アスリートのサプリ利用と性格特性に有意な関連 ポーランドのエリート団体競技選手で検討
アスリートが利用しているサプリメントが、アスリートの性格特性によって異なるとする研究論文を紹介する。ポーランド国内のトップリーグでプレーしている団体競技男性アスリートを対象とする研究で、誠実性の高いアスリートはクレアチンの利用率が高いことなどが報告されている。
アスリートの栄養行動は正確特性によって左右される?
アスリートにとって栄養が重要であり、トレーニングによる需要の増大を食事では満たすことができない場合にサプリメントが利用され、または試合におけるパフォーマンスを最大化したいときにはエルゴジェニックエイドとしてのサプリが利用される。食事やサプリ利用などの栄養行動は、好みや環境を含む複数の因子によって動的に変化すると考えられ、その因子の一つとして個人の性格も該当する可能性がある。しかしこれまで、アスリートのサプリメント摂取状況に関する研究結果は多数報告されているが、個人の性格と関連づけて解析した研究は数少ない。本論文の著者らは、アスリートの性格とサプリ利用との間に何らかの関連性の存在を想定し、以下の研究を行った。
なお、本論文の著者らは、アスリートの性格特性が食行動と密接な関連があるとする論文も発表している。
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性格特性はビックファイブ理論で評価し、サプリはABCD分類のAの摂取頻度を把握
本研究では、アスリートの性格の評価に、神経心理学や臨床医学で広く用いられている「ビックファイブ理論」を用いた。この理論では、個人の性格の傾向を、神経症傾向、外向性、開放性、協調性、誠実性という五つの特性に分けて評価する。
サプリについては、オーストラリア国立スポーツ研究所(Australian Institute of Sport;AIS)の定義であるABCD分類のAに該当するサプリの摂取頻度を調査した。なお、AISの分類は、スポーツサプリとして有効性を示すエビデンスのあるものはA、一定の条件下では有効の可能性のあるものはB、エビデンスが不足しているものはC、禁止物質や安全性上の懸念があるものはDとされている。
ポーランド国内の団体競技トップリーグ、男性選手アスリート200人以上を調査
この研究の参加者は、ポーランド国内において各競技のトップリーグで少なくとも3年以上の競技歴があるエリートアスリート213人。すべて男性で、競技の内訳は、バスケットボールが54人、バレーボール、サッカー、ハンドボールがそれぞれ53人。
サプリの摂取状況の調査には、新たに作成した質問票を用いた。この質問票は、マルチビタミン/ミネラル、プロテイン、炭水化物、アイソトニック飲料、分岐鎖アミノ酸(BCAA)、クレアチン、β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)、ω3多価不飽和脂肪酸、抗酸化物質、カフェイン、プロバイオティクス、関節保護物質などについて、「年間を通じて習慣的に摂取している」、「大会にあわせてなど、機会を決めて摂取している」、「利用したことがない」の三者択一で回答を得るというもの。
アスリートへのサプリ介入では性格特性の考慮も必要
では、まずサプリの利用率(「利用したことがない」以外の二者の合計の割合)をみてみると、「アスリート向け特殊食品(specialized foods for athletes)」の一つとして位置付けられているアイソトニック飲料の利用率が90.1%と最も高く、65.3%のアスリートが年間を通じて習慣的に摂取していた。利用率が2番目に高いのは、やはりアスリート向け特殊食品に分類されるプロテインサプリで利用率は84.5%、次いで同じくアスリート向け特殊食品のエナジージェル/バーが80.8%だった。
このほか、「医療用サプリ」のカテゴリーでは、マルチミネラルが79.8%、マルチビタミンが66.7%、プロバイオティクスが42.3%、「エルゴジェニックエイド」のカテゴリーでは、クレアチンが69.5%、カフェインが53.1%、重炭酸ナトリウムが14.6%だった。
性格特性とサプリの種類別の摂取頻度の関係
次にサプリの摂取頻度と性格特性の関係をサプリの種類別にみると、性格特性により有意な違いが認められた。以下に比較的強固な関連が認められた性格特性を抜粋する。
神経症傾向との関連
神経症傾向が低いアスリートは、アイソトニック飲料(前述のように調査対象全体での利用率が最も高いサプリ)の利用率が高かった。具体的には、「習慣的に利用している」群は101.4点、「機会を決めて摂取している」群が108.8点であり、この2群に対して「利用したことがない」群は139.3点と有意にスコアが高かった。
また、炭水化物ジェル/バーとの関連も同様であり、「習慣的に利用している」群は98.0点、「機会を決めて摂取している」群が102.1点であるのに対して、「利用したことがない」群は136.7点と有意にスコアが高かった。
誠実性との関連
誠実性との有意な関連は、クレアチンの摂取頻度との間に認められ、誠実性が高いアスリートはクレアチンの摂取頻度が高かった。具体的には、「習慣的に利用している」群は139.4点、「機会を決めて摂取している」群は109.3点、「利用したことがない」群は92.1点であり、3群間のすべてに有意差が認められた。
これらの結果に基づいて著者らは、「アスリートの性格とサプリ利用との間に観察された関係のメカニズムを説明するには、さらなる研究が必要だが、栄養教育・介入において、アスリートの性格特性も考慮されるべき」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「Personality Determinants Related to the Use of Selective and Effective Dietary Supplements by Elite Polish Team Sport Athletes」。〔Sports (Basel). 2024 Jan 12;12(1):29〕
原文はこちら(MDPI)