン体の摂取量という点でも適切であると考えられる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Daily Amount of Purine in Commonly Recommended Well-Balanced Diets in Japan and Overseas」。〔Nutrients. 2024 Nov 27;16(23):4066〕
原文はこちら(MDPI)

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