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eスポーツアスリートのパフォーマンスがカフェインで向上 射撃テストや認知機能などで有意差

カフェインは、エリートレベルのeスポーツアスリートにとっても有用であることが報告された。クロスオーバー試験の結果、射撃テストや認知機能などの指標にプラセボとの有意差が認められたという。台湾からの報告。

国際大会で正式な種目となりつつあるeスポーツ

既に多くの国がeスポーツを正式なスポーツとして認めていて、国際大会でもeスポーツが競技種目に含まれることが増えてきた。eスポーツには、複数の選手によるオンラインバトルや、選手が一人称の存在となって戦うシューティングゲーム、リアルタイムで進行する戦略ゲーム、スポーツゲームなどがあり、2023年杭州アジア競技大会ではシューティングゲームが正式種目となっていた。

カフェインは、あらゆるレベルのアスリートにとってポピュラーで効果的なエルゴジェニックサプリメントとして定着している。一般的に、最もパフォーマンスを向上させたい時間の60分前に3mg/kg~のカフェインを摂取することの有効性を示唆する研究が多い。しかし、eスポーツに関しては、eスポーツ自体が新興の競技であることも手伝い、いまだカフェインのエビデンスが十分でなく、とくにエリートレベルでのエビデンスはごく限られている。

台湾のエリートeアスリートを対象とするクロスオーバー試験

この研究の参加者は、台湾のeスポーツトレーニングセンターで募集された。適格条件は、シューティングゲームの競技歴が2年以上で国際大会に出場経験があり、週に5日以上のトレーニングを行っていること。除外基準は、女性、20歳未満、疾患罹患者、日常のカフェイン摂取量が80mg/日以上(論文には「exclusion criteria」として「daily caffeine intake below 80 mg」と記されているが、以下のように研究参加者の日常のカフェイン摂取量は最大で78mg/日であることから、除外条件としては「above 80 mg」と考えられる)など。女性を除外した理由は、月経周期による影響が予測されたため。

応募したアスリートのうち9人が適格基準を満たした。年齢20.8±0.9歳、競技歴2.8±0.3年で、日常のカフェイン摂取量は0~78mg/日の範囲で平均は44.1±32.9mg/日だった。試験デザインは対プラセボのクロスオーバー法で、被験者に対してのみ盲検化され研究者は条件を認識しているという単盲検試験として実施された。各条件の試行には7日間のウォッシュアウト期間を設けた。

研究参加者には研究開始2週間前から80mg/日を超えるカフェインの摂取を禁止し、3日前からはカフェインを含む飲食物(コーヒー、エナジードリンク、茶、チョコレートなど)の摂取を禁止した。また、最初の試行条件の3日前から食事記録をとり、2回目の試行条件の3日前からそれを忠実に再現することを求めた。

各条件の試行日は標準化された朝食と昼食をそれぞれ8時、12時に摂取し、15時に3mg/kgのカフェインまたはプラセボを200mLの水とともに摂取。その1時間後から以下のテストを行った。

3種類の課題でパフォーマンスを測定

パフォーマンスへの影響は、3種類の課題で評価した。

一つ目はストループテストで、ディスプレー上にランダムで表示される4色(赤、青、緑、黄色)の色の名前(文字そのものの色ではなく文字の意味)を、できるだけ速く正確に回答する(R、G、B、Y、いずれかのキーを押す)というもの。

二つ目は視覚探索テストで、ディスプレー上に、オレンジ色の「T」、逆さまのオレンジ色の「T」、青色の「T」、逆さまの青色の「T」が、計5個、10個、15個、または20個同時に表示され、それらの中に上下が正しいオレンジ色の「T」が含まれている場合のみ、スペースキーを押すというもの。

三つ目はシューティングゲームで、ディスプレー上に表示される標的をできるだけ短時間で正確に標的を射撃するというもの。

次項では、これらのテストの結果を一つずつみていく。

反応時間の短縮や射撃精度の向上を確認

ストループテスト

カフェイン条件では、ストループテストの一致条件(表示された色とその色を表す文字の意味が一致しているケース)での反応時間は、プラセボ条件より有意に短かった(p=0.023)。ただし、不一致条件の反応時間は条件間に有意差がなかった(p=0.478)。

正答率は、一致条件(カフェイン89.2±18.6 vs プラセボ87.3±9.2%、p=0.715)、不一致条件(同順に93.8±5.7 vs 86.7±5.3%、p=0.273)で、いずれも有意差がなかった。

視覚探索テスト

カフェイン条件における視覚探索テストの反応時間は、「T」が一度に20個表示されるケースにおいて、プラセボ条件より有意に短かった(637.0±101.1 vs 728.0±91.9ミリ秒、p=0.020)。一度に表示される「T」が5個、10個、15個の場合、条件間に有意差はなかった。

射撃パフォーマンス

カフェイン条件では、射撃の精度(p=0.008)および撃墜対被撃墜比率(kill ratio〈キルレシオ〉、p=0.020)がプラセボ条件よりも有意に良好であり、かつ反応時間が有意に短かった(p=0.001)。

以上より著者らは、「カフェイン摂取はeスポーツアスリートの反応時間と射撃パフォーマンスを有意に向上させる」と結論づけている。また、今後の課題として、「女性eアスリートでの研究や、カフェインガムや舌下錠を用いた研究が必要」としている。

文献情報

原題のタイトルは、「Caffeine supplementation improves the cognitive abilities and shooting performance of elite e-sports players: a crossover trial」。〔Sci Rep. 2024 Jan 24;14(1):2074〕
原文はこちら(Springer Nature)

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