栄養食品やサプリメントなど健康食品を利用している人の栄養摂取量調査の結果を公表 東邦大学
日本人の食事摂取量データの分析から、栄養強化食品やサプリメントという、いわゆる「健康食品」が、栄養素の摂取量にどのくらい寄与しているのかが明らかになった。東邦大学の研究グループの研究成果であり、「BMC Nutrition」に論文が掲載されるとともに、大学のサイトにプレスリリースが発表された。栄養強化食品やサプリメントの利用者は、それらを含まない通常の食事において、非利用者と比べビタミンやミネラルの摂取量が多く、また、食事摂取基準で示されている適切な摂取量を満たしている者の割合が高い一方で、利用者の2%ではビタミンB6の過剰摂取の恐れが認められたという。研究者らは、「この結果が日本人の栄養素の摂取量を改善する健康政策立案に役立つことが期待される」としている。
研究の背景:サプリ等の利用による栄養素の充足/過剰への影響を日本人で調査
サプリメント利用者は世界的に増加している。食品の栄養強化はビタミンやミネラルの摂取量を補うために取り入れられている方法だが、一方でそれらの利用は、特定の栄養素の過剰摂取を招く恐れがある。サプリメントや栄養強化食品の利用者の栄養素摂取量を調べたこれまでの研究は欧米からの報告が主であり、日本を含むアジア圏からの報告はわずか。
日本と欧米とでは、よく使われているサプリメントの種類が異なり、さらに、日本では食品の栄養強化が義務付けられていない。従って、日本人において、栄養強化食品やサプリメントが総栄養摂取量に占める割合は、欧米人とは異なる可能性が高いと考えられる。
この研究は、日本人成人の栄養強化食品やサプリメントの利用者において、それらが、栄養摂取量および栄養摂取量の適切性(具体的には、食事摂取基準の順守)にどのように寄与しているかを調べることを目的として行われた。
研究の方法:日本人成人約400人の食事記録を解析
2012年2~3月に、全国23都道府県の福祉施設に勤務する成人392人(20~69歳)から収集された食事摂取量データの二次解析を行った。
参加者の食事記録(調査日に食べたもの・飲んだものの食品名と重量をすべて記録してもらう方法)に記載された商品名から、栄養強化食品およびサプリメントにあたる食品を特定し、4日間の食事記録日のうち、少なくとも1回以上、それらを利用した参加者を「栄養強化食品および/またはサプリメントの利用者」とした。次に、商品名をもとに、その栄養素含有量を調べ、栄養強化食品およびサプリメントからの栄養素摂取量を推定した。
栄養強化食品および/またはサプリメントの利用者と非利用者との間で、栄養素の摂取量を比較し、さらに、Multiple Source Method※1という統計手法を用いて、18種類の栄養素について個々人の習慣的摂取量を算出した。それらの習慣的摂取量の値をカットポイント法※2を用い、「日本人の食事摂取基準 2020年版」の推定平均必要量※3または耐容上限量※4と比較して、各栄養素の摂取量が不足あるいは過剰である者の割合を調べた。そして、利用者の栄養素の摂取量は、栄養強化食品およびサプリメントからの栄養素摂取量を含めた場合(総摂取量)と、除いた場合(通常の食事からの摂取量)との二通りを求め、不足あるいは過剰である者の割合を、それぞれ利用者と非利用者との間で比較した。
解析結果:健康食品は栄養素充足に寄与するも、ビタミンB6は過剰につながり得る
栄養強化食品および/またはサプリメントの利用者と特定された122人(参加者の31%)において、それらからの栄養素摂取量が各栄養素の総摂取量に占める平均割合は、調査した全25種類の栄養素について、栄養強化食品では4%未満(図1)、サプリメントでは21%未満(図2)だった。
図1 健康食品利用者における、各栄養素の摂取量に対する栄養強化食品の寄与割合
図2 健康食品利用者における、各栄養素の摂取量に対するサプリメントの寄与割合
栄養強化食品およびサプリメントからの栄養素摂取量を含めない場合(通常の食事のみからの栄養素摂取量)でも、利用者は非利用者よりも、食物繊維、ビタミンD、ビタミンE、チアミン、リボフラビン、ビタミンB6、葉酸、パントテン酸、ビタミンC、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、銅の平均摂取量が多く、栄養強化食品およびサプリメントからの栄養素摂取量を含めた場合、前述の栄養素に加えて、ビタミンKとナイアシンについて、利用者の平均摂取量は非使用者よりも有意に多いことがわかった。
栄養強化食品およびサプリメントからの栄養素摂取量を含めない場合でも、6種類の栄養素について、習慣的摂取量が推定平均必要量を下回っている者の割合は、利用者の方が非利用者よりも低いことがわかった。つまり、6種類の栄養素(ビタミンA、ビタミンB6、チアミン、リボフラビン、カルシウム、亜鉛)について、利用者のほうが摂取量が適切な者の割合が多く、栄養強化食品およびサプリメントからの栄養素摂取量を含めた場合、さらに3種類の栄養素(ビタミンC、マグネシウム、鉄)について、習慣的摂取量が推定平均必要量を下回っている者の割合が、利用者のほうが非利用者よりも低くなった(図3)。
図3 健康食品利用者と非利用者で、習慣的摂取量が推定平均必要量を下回る者の割合
利用者では、栄養強化食品とサプリメントからの栄養素摂取量を含めた場合、含めなかった場合よりも、推定平均必要量を下回る者の割合が、5種類の栄養素(チアミン、リボフラビン、ビタミンB6、ビタミンC、カルシウム)で10%以上低いことがわかった。つまり、栄養素摂取量の適切性が改善した(図3)。通常の食事からの栄養素摂取量では、利用者と非利用者ともに耐容上限量を超えた栄養素はなかった。しかし、利用者の2%では、栄養強化食品とサプリメントからの栄養素摂取量を考慮した場合、ビタミンB6の摂取量は耐容上限量を超えていた。
結論:サプリ等の必要性が低い人がサプリ等を利用している可能性
栄養強化食品とサプリメントは、ビタミンB6を除いて、日本人の利用者が過剰摂取のリスクなしに特定の栄養素を適切に摂取するのに役立っていた。しかし、栄養強化食品やサプリメントの利用者は、通常の食事においても、非利用者よりもビタミンやミネラルの摂取量が多い傾向にあることから、栄養強化食品やサプリメントは、その利用の必要性が相対的に低い人が使用している傾向にある可能性がある。
プレスリリース
「いわゆる『健康食品』」は、栄養素の摂取量にどのくらい寄与しているのか?~日本人の食事記録データの分析から~(東邦大学)
文献情報
原題のタイトルは、「Contribution of fortified foods and dietary supplements to total nutrient intakes and their adequacy in Japanese adults」。〔BMC Nutr. 2024 Sep 27;10(1):125〕
原文はこちら(Springer Nature)