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ゴルフパフォーマンスのための栄養戦略 現在のエビデンスのスコーピングレビュー

ゴルフのパフォーマンスのための栄養という視点で行ったスコーピングレビュー論文が報告された。結論としては、ゴルフの栄養戦略を検討するにはこのトピックに焦点を絞った研究が少なく、さらなる研究が必要と述べられているものの、現時点でのエビデンスが整理されており、ゴルフと栄養の全体的な傾向を把握できる。要旨を紹介する

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スポーツとしてのゴルフの特徴と栄養戦略

スポーツとしてのゴルフの特徴は、競技場であるゴルフ場がそれぞれ異なるデザインで設計されていて、地形や気候などの変化の影響が大きいこと、パワーとテクニックの双方がともに重要なこと、加齢に伴うパフォーマンスの低下が比較的緩やかなことなどが挙げられ、また18ポールのラウンドに4~6時間要することから、試合前および試合中の栄養戦略、あるいは水分摂取戦略が重要となることも特徴といえる。世界中で推定6,600万人がゴルファーがいると推定されており、勝利のための栄養戦略への潜在的な需要は少なくないと考えられるが、これまでのところ十分な研究はなされていない。

このスコーピングレビューでは、2003年以降に報告されたゴルフと栄養に関する論文を、ProQuest Central、Web of Science、Scopus、SPORTDiscus、PubMedという文献データベースを用いて検索。包括基準は、スコーピングレビューの目的から広く情報を収集するため、英語で執筆されていて全文が公開されている論文であることを条件に、研究対象の性別や競技レベル、疾患等を有するか否かを問わず、またゴルフの形態(18ホール/9ホール、実際のプレーかシミュレーターによるものか、クラブの運搬手段など)も問わないこととして、灰色文献(学術的なジャーナルに正式に発表されていない文献)も含めた。

82件の文献を特定

検索により3,616件がヒットし、重複削除後の2,731件をタイトルと要約に基づき4人の研究者が独立してスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は討議により解決した。271件を全文精査の対象とし、最終的に82件をレビューの対象として抽出した。

抽出された82件の文献は、62件が原著論文(75.6%)で、11件(13.4%)はレビューなどの二次文献であり、9件(11.0%)は灰色文献だった。全体で16カ国から報告されていて、最多は米国の34件(41.5%)であり、2位は英国の17件(20.7%)で、次いでオーストラリアが6件(7.3%)、ドイツと韓国が各4件(各4.9%)に続き、日本が3件(3.7%)だった。その他は、カナダ、スペイン、トルコなど。

研究デザインは、原著論文の62.9%は横断研究、17.7%は縦断研究、16.1%は生理学的な指標を検討する実験的デザインによる研究、3.2%はケーススタディーであり、二次文献はシステマティックレビューやナラティブレビュー、スコーピングレビューだった。

ゴルフパフォーマンスのための主要栄養素

ゴルフは通常、中程度の強度の有酸素運動で平均4.5METs程度と報告されている。1ラウンドで10km以上歩く場合もあり、この間、栄養素を摂取しない場合は血糖値が10~30%ほど低下するとの報告もみられる。ラウンド中に炭水化物を摂取した場合、細胞間質液糖濃度(血糖値とほぼ同義)の低下幅と、主観的な疲労感が有意に抑制されるとされ、適切な炭水化物摂取がゴルフパフォーマンスの維持に役立つ可能性がある。一方、グリセミックインデックス(GI)に着目した研究があり、その研究では摂取する食品のGI値の高低でプレー中の血糖値に有意な差は生じないことが報告されている。

タンパク質に関しては、ドライビングやパッティングなどの精度を、タンパク質と炭水化物を摂取した場合と、炭水化物とプラセボを摂取した場合とで比較した研究がある。その研究では、タンパク質と炭水化物を摂取した場合のほうが主観的な疲労感が抑制されたことが示されている。

脂質に関しては、ゴルフパフォーマンスの文脈で語られた文献は認められなかった。

ゴルフのエネルギー要件

ゴルフのエネルギー要件については比較的多くの報告がヒットした。しかし報告されている結果は、1ラウンドあたり663~1,954kcalと広い範囲に分布していた。これには、ゴルフ場のコースや気象条件、クラブの運搬手段など、ゴルフという競技に特異的なさまざまな要素が関与していると考えられる。

なお、男性と女性のアマチュアゴルファーを比較した研究があり、自覚的運動強度が同等にもかかわらず、女性の消費エネルギー量のほうが大きいことが報告されている。

ゴルフパフォーマンスとサプリメント

カフェイン

カフェインは多くのスポーツで広く使用されているが、ゴルフパフォーマンスに関する研究は多くない。そうではあるが、男性ゴルファーを対象に155gのカフェインまたはプラセボを摂取してもらうという二重盲検試験の報告がある。その研究では、カフェイン摂取によりスコアが有意に向上し、ドライブの距離も有意に伸びたことが示されている。また、実験室ベースの研究では、カフェインと炭水化物が含まれているドリンクの摂取により、パットの成功回数が有意に上昇したという。

一方、カフェイン3mgとプラセボで、18ホールの成績を比較した結果は有意差がないという報告もみられる。ただし、シミュレーターで評価するとドライブのスピードと距離に有意差が観察されたとのことだ。

なお、ゴルフパフォーマンスの向上のためにカフェインを利用する際の留意事項として、トーナメント形式の場合、夕方にカフェインを摂取すると夜間の睡眠に影響が生じて、翌日のパフォーマンスに対してマイナスの作用をもたらす可能性がある。

クレアチン

今回の文献検索で、クレアチンに関しては1件のみヒットした。それによると、男性ゴルファーがクレアチンを30日間摂取した結果、ドライビングの距離が延び、またベンチプレスのピークパワーが上昇したとのことだ。

論文ではこれらのほかにも、ゴルファーの体組成と栄養、トーナメント参加の遠征時の栄養など、幅広い観点からエビデンスが整理されている。また、現在のエビデンスレベルと不足している情報、求められる研究の優先事項も総括されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Nutrition and Golf Performance: A Systematic Scoping Review」。〔Sports Med. 2024 Sep 30〕
原文はこちら(Springer Nature)

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