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座っている時間が70分増加し、歩数は4,000歩減少 在宅勤務が多い人の活動量調査

2024年10月26日

労働者の身体活動を活動量計で実測し、在宅勤務の頻度との関連性について検討した結果、在宅勤務が多い人は1日の身体活動量が少なく、座位行動が多いことがわかった。公益財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所の研究グループによる論文が「Journal of Physical Activity and Health」に掲載されるとともに、同研究所のサイトにプレスリリースが掲載された。週に5日以上在宅勤務を行う労働者の1日あたりの歩数は、全く行わない労働者に比べて半分以下だという。

座っている時間が70分増加し、歩数は4,000歩減少 在宅勤務が多い人の活動量調査

研究結果の概要:週5日以上の在宅勤務では歩数が半数以下に

この研究では、明治安田ライフスタイル研究※1のデータを用い、首都圏在住労働者の在宅勤務の頻度と、活動量計※2で実測した1日の座位行動や身体活動(体を動かしている時間や歩数)の関連性が検討された。その結果、在宅勤務が多いほど身体活動量が少なく、座位行動が多いことがわかった。例えば、週5日以上在宅勤務をしている人の1日の歩数は、毎日出社している人の半分以下であることが明らかになった。また、在宅勤務に関連した活動量の低下は、女性、40歳以上、高校卒以下、生活習慣の改善に無関心な労働者でより大きかった。これらの知見は、活動量が低下しやすい労働者の健康を守り長期的な在宅勤務を支援するためにも、身体活動の促進を目的とした対応策の開発と実装が必要であることを強調している。

※1 明治安田ライフスタイル研究:明治安田新宿健診センターを拠点として、運動や座りすぎを中心とした生活習慣が健康に与える影響の解明を目的に行われているコホート研究。Meiji Yasuda LifeStyle study(MYLSスタディ)。「MYLSスタディ」は、公益財団法人 明治安田厚生事業団の登録商標。
※2 活動量計:3軸加速度計センサーを搭載し、日々の身体活動や座位行動を詳細に評価することができる機器。

研究の背景:感染対策緩和後の在宅勤務による身体活動への影響を他覚的に検討

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のまん延により、在宅勤務という働き方が急速に普及した。これまでの研究から、在宅勤務によって通勤時間がなくなることで、睡眠時間や自由な活動時間が増加するというメリットがあると報告されている。一方で、座りすぎをはじめとした不活動状態はさまざまな疾病のリスクを高めることがわかっており、在宅勤務により活動量が減ることで健康に悪影響を及ぼす可能性も指摘されている。

これまでにいくつかの研究から、出社日に比べ在宅勤務日には身体活動量が減少し、座位行動が増加することが報告されてきた。しかし、こうした研究は主にCOVID-19のパンデミック急性期に行われており、感染症対策(商業・運動施設の閉鎖や外出制限など)の影響を受けている可能性がある。加えて、身体活動量の評価方法としてアンケート調査を用いている場合がほとんどで、正確に実情を把握できていない可能性も残る。また、在宅勤務による活動量の低下が大きい集団の特徴がよくわかっていない。

そこで研究グループでは、国内で初めて活動量計による実測データを用い、感染症対策が緩和された時期に労働者を対象にして、在宅勤務の頻度と身体活動・座位行動の関連性とその異質性を調べた。

対象と方法:労働者千人超の身体活動量や座位行動時間を活動量計で計測

本研究は2022年4月~2023年3月にかけてMYLSスタディに参加した労働者(オフィスワーカーや営業職)1,133名を対象とした横断研究。なお、研究期間中に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は発令されておらず、日常生活に影響を与えると考えられる感染症対策(商業・運動施設の閉鎖、外出制限など)は求められていなかった。

対象者は腰に活動量計を装着し、普段の身体活動量や座位行動時間を測定。併せて、調査票を使って1週間の在宅勤務頻度を調査した。これらの情報を基に、在宅勤務の頻度と身体活動・座位行動の関連性を検討した。また、在宅勤務に関連した活動量の低下が顕著な集団を調べるために、社会人口学的特性や健康状態などで層別化した分析も実施した。なお、分析の際は、年齢、性、教育年数、暮らし向き、子どもの数、職種、雇用形態、1週間の労働時間、BMI、主観的健康感、心理的ストレス、行動変容ステージ、活動量計の装着時間の影響を統計学的に調整した。

結果:在宅勤務の頻度が週1~2日でも座位行動時間や歩数に差がみられる

本研究から主に三つの知見が得られた。

第一に、週1~2日であっても在宅勤務を実施している人は、まったく実施していない人よりも身体活動量が少なく、座位行動が多いことがわかった。第二に、在宅勤務の頻度が高いほど活動量が少ないことが明らかになった。例えば、毎日出社している人に比べて、週5日以上在宅勤務している人の1日の歩数は約4,000歩少なく半分以下で(それぞれ7,215歩、3,194歩)、座位行動が約70分多い(それぞれ584分、658分)ことが示された(図1)。

図1 在宅勤務の頻度と1日の座位行動時間・歩数の関連性

在宅勤務の頻度と1日の座位行動時間・歩数の関連性

座位行動時間や歩数は、年齢、性、教育年数、暮らし向き、子どもの数、職種、雇用形態、1週間の労働時間、BMI、主観的健康感、心理的ストレス、行動変容ステージ、活動量計の装着時間を調整した値
(出典:明治安田厚生事業団 体力医学研究所)

また、こうした在宅勤務に関連した活動量の低下が顕著な集団がいることが明らかになった。具体的には、40歳以上、女性、教育歴が高校卒以下、運動や食習慣の改善に対して無関心な労働者において、在宅勤務に関連した活動量の低下が著しいことがわかった(図2)。

図2 属性別にみた在宅勤務に関連した身体活動時間の低下

属性別にみた在宅勤務に関連した身体活動時間の低下

(出典:明治安田厚生事業団 体力医学研究所)

パンデミックで定着した在宅勤務という働き方に対応した公衆衛生対策が必要

本研究から、感染症対策が緩和された現在においても在宅勤務を行うことで、活動量が大幅に低下する可能性があることがわかった。また、こうした活動量の低下が著しい集団(女性や生活習慣の改善に無関心な労働者)がいることも確認された。

これまでの研究から、座りすぎや不活動状態が心身の健康に悪影響を及ぼすことがわかっており、在宅勤務の長期化により、新たな健康リスクが高まることが懸念される。本研究の成果は、活動量が低下しやすい労働者の健康を守り長期的な在宅勤務を支援するためにも、身体活動の促進を目的とした対応策の開発と実装が必要であることを強調している。

なお、本研究では、在宅勤務頻度と身体活動や座位行動の因果関係は明らかになっていない。また、対象者は首都圏在住のオフィスワーカーや営業職が主であり、在宅勤務を行う環境や通勤手段等が異なる他の地域・職種の労働者に対して、得られた結果が当てはまるかについては別の検討が必要。

プレスリリース

在宅勤務で歩数が4,000歩減少、座位時間が70分増加―活動量計を用いた国内初の研究結果まとまる―(明治安田厚生事業団)

文献情報

原題のタイトルは、「Associations of working from home frequency with accelerometer-measured physical activity and sedentary behavior in Japanese white-collar workers: a cross-sectional analysis of the Meiji Yasuda LifeStyle study」。〔J Phys Act Health. 2024 Oct 8:1-8〕
原文はこちら(Human Kinetics)

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