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日本の小中高生の身体活動・座位行動に対する相対年齢(同学年での誕生月の違い)の影響

相対年齢が若い、つまり、学年が同じでも年度の後半に生まれた子どもは、身体活動量が少なく座位行動が多いことが明らかになった。国内21の学術団体・組織に所属する26人のメンバーで構成される研究グループが、全国の小・中・高校76校の児童・生徒を対象に行った横断研究の結果であり、同志社大学スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科の森隆彰氏、石井好二郎氏らによる論文が、「BMC Public Health」に掲載された。

日本の小中高生の身体活動・座位行動に対する相対年齢(同学年での誕生月の違い)の影響

相対年齢は高校生の身体活動にも影響するか? 座位行動への影響は?

相対年齢とは、同一学年内での誕生日の違いによって生じる、出生後経過年数の相対的な差を意味し、最大で1年の差(最も早生まれである4月1日生まれは前年の4月2日生まれと同学年)が生じる。この相対年齢の差が、身体や精神的な発達、体力、メンタルヘルス状態などに影響を及ぼし得ることが知られている。また、相対年齢が若い(誕生日が年度の後半の)子どもはスポーツに参加する割合が低いことも報告されている。さらに、エリートレベルのアスリートの成功と相対年齢との有意な関連も示唆されている。

このような相対年齢が関与して生じる種々の影響を「相対年齢効果」といい、より低学年であるほどその影響が強く、高齢になると影響が弱まると考えられている。身体活動量に対する相対年齢効果を検討した過去の研究から、小学生と中学生では、相対年齢が若い場合に中高強度身体活動(moderate-intensity to vigorous-intensity physical activity;MVPA)が少ないことが示されている。

ただし、高強度身体活動(vigorous physical activity;VPA)や座位行動との関連については明らかでなく、また、高校生の身体活動にも相対年齢効果が認められるのかという点も明らかでない。

全国76校、約2万人の小~高校生を対象に調査

この研究は、全国の小学校36校、中学校23校、高校17校、計76校の協力を得て、2018年1月~2019年7月に実施された。学校の所在地は北海道から九州のさまざまな規模の市町村に分布し、偏りが生じないように考慮されている。2万1,491人から回答を得て、データ欠落等を除外し1万8,281人(男子56.3%)を解析対象とした。

身体活動や座位行動の評価には、国際標準化身体活動質問票を子ども向けにわかりやすく改変した日本語版質問票(International Physical Activity Questionnaire for Japanese Early Adolescents;IPAQ-JEA)を用いた。なお、身体活動・座位行動時間は性差があることが知られているため、解析は性別に行った。また、解析に際しては、学年とBMIの影響を調整した。

相対年齢が若い子どもは身体活動が少なく座位行動が多い

世界保健機関(WHO)の推奨値および健康日本21(第三次)における「運動やスポーツを習慣的に行っていないこどもの減少」に関する指標に基づき、週あたりのMVPA時間が420分(1日60分)以上を「十分に運動をしている」、60分以上420分未満を「運動不足」、60分未満を「運動をしていない」と群分けすると、男子では「十分に運動をしている」が51.8%、「運動不足」32.7%、「運動をしていない」15.5%であり、女子では同順に34.5%、40.4%、25.0%だった。

解析の結果、相対年齢が若いことは、性別にかかわらず、身体活動の少なさと座位行動の多さに関連していた。傾向として、中強度身体活動(moderate physical activity;MPA)よりも高強度身体活動(VPA)のほうが、相対年齢との関連がより強く認められ、高校生であってもVPAとの関連は、性別にかかわらず有意だった。座位行動については身体活動とは逆に、相対年齢が若いほど座位行動時間が長い傾向が認められた。

以下に結果の一部を紹介する。

身体活動に対する相対年齢効果

VPAとの関連

男子は、誕生月が遅い(相対年齢が若い)ほど、VPAの頻度が低いという関連が認められた(average margin effect〈AME〉=-0.03)。学校種別ごとの解析では、小学生は非有意で中学・高校生では有意だった。VPAの時間についても同様に、全体解析で有意(AME=-0.73)、学校種別の解析で小学生が非有意、中学・高校生は有意だった。

女子についても、全体解析では相対年齢が若いとVPAの頻度が低く(AME=-0.02)、VPAの時間が短い(AME=-0.37)という関連が認められた。学校種別の解析では、VPAの頻度・時間ともに、小学生と中学生は非有意で、高校生でのみ有意だった。

男子・女子ともに小学生ではVPAに対する相対年齢効果が非有意であり、年齢が上がるにつれて有意となるという結果について著者らは、「日本で子どもたちがスポーツ活動に参加する場合、小学校までは校外のクラブに私的に参加することが多く、中学以降は校内の部活動として参加するという相違の影響ではないか」と考察している。

MPAとの関連

MPAに関しては、男子は全体解析と学校種別の解析のいずれにおいても、MPAの頻度・時間ともに、有意な相対年齢効果がみられなかった。

女子については、全体解析では有意な関連が認められなかったが、学校種別の解析では中学生において、相対年齢が若いとMPAの頻度が低いという有意な関連がみられた。その一方、MPAの時間との関連では、小学生において、相対年齢が若いとMPAの時間が長いという有意な関連がみられた。この点は本研究の全体的な結果と矛盾するが、著者らは「理由は不明ながら、相対年齢が低い小学生女児は、校外でのスポーツ活動には参加せずに外遊びをしている可能性がある」としている。

座位行動に対する相対年齢効果

男子

男子の座位行動時間に対する相対年齢効果は、週末の座位行動時間(AME=2.38)、スクリーンタイム(AME=2.04)、ゲーム遊び時間(AME=0.65)、インターネット利用時間(AME=1.35)において有意であり、いずれも相対年齢が若いほど長いという関連だった。平日の座位行動時間、テレビ視聴時間との関連は非有意だった。学校種別の解析では、これらの関連は高校生のみで確認された。

女子

女子の座位行動時間に対する相対年齢効果は、全体解析では有意な関連がなかったが、学校種別にみた場合、中学生のスクリーンタイムとテレビ視聴時間は、相対年齢が若いほど長いという有意な関連がみられた。一方で小学生では、相対年齢が若いほど平日の座位行動時間が短いという有意な関連がみられた。

著者らは以上の結果を、「身体活動に対する相対年齢効果は小学生で現れ、中学生や高校生でも観察された。とくに、VPAにおいて相対年齢効果が顕著だった。また、座位行動にも相対年齢効果が観察された」と総括し、「身体活動に対する相対年齢効果は高校生にも残存し、相対年齢が若い子どもほど、身体活動を座位行動に置き換える傾向が強いようだ」と結論づけている。

文献情報

原題のタイトルは、「Relative age effect on the physical activity and sedentary behavior in children and adolescents aged 10 to 18 years old: a cross-sectional study in Japan」。〔BMC Public Health. 2024 Nov 25;24(1):3273〕
原文はこちら(Springer Nature)

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