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筋肉増強には炭水化物が大切? 国内大学サッカー選手のプロテインサプリ利用調査からの知見

国内の大学サッカー選手のプロテインサプリメントの利用と、除脂肪体重指数(FFMI)や栄養素摂取量との関連を調査した結果が報告された。サプリ利用者は運動によるエネルギー消費が有意に多いことや、FFMIが高い選手は炭水化物摂取量が多い傾向のあることなどが示されている。京都府立大学大学院生命環境科学研究科の小林ゆき子氏らの研究によるもので、「Physical Activity and Nutrition」に論文が掲載された。

筋肉増強には炭水化物が大切? 国内大学サッカー選手のプロテインサプリ利用調査からの知見

日本人の男子大学サッカー選手におけるプロテインサプリの利用状況を調査

多くのアスリートが筋肉量増大のためにタンパク質摂取量を増やしていて、プロテインサプリを利用していることも少なくない。実際、レジスタンストレーニングを行っているアスリートでは、タンパク質摂取が筋肉量や筋力にプラスに働くことを示唆するデータがある。しかし、サッカーのような持久系競技アスリートでのエビデンスは十分でなく、とくに日本人サッカー選手のプロテインサプリ利用の体組成への影響はほとんど明らかにされていない。これを背景に小林氏らは、国内大学サッカー選手を対象とする横断研究を実施し、プロテインサプリの利用率、サプリ利用と体組成および栄養素摂取量との関連を検討した。

解析対象者の特徴

この研究には、大学サッカー部に所属する38人の男子学生が参加。データ欠落のため解析対象は30人となった。

2023年10月の試合のない2日間にわたり、摂取した飲食物をすべてスマホで撮影してもらい、栄養素摂取量を把握。また、この2日間は起床から就床まで5分間隔の行動記録をとってもらい、身体活動量を把握した。体組成は生体インピーダンス法で評価した。解析対象者の主な特徴は以下のとおり。

年齢20.4±1.3歳、BMI21.6±1.4、除脂肪体重(fat-free mass;FFM)59.6±7.2kg、除脂肪体重指数(fat-free mass index;FFMI)19.2±1.3、エネルギー摂取量2,977±677kcal/日、総エネルギー消費量3,186±547kcal/日、利用可能エネルギー量(energy availability;EA)37±9kcal/kg FFM、運動時エネルギー消費量(exercise energy expenditure;EEE)777±348kcal/日。

なお、除脂肪体重指数(FFMI)は、除脂肪体重を身長の二乗で除した値。体重を身長の二乗で除した値であるBMIが肥満ややせの判定に用いられているのに対して、FFMIは全身の筋肉量の多寡の指標として用いられている。

プロテインサプリ利用率は50%で、利用の有無はFFMIの高さと関連なし

解析対象の50%に相当する15人が、習慣的にプロテインサプリを摂取していた。

プロテインサプリ使用の有無による身体的特徴と栄養摂取量の比較

プロテインサプリの利用の有無で2群に分けて比較すると、BMIやFFM、FFMI、エネルギー摂取量、総エネルギー消費量、利用可能エネルギー量(EA)に有意差がなかった。FFMIに有意差がないことから、プロテインサプリを習慣的に摂取していても、筋肉量はサプリを摂取していない群と大きく変わらないと考えられた。

一方、運動時エネルギー消費量(EEE)はサプリ摂取群のほうが有意に高かった(918±335 vs 636±309kcal/日、p=0.023)。また、炭水化物摂取量に有意差があり(411.1±126.0 vs 328.8± 75.4g/日、p=0.039)、銅、ビタミンB1、B2、B6、ビタミンC、ビタミンDの摂取量も、サプリ摂取群が有意に多かった。

FFMI高値に関連のある栄養素はタンパク質より炭水化物

次に、解析対象全体のFFMIの中央値である18.9をカットオフ値として、サプリを利用している15人を、FFMI高値群(9人)とFFMI低値群(6人)に二分して比較を行った。

すると、BMI、FFM、FFMI、およびEEEはFFMI高値群が有意に高く、エネルギー摂取量、総エネルギー消費量、およびEAは有意差がなかった。また、炭水化物やタンパク質を含めて、栄養素摂取量には有意差が認められなかった。

ただし、非有意ではあるものの、エネルギー摂取量(p=0.169)、総エネルギー消費量(p=0.076)はFFMI高値群のほうが高い傾向にあり、同様に炭水化物摂取量(p=0.092)もFFMI高値群のほうが高い傾向にあった。それに対してタンパク質摂取量は、顕著な群間差がみられなかった(p=0.302)。

続いて、炭水化物とタンパク質の摂取量とFFMIとの相関を検討。すると、炭水化物はr=0.590(p=0.001)、タンパク質はr=0.448(p=0.013)であり、いずれも有意な正相関が認められた。

本研究のポイント

著者らは、サンプル数が少なく横断研究であるという本研究の限界点を述べたうえで、以下のような考察を加えている。

まず、プロテインサプリを利用している選手のほうが、運動時エネルギー消費量(EEE)が有意に高いという点について、サプリ利用者は部活以外での自主トレの量が多いことを表している可能性が高いとしている。また、サプリの利用はFFMIと関連がない一方で、FFMIが高い選手はエネルギー摂取量や炭水化物摂取量が多い傾向にあったことから、筋肉量の増大にはタンパク質摂取量よりもエネルギーと炭水化物の摂取量を増やすことが重要な可能性があるという。

結論は、「アスリートがタンパク質の所要量を満たすためにプロテインサプリを摂取する場合、利用可能エネルギー量(EA)が低い状態を避けることが大切で、それには炭水化物摂取量を把握することが不可欠である。これらの知見は、アスリートの筋肉量維持のための栄養戦略、およびプロテインサプリの効率的な利用法の確立に寄与すると考えられる」と総括されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Relationship between fat-free mass index and nutrient intake in protein supplement user among Japanese collegiate soccer athletes」。〔Phys Act Nutr. 2024 Sep;28(3):36-42〕
原文はこちら(Korean Society for Exercise Nutrition)

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