アスリートの食行動は性格特性でほぼ説明できる ポーランドのエリートチームスポーツでの検討
アスリートの食行動と性格特性との関連についての研究結果が報告された。ポーランドのエリートレベルにあるチーム競技アスリートを対象に、ビッグファイブ理論に基づいて性格特性を評価し、スイスで用いられている栄養ピラミッドの遵守状況との関連を検討したもの。食行動の分散(R2)の99%以上を性格特性で説明可能だという。
ビッグファイブ理論に基づく性格特性と食行動の関連の有無を探る
アスリートの食行動は一般人口(非アスリート)に比べて動的であり、環境要因をはじめとする複数の因子によって左右されていると考えられる。一般に食行動を規定する因子として、性格特性が重要だと考えられているが、アスリートの食行動に性格特性がどの程度影響を及ぼしているのか十分には明らかになっていない。
性格特性の評価法としては、近年、外向性、協調性、誠実性、神経症傾向、開放性という五つの尺度で分析する「ビッグファイブ理論」が、精神医学をはじめとしてさまざまな領域の研究と臨床で用いられている。今回紹介する論文の研究も、ビッグファイブ理論に基づいてアスリートの性格特性を評価したうえで、食行動との関連の有無を検討している。
ポーランドのさまざまなチームスポーツのエリート男性アスリート213人で検討
検討対象は、ポーランドのチームスポーツの男性選手213人。行っている競技は、バスケットボールが54人で、バレーボール、サッカー、ハンドボールがそれぞれ53人。全員が「少なくとも3年以上、国内トップリーグで競技している」という適格条件を満たすエリートレベルのアスリート。年齢は26.1±4.5歳(範囲18~38)、競技歴8.2±4.5年(同3〜20)。
食行動は、スイスで用いられている栄養ピラミッドに準拠し作成された23項目のステートメントからなる、再現性と信頼性が検証済みのアンケートで評価した。各質問に5段階のリッカートスケール(全く当てはまらない~完全に一致する)で回答してもらった。質問内容としては、「1日3食を習慣的に摂取しているか」、「トレーニング前・中・後に十分な水分を補給しているか」や、スイーツ、ファストフード、加糖飲料、エナジードリンクの摂取頻度を問うものなどが設定されている。
神経症傾向が強いアスリートほど適切な食行動をとっている
結果について、まず全体的な傾向を把握すると、大半のアスリートは少なくとも1日3食以上を摂取し(リッカートスコアの5が86.9%、4が10.3%で計97.2%)、運動中(リッカートスコアの5と4で97.2%)と運動後(同95.7%)に十分な水分補給を行っていると回答した。また、ファストフード製品を避ける割合も高く(93.9%)、加糖飲料を避ける割合も85.4%と高かった。一方、毎日野菜を2~3皿摂取するは23.4%、毎日果物を1~2皿摂取するは33.2%、牛乳または乳製品を1日2回摂取するは14.5%だった。
次に、ビッグファイブ理論による性格特性の評価結果をみると、誠実さが128.50±22.22と高く、次いで協調性が123.20±13.14、外向性121.80±15.52も高得点だった。一方、開放性は115.00±13.91であり、また神経症傾向は72.15±20.55であって、相対的に低値だった。
性格特性と食行動の推奨事項の遵守との関係
続いてこの結果と、食行動の推奨事項の遵守状況との関連を検討。すると、神経症傾向が強いほど、適切な食行動の総合的な評価が高いという有意な正の相関が認められた(r=0.132)。反対に、開放性が高いほど食行動の総合的な評価が低いという有意な負の相関が認められた(r=-0.143)。
そのほかの有意な相関が認められた関係を以下に示す。
神経症傾向との相関
神経症傾向は上記のように、適切な食行動の総合的な評価と正相関した以外に、規則的(3~5時間おき)な食事摂取(r=0.143)、毎日野菜を2~3皿以上摂取(r=0.147)、エナジードリンクの摂取を控える(r=0.173)と有意に正相関していた。有意な負の相関が認められた食行動はなかった。
外向性との相関
外向性は、1日2食以上で野菜を摂るという行動のみ、有意に正相関していた(r=0.154)。有意な負の相関が認められた食行動はなかった。
開放性との相関
開放性は前述のように、適切な食行動の総合的評価と負の相関があった以外に、少なくとも毎日野菜を摂ることは欠かさない(r=-0.153)、毎日果物を1~2皿摂取する(r=-0.157)、甘辛いスナックを控える(r=-0.152)と、負の相関が認められた。反対に、有意な正の相関が認められた食行動はなかった。
協調性との相関
協調性は、すべての食事で穀物を摂る(r=0.149)と有意に正相関し、運動後の十分な水分摂取とは有意な負の相関が認められた(r=-0.148)。
誠実性との相関
誠実性は、規則的(3~5時間おき)な食事摂取(r=0.186)、牛乳または乳製品を12回以上摂取(r=0.143)、甘辛いスナックを控える(r=0.148)と有意に正相関していた。有意な負の相関が認められた食行動はなかった。
性格特性で食行動の分散の99.4%を説明可能
最後に、適切な食行動の総合的評価を従属変数、ビッグファイブモデルの性格特性を独立変数とする重回帰分析を施行。その結果、協調性が食行動の総合的評価と最も強く相関すること(β=0.467)、性格特性によって食行動の分散(R2)の99.4%を説明可能であることがわかった。
論文の結論には、「ビッグファイブモデルで評価された性格特性は、チームスポーツに参加しエリートレベルで活躍しているアスリートの食行動に関連していることが示された。ただし、アスリートの性格特性と食行動との関係について、さらなる研究が必要とされる」と述べられている。
文献情報
原題のタイトルは、「Personality Determinants of Eating Behaviours among an Elite Group of Polish Athletes Training in Team Sports」。〔Nutrients. 2022 Dec 21;15(1):39〕
原文はこちら(MDPI)