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屋外で遊べる環境で育った子どもは、成長してからも活動的であり続ける可能性が高い

子どもの頃に暮らしていた土地の環境が、成長後の身体活動習慣に影響を及ぼす可能性を示唆する研究結果が報告された。平均10歳時点での横断的解析だけでなく、5年間の縦断的解析でも、有意な関連が認められたという。

屋外で遊べる環境で育った子どもは、成長してからも活動的であり続ける可能性が高い

屋外で遊ぶことは生涯の身体活動習慣に影響を及ぼす?

子どもの頃の養育環境が身体活動量と関連のあることを示した横断研究は複数存在する。しかし、その関連が成長後にも続くのか否かは明らかになっていない。

一般的に子どもの頃の身体活動といえばその多くが外遊びによるものであり、その頻度は成長とともに減っていき、身体活動の種類はスポーツへの参加へと移行していく。そのため、子どもの頃の養育環境の影響は永続的なものではないと考えることも可能だ。その一方、外遊びによって運動能力や社会的スキルが伸長し、成長過程でスポーツに積極的に参加するようになるであろうことから、子どもの頃の養育環境の影響は永続的になり得ると考えることも可能だ。

この論文の著者らは、この点を縦断的な研究手法により検討した。スイスで行われた研究であり、同国は子どもの外遊びの時間が国際的に比較して長いことから、このトピックの研究に適した国だと著者らは述べている。

身体活動の維持にとって好ましくない環境で育つ子どもたちへの早期介入が必要

この研究は、1998~2007年にスイスで生まれた子どもを対象に、身体活動習慣を把握する目的で行われた大規模調査「SOPHYA」(Swiss children’s Objectively measured PHYsical activityの略)の一環として実施された。解析対象は、2014年のベースライン調査と約5年(平均4.96〈範囲3.8~6.4〉年)後の追跡調査にも参加した447人。ベースライン時点で平均10.0(範囲6~16)歳であり、男児が48%だった。

自宅周辺の環境については、対象者またはその保護者対対象のアンケートと、地理情報システム(geographic information system;GIS)の二つの方法で評価した。身体活動量については、ベースライン時と追跡調査時にそれぞれ1週間にわたり活動量計を身に付けて生活してもらい評価したほか、スポーツクラブへの加入の有無、自転車競技を行っているか否かも把握した。なお、スペインは自転車競技が盛んな国として知られている。

成長とともに身体活動量が減少

まず、身体活動量の変化を年齢層別(10歳以下/超)にみると、6~10歳の群はベースライン時に618±169カウント(以下、単位省略)であったものが、5年後の追跡調査では470±163だった。11~16歳の群は同順に476±171、413±171だった。

つまり、横断的な比較でも縦断的な変化の検討でも、年齢が高いこと(または成長するほど)身体活動量が減少していた。性別での比較では両時点ともに男児の活動量のほうが有意に多かった。

自宅周辺環境のアンケート調査結果と身体活動量の関係

次に、アンケート調査で評価した自宅周辺環境と身体活動量の関係をみてみよう。この解析は、年齢、性別、国籍、世帯収入、測定された季節が調整されている。

自宅周辺の道路の安全性、公園や遊び場へのアクセスの利便性、社会的な安全性などの主観的評価のスコアの合計の三分位に基づき3群に分類し、最高三分位群を基準に身体活動量を比較すると、ベースライン時の横断的解析では、最低三分位群(-52.4〈95%CI;-88.6~-16.2〉)および第2三分位群(-41.1〈―78.0~―4.2〉)ともに、身体活動量が有意に少なかった。さらに、5年後の追跡調査でも同順に-48.1(-86.6~-9.7)、-49.6(-91.0~-8.3)と、両群ともに身体活動量が有意に少なかった。

また、最低三分位群は、ベースライン時点と追跡調査時点の身体活動量がともに中央値を上回る可能性が有意に少ないことが示された(OR0.6〈0.3~1.0〉)。

GISデータで把握した自宅周辺環境と身体活動量の関係

続いて、地理情報システム(GIS)で評価した自宅周辺環境と身体活動量の関係を、上記同様の交絡因子を調整して解析した結果をみてみる。

メインストリートの混雑状況は、ベースライン時点では身体活動量との関連が非有意だったが、追跡調査では、混雑している地域に住んでいる子どもほど身体活動量が有意に少なくなっていた(最高三分群と第2三分位群がともに有意)。緑地の広さは、ベースライン時点において最低三分位群は身体活動量の少なさと有意な関連があり、追跡調査では有意性が消失していた。社会経済環境は追跡調査時点において有意な関連が認められ、社会経済性が低い地域の子どもは身体活動量が少なかった。

スポーツクラブや自転車競技の参加とも有意な関係

自宅周辺環境のアンケート調査結果との関係

ベースライン時のアンケート調査に基づく、自宅周辺環境の主観的評価の合計スコア三分位での比較では、上記同様の交絡因子を調整後、スポーツクラブへの参加、自転車競技への参加、いずれについても有意な関連が認められなかった。ところが5年後の追跡調査では、最低三分位群では、スポーツクラブへの参加(OR0.6〈0.3~1.0〉)と自転車競技への参加(OR0.5〈0.3~0.8〉)の双方が、有意に少なかった。

GISデータで把握した自宅周辺環境との関係

ベースライン時にGISで評価した自宅周辺環境のうち、社会経済環境の高低で二分して比較すると、交絡因子調整後、スポーツクラブへの参加、自転車競技への参加、いずれについても有意な関連が認められなかった。ところが5年後の追跡調査では、社会経済性が低い地域の子どもは自転車競技への参加が有意に少なかった(OR0.6〈0.4~1.0〉)。スポーツクラブへの参加については有意差がなかった。

これらの結果に基づき論文の結論は、「小児期に身体活動に適した地域で育つと、思春期から若年成人期に成長した時点でも活動的であり続ける可能性が高くなることが示唆された。好ましくない地域で育つ子どもが人生の早い段階で、身体活動という面での遅れをとるようなことにならないよう、早期介入の必要がある」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Does growing up in a physical activity-friendly neighborhood increase the likelihood of remaining active during adolescence and early adulthood?」。〔BMC Public Health. 2024 Oct 19;24(1):2883〕
原文はこちら(Springer Nature)

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