コラーゲンペプチドは筋損傷や疲労の回復にどのくらい有効なのか? システマティックレビュー
コラーゲンのサプリメントによる筋損傷や疲労からの回復を促進するのかという疑問に関する、システマティックレビューの結果が報告された。メタ解析はされていないが、有効性は支持されると著者らは述べている。ブラジルの研究者の報告。
コラーゲンペプチドに期待される二つの役割
加水分解されたコラーゲンは、筋骨格系へのプラス作用が報告されている。この作用を生かせる可能性のある場面として、二つのケースが想定される。一つはアスリートにおいて、筋損傷のダメージの抑制と回復の促進であり、トレーニングのダウンタイム(回復のためにトレーニングを控えるべき時間)短縮を介してパフォーマンス向上につながる可能性がある。もう一つは高齢者において、サルコペニアの予防等のために筋肉量増大や筋肉機能の向上を図る際に役立つ可能性がある。
これらの可能性を報告した研究は少なくないが、これまでのところ包括的な系統的レビューはあまり行われていないことを背景として、今回紹介する論文のレビューが行われた。
レビューのプロセスについて
文献検索には、PubMed/MEDLINE、Scopus、Web of Science、Cochrane Libraryなどのデータベースが利用され、英語で執筆され査読のあるジャーナルに掲載された、筋損傷や遅発性筋肉痛に対する加水分解コラーゲンまたはコラーゲンペプチドの有用性を検討した研究報告を検索した。レビュー論文、ケーススタディ、介入を行っていない観察研究、および加水分解されていないコラーゲンを使用した研究は除外した。なお、コラーゲンペプチドは加水分解によって分子量が小さくなり、生体への吸収や生体内での利用が高まると考えられている。
検索キーワードとして、コラーゲン加水分解物、低分子量コラーゲン、コラーゲンペプチド、クレアチンキナーゼ、回復、筋損傷、運動誘発性筋損傷、疲労反応などを設定。複数の研究者が独立して検索と採否の検討を行うことでバイアスリスクを回避した。採否の意見の不一致は討議により解決した。
研究間の異質性が高いものの有用性を示した研究報告が多い
ヒットした752報から、重複削除後、スクリーニング、全文精査を経て、最終的に8件の研究報告を適格と判定した。研究参加者は合計339人で、そのうち157人がコラーゲン摂取条件に割り当てられ、195人はプラセボが割り当てられていた。研究参加者の多くは、筋力トレーニングや有酸素運動を習慣として行っていない健康な個人を対象としていたが、1件は大学のエリートレベルアスリートを対象としていた。また1件の研究はコラーゲンと同時にビタミンCを投与し、他の1件はホエイプロテインを同時投与するという条件で比較していた。
本研究ではメタ解析は行われておらず、体組成、生化学マーカーなど、各研究で評価されていた項目ごとに分類し研究内容を紹介し、論説を加えている。ここでは回復に関する項目を中心に一部を紹介する。
筋肉痛への影響
4件の研究が、ビジュアルアナログスケール(VAS)やリッカートスコアを利用して筋肉痛や疲労の程度の主観的評価への影響を検討していた。4件のうちプラセボとコラーゲンとの間に有意差を認めたと報告している研究は1件にとどまっていたが、コラーゲンによる疼痛の緩和が示されていた。その研究における効果量(Cohenのd)は、疼痛に関しては0.678、疲労に関しては0.715で、比較的大きかった。
パワーへの影響
筋損傷を誘発してから、カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)や最大随意等尺性収縮などによって介入効果を検討した研究が行われていた。その研究では、筋損傷後のCMJの高さはコラーゲン群のほうが早くベースラインレベルに回復していた(p=0.050)。レクリエーションレベルのトレーニングを行っている対象での研究では、25回の最大膝伸展テストでコラーゲンペプチドとホエイプロテインの併用効果を検討しており、ホエイのみでは10%の増加に対して併用により22%増であったと、肯定的なデータが報告されている。
生化学マーカーへの影響
筋損傷や筋疲労の生化学マーカーを評価していた研究は3件だった。それらの研究結果は一貫性が欠如しており、矛盾した結論が示されていた。これらの矛盾の要因として、研究対象集団の異質性、使用されるコラーゲンペプチドが均一でないこと、摂取タイミングや介入期間の違いなどが想定される。
なかでも対象者のベースライン特性、とくにフィットネスレベルや筋肉量の相違は、サプリメント摂取後の反応に異なる影響を与える可能性がある。また、用いられたコラーゲンペプチドの生理活性特性の相違も関係していることが想定される。低分子量(2,000~3,500ダルトン)のペプチドは吸収されやすさという点で優れているが、筋組織の修復プロセスへの影響はアミノ酸組成や構造によっても異なる可能性がある。
論文の結論には以下のように述べられている。「このシステマティックレビューは、急性の激しいレジスタンストレーニングによる筋肉ストレス軽減に対する、コラーゲンペプチド摂取の可能性を支持している。しかし、研究間の方法論的な異質性のため、コラーゲン摂取による回復促進の根底にあるメカニズムを明らかにするには、さらなる臨床試験が必要である」。
文献情報
原題のタイトルは、「The Effects of Collagen Peptides as a Dietary Supplement on Muscle Damage Recovery and Fatigue Responses: An Integrative Review」。〔Nutrients. 2024 Oct 8;16(19):3403〕
原文はこちら(MDPI)