筋力と筋持久力に対するカフェインの効果をアンブレラレビューで検証
カフェインの筋力と筋持久力に対する影響を調査した研究報告のメタ解析のメタ解析、いわゆるアンブレラレビューによる解析結果が報告された。いずれに対しても正の有意な影響が確認されたという。
アンブレラレビューによるカフェインの効果の検証
カフェインはアスリートの筋力や筋持久力を高めるエルゴジェニックエイドとして広く用いられており、有用性に関する多くの研究報告がなされている。また、それらの研究報告を対象とするメタ解析の報告も少なくない。しかし、メタ解析の結果は必ずしも一貫性がなく、例えば筋力と筋持久力の双方に有効性が認められると結論づけたものがあれば、筋力には有意な影響を及ぼさないと結論づけたものがある。
メタ解析の報告を対象とするメタ解析、いわゆるアンブレラレビューの解析も既に1報存在するが、その報告以降にも新たに、女性アスリートのみを対象とした2報のメタ解析を含む数報のメタ解析の結果が報告されている。今回紹介する論文は、それらの新しい報告もレビュー対象に含めて改めて行われたアンブレラレビューの結果。
文献検索の方法について
システマティックレビューとメタ解析のためのガイドライン(PRISMA)に則して、2022年8月15日までに、PubMed、Scopus、Web of Scienceなどの文献データベースに収載された論文を対象とする検索が行われた。また、Google Scholarを用いたハンドサーチも行った。包括基準は、健康な対象における筋力または筋持久力に対するカフェインの急性効果を検討した研究のメタ解析の報告。原著論文、学会報告、ナラティブレビュー、メタ解析の行われていないシステマティックレビューは除外した。
検索でヒットした2,312報を重複削除後に2名の研究者が独立して、タイトルと要約に基づくスクリーニングを実施。52報に絞り込んで全文精査を行った。採否の意見の不一致は3人目の研究者を含めた討議により解決した。
包括基準を満たす研究は10件だった。そのうち、効果量を過重平均差として報告していた1件を除外し、9件を解析対象とした。
筋力、筋持久力に対しても有意なプラスの影響
抽出された9件の報告は2010~2022年に報告されており、筋力は9件すべてで解析され、筋持久力は4件で解析されていた。研究参加者数は、筋力の解析については1,628人、筋持久力は925人であり、カフェイン摂取量は1.56~5.74g/kgの範囲で、摂取のタイミングは試験の50~60分前だった。AMSTAR2ツールという評価ツールに基づき、5件は高品質、4件は中等度の品質と判定された。報告者の国籍は5件がオーストラリアで、他の4件は米国、スペイン、ブラジル、チュニジアが各1件だった。
筋力への影響
筋力への影響を検討した9件のメタ解析のうち、8件はカフェインに有意なプラスの効果があると結論づけ、1件のみが非有意な結果を報告していた。アンブレラレビューのメタ解析では、標準化平均差(SMD)=0.18(95%CI;0.14~0.21)で有意なプラスの効果が示された。研究間の異質性は認められなかった(I2=0%)。また、感度分析として、解析対象を1件ずつ除外する解析が行われたが、結果に有意な変化はなかった。小規模研究バイアスの存在も認められなかった。
サブグループ解析では、男性と女性を区別していない研究よりも女性のみの研究、カフェイン摂取量の多い研究、1RM(ベンチプレスを1回だけ挙上可能な最大重量〈repetition maximum〉)よりも握力を評価した研究で、より大きな効果量が認められた。
筋持久力への影響
筋持久力への影響を検討した4件のメタ解析はすべて、カフェインに有意なプラスの効果があると結論づけていた。アンブレラレビューのメタ解析では、SMD=0.30(95%CI;0.21~0.38)で有意なプラスの効果が示された。研究間の異質性は低かった(I2=34.6%)。感度分析として、解析対象を1件ずつ除外する解析が行われたが、結果に有意な変化はなかった。
サブグループ解析では、カフェイン摂取量の多い研究で、より大きな効果量が認められた。
著者らは、「筋肉は細胞内カルシウムの増加を通じてカフェインの影響を受け、カフェインを摂取すると筋力と持久力が向上する。本研究では、さまざまな用量のカフェインによってアスリートのパフォーマンスが向上することが示された。ただし、依然として解釈上の大きな制限が残っている。とくに、今後の研究では年齢、および女性の月経状態への留意が推奨される」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「The effect of caffeine supplementation on muscular strength and endurance: A meta-analysis of meta-analyses」。〔Heliyon. 2024 Jul 25;10(15):e35025〕
原文はこちら(Elsevier)