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喫煙者の多くは健康的な食生活に無関心 国民生活基礎調査を用いた食生活に関連する因子の検討

厚生労働省が行っている「国民生活基礎調査」のデータを利用して、食生活と関連のある因子を検討した研究結果が報告された。健康的な食生活への関心の低い人には、長時間労働、イライラ、ストレス、喫煙などが多くみられ、とくに喫煙習慣は食生活への関心の低さと関連が強いという。日本歯科大学新潟生命歯学部衛生学講座の小松崎明氏らの研究によるもので、「Clinics and Practice」に論文が掲載された。

喫煙者の多くは健康的な食生活に無関心 国民生活基礎調査を用いた食生活に関連する因子の検討

国民生活基礎調査のデータ解析から得られるさまざまな知見

厚労省は、行政施策に活用する基礎データ収集を目的として「国民生活基礎調査」を毎年実施し、かつ3年ごとに大規模調査としてより広範なデータを収集している。国民生活基礎調査の結果は同省から報告されているが、その元データを詳細に分析することで、報告書ではわからないさまざまな情報を得ることができる。小松崎氏らはこれまでに、同調査のデータ解析から、ストレスと定期的通院、睡眠時間と自覚症状、飲酒習慣と口腔症状などの関連を解析し報告してきている。

今回、同氏らは、健康的な食事の食べ方に着目して食生活の背景因子を検討し、何が健康的な食生活を妨げているのかという視点で解析を行った。

生活習慣病予防・治療には、喫煙と食生活への関心の有無の把握が重要な可能性

この研究のため小松崎氏らは、厚労省から許可を得て2016年(大規模調査として実施された年)の「国民生活基礎調査」に回答した、1万5,294人分の匿名化されたデータを入手。食生活に関する4項目の質問に回答していて、年齢が30~69歳の範囲にある男性3,814人を解析対象とした。

食生活に関する4項目の質問とは、「規則正しく朝・昼・夕の食事をとっている」、「バランスのとれた食事をしている」、「うす味のものを食べている」、「食べ過ぎないようにしている」の四つ。これら4項目の質問のいずれかに「はい」と回答していた人(66.8%)を、食生活に「関心のある群」として、すべてに「いいえ」と回答していた人(33.2%)を「無関心群」とし、以下の統計解析を行った。

なお、質問ごとに「はい」(関心あり)と回答した割合をみると、「規則正しく」が46.7%で最も高く、以下、「過食しない」が34.0%、「栄養バランス」が33.0%であり、「うす味」は20.5%と「はい」の割合が最も低かった。

飲酒以外のすべての生活習慣が、食生活への関心の有無で有意差

まず、年齢や労働時間、飲酒・喫煙習慣など、それぞれの生活習慣関連因子で全体を2群に分けたうえで、食生活に「関心あり群」と「無関心群」の割合を比較した。その結果、飲酒習慣の有無のみはその分布に有意差がなかったが、その他の因子は以下に示すように、すべて有意差が認められた。

年齢(50歳未満/以上)については若年層に無関心群が有意に多かった。労働時間(週56時間未満/以上)については長時間労働者、睡眠時間(6時間未満/以上)については短時間睡眠者、喫煙習慣の有無では喫煙者、主観的健康観(よい・まあよい/あまりよくない・よくない)については低評価群で、無関心群が有意に多かった。

イライラや頭痛は無関心群で有意に多く、高血圧や受療行動は関心あり群で有意に多い

次に、何らかの症状や疾患の有無で全体を2群に分けたうえで、食生活に「関心あり群」と「無関心群」の割合を比較。すると以下に示すような有意差が認められた。

「イライラしやすい」および「頭痛」が当てはまると回答した人には、無関心群が有意に多かった。一方、「高血圧」および「病院・診療所に通っている(往診、訪問診療を含む)」が当てはまると回答した人には、関心あり群が有意に多かった。

食生活への関心の有無で、有する症状や疾患の順位に有意差

続いて、食生活に「関心あり群」と「無関心群」のそれぞれにおいて、何らかの症状または疾患を有する頻度が高いものから順位付けを行った。

症状の1位と2位は、食生活の関心の有無にかかわらず、「腰痛」と「肩こり」であったが、3位は無関心群では「体がだるい」、関心あり群は「せきやたんが出る」、4位は同順に「せき、関節の痛み」、「歯の関連症状」、5位は「手足のしびれ」、「体がだるい」だった。一方、疾患については、食生活の関心の有無にかかわらず1~5位が、「高血圧」、「糖尿病」、「脂質異常症」、「歯の病気」、「腰痛」の順であった。ただし、6位以降の順位は異なっていた。

ウィルコクソンの符号順位検定により、症状、疾患ともに、食生活への関心の有無で有意差が認められた。

喫煙者は食生活に無関心であることが多い

最後に、食生活への関心の有無を目的変数(無関心を1、関心ありを0と設定)、生活習慣や有している症状・疾患を説明変数として、年齢と労働時間を調整したうえで、二項ロジスティック回帰分析を施行。その結果、喫煙習慣のみが、食生活に対する関心の低さに有意に関連のある因子として抽出された(OR2.20〈95%CI;1.43~3.40〉)。一方、年齢は食生活に対する関心の高さと関連のある唯一の因子だった(OR0.52〈同0.33~0.82〉)。

以上の総括として著者らは、「国民生活基礎調査のデータを用いた解析によって、食生活への関心と関連があると推測される因子が明らかになった。この結果は、食生活に対する意識と食行動の改善を阻害する要因を示唆していると考えられる。成人期の生活習慣病対策における今後の研究では、食生活への関心の程度を評価することが重要と言えるのではないか」と結論づけている。

文献情報

原題のタイトルは、「A Study of the Factors Impeding Proper Dietary Habits: An Investigation Using the Japanese Comprehensive Survey of Living Conditions」。〔Clin Pract. 2024 Oct 23;14(6):2245-2255〕
原文はこちら(MDPI)

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