最も効果的なサプリメントは? 女性アスリートに対するエルゴジェニックエイドのメタ解析
女性アスリートの身体パフォーマンスを高めるためのエルゴジェニックエイドの効果に関する、システマティックレビューとメタ解析の結果が報告された。カフェインやリン酸ナトリウムに一定程度のエビデンスを確認できたという。
エルゴジェニックエイドの女性アスリートでのエビデンスを探る
スポーツパフォーマンスに対するエルゴジェニックエイドの効果を検討した研究の多くは、男性アスリートを対象に行われてきており、女性アスリートでのエビデンスは少ない。そこで本論文の著者らは、女性アスリートがパフォーマンス向上に使用するエルゴジェニックエイドの効果を、これまでに行われてきた研究の報告から探るため、システマティックレビューとメタ解析を実施した。
文献検索は、2022年4~6月に、PubMed、Web of Scienceを利用して行われた。女性、スポーツ、運動、エルゴジェニックエイドというキーワードを用いて、過去15年間の論文を検索。論文の言語は制限しなかった。適格条件は、エルゴジェニックエイドを用いて女性アスリートの身体能力に対する影響を評価した介入研究であり、除外条件として、研究対象が男性と女性の双方であって結果を性別に解析していないもの、研究参加者が研究意図にかかわらず非介入的にサプリメントを利用していたものなどが設定された。
一次検索で341報がヒットし重複削除後のスクリーニングで43報をピックアップ。システマティックレビューとメタ解析に関する優先報告項目(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses;PRISMA)に即して、3名の研究者が独立して全文を精査した。意見の不一致は第三者を加えた討議により合意を得た。最終的に32報、43件の研究が、メタ解析の対象として抽出された。
メタ解析の対象とした研究の特徴
抽出された研究の多く(81.4%)は横断的研究であり、その他の一部は縦断的デザインでの研究が組み込まれていた。また、同じく81.4%はクロスオーバー法で行われており、その他は対照群が設定されていた。
研究参加者は合計710人の女性であり、平均年齢は26.5歳、平均BMIは22.7。43件中20件(46.5%)はチームスポーツ選手(n=339)、10件(23.3%)は持久系アスリート(n=144)、6件(14.0%)は筋力系アスリート(n=82)、4件(9.3%)はレクリエーションアスリート(n=75)であり、ほかに学生アスリート(n=24)、テニス選手(n=17)、カヤック選手(n=5)を対象としたものが各1件(2.3%)だった。
介入に用いられたエルゴジェニックエイドは、カフェイン単独が18件(41.9%)、2件はカフェインとビート根ジュースの併用であり、カフェインによる介入が多かった。そのほかには、タウリン、リン酸ナトリウム、クレアチン、β-アラニン、シトルリンマレート、クエン酸ナトリウム、ポリフェノール、スベリヒユなどが用いられていた。
バイアスリスクについては、PEDroという10点のスケールで32報中31報は7~8点であり「良好」と判定され、うち17件は8点だった。1報(カヤック選手に対してビート根ジュースで介入した研究)のみ、無作為化や盲検化がなされておらず、4点と低かった。
ジャンプ力などで有意な効果を確認
メタ解析は、筋力、スプリント、および心肺機能という3種類の身体的パフォーマンスについて行われていた。なお、解析は介入に用いられたエルゴジェニックエイドの種類を考慮せずに実施されている。
筋力に対する介入効果
ジャンプ力
ジャンプ力で筋力を評価した研究は9件で、個々の研究でエルゴジェニックエイドの有意な効果を示したものはなかったが、負の影響の可能性を示した研究もなかった。また、不均一性は極めて低かった(I2=0.00%)。メタ解析の結果は、標準化平均差(standardized mean difference;SMD)が0.27(95%CI;0.02~0.52)であり、有意な効果が認められた。
等尺性筋力
等尺性筋力は6件の研究で評価されており、うち2件はエルゴジェニックエイドの有意な効果を報告し、他の4件は非有意という結論だった。メタ解析の結果は、SMD0.44(95%CI;-0.08~0.97)で非有意だった。不均一性はI2=61.13%で高かった。
レジスタンスパワー
8件の研究で評価されており、うち1件はエルゴジェニックエイドの有意な効果を報告し、他は非有意という結論だった。メタ解析の結果は、SMD0.45(95%CI;0.16~0.73)であり、有意な効果が認められた。不均一性はI2=13.89%で低かった。
スプリントに対する介入効果
スプリントパフォーマンスは6件の研究で8種類の変数が評価されており、エルゴジェニックエイドの有意な効果を報告したものはなく、また1件は有意な負の影響を報告していた。メタ解析の結果は、SMD0.20(95%CI;-0.14~0.55)で非有意だった。不均一性はI2=38.76%でやや高かった。
心肺機能に対する介入効果
有酸素パフォーマンス
有酸素パフォーマンスは9件の研究で12種類の変数が評価されており、うち1件はエルゴジェニックエイドの有意な効果を報告し、他は非有意という結論だった。メタ解析の結果は、SMD0.19(95%CI;-0.06~0.43)で非有意だった。不均一性はI2=0.00%で極めて低かった。
無酸素パフォーマンス
無酸素パフォーマンスは11件の研究で14種類の変数が評価され、それらすべて、結果は非有意と報告していたが、メタ解析の結果はSMD0.22(95%CI;0.00~0.44)であり、有意な効果が認められた。不均一性はI2=0.00%で極めて低かった。上記のほか、論文中にはエルゴジェニックエイドの種類別の解析の結果が簡単に触れられており、カフェインやリン酸ナトリウムの有効性が強く認められたという。ただし詳細な解析結果は記されていない。論文の結論には以下のような記載がある。
「スプリントとスピードに関しては、カフェインとリン酸ナトリウムが最良の結果を示すエルゴジェニックエイドだった。男性アスリートで証明されているクレアチンの有効性は、女性アスリート対象の研究が少ないために、証明することができなかった。心肺能力に関しては、タウリン、カフェイン、β-アラニンにより、女性アスリートの有酸素パフォーマンスが向上する可能性がある。ビート根ジュース、ポリフェノールの有酸素パフォーマンスに対する決定的なエビデンスは示されなかった」。
文献情報
原題のタイトルは、「Ergogenic Aids to Improve Physical Performance in Female Athletes: A Systematic Review with Meta-Analysis」。〔Nutrients. 2022 Dec 24;15(1):81〕
原文はこちら(MDPI)