スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

若い女性に特化したビタミンD不足がわかるチェックツールを開発 大阪公立大学

健康な日本人女性583人のデータを基に、ビタミンD欠乏のリスク判定ツールが開発された。大阪公立大学の研究グループの研究成果であり、「Public Health Nutrition」に論文が掲載されるとともに、大学のサイトにプレスリリースが発表された。ビタミンD欠乏高リスク者の迅速な判定や、適切なサプリメントの使用促進に役立つと期待されるという。

若い女性に特化したビタミンD不足がわかるチェックツールを開発 大阪公立大学

研究の概要:若年女性のビタミンD不足は世界共通の課題

必須栄養素の一つであるビタミンDは、食事からの摂取に加え日光を浴びることで生成される。しかし、過度な日焼け対策による日光浴不足などから、とくに若年女性の間でビタミンDの不足・欠乏が深刻な問題となっている。

ビタミンDの不足・欠乏は、妊娠高血圧症候群や子どもの出生時体重の低下にも関係するため、高リスク者を迅速に判定し適切な健康指導を行うことが重要。しかし現状の検査方法は採血が必要でコストも高いため、より簡単にリスク判定が可能な若年女性向けのリスク判定ツールの開発が求められている。

以上を背景として研究グループは、栄養系大学に所属している18~40歳の日本人女性583人に対して横断調査を実施。ビタミンD欠乏の実態と要因を明らかにし、若年女性に特化した新しいビタミンD欠乏リスク判定ツール「ViDDPreS(Vitamin D Deficiency Predicting Scoring)」を開発した。

本ツールにより、ビタミンD欠乏リスクが高い人の判定やその原因の推測が可能となり、また簡単な質問に答えることで、自身のビタミンD欠乏リスクがわかることから、適切なサプリメントの使用促進にも役立つことが期待される。

研究の内容:低コスト、かつ非侵襲でリスクを判定

ビタミンDの不足・欠乏は、生活習慣病のみならず、妊娠高血圧症候群や子どもの出生時体重の低下にも関係すると言われている。なかでも、若年女性ではビタミンD欠乏の割合が高く、この改善が日本のみならず世界中で重要な課題となっている。

基本的には健康とされる個人や集団においてビタミンD栄養状態の改善を図るうえでは、まず重要なこととして、自身のビタミンD栄養状態を認識することが挙げられる。ビタミンD栄養状態の評価は、一般的に血中の25-ヒドロキシビタミンD濃度の測定により行われるが、これには採血が必要で費用も高額。そこで、本研究グループは、若年女性に特化した非侵襲的かつ低コストのビタミンD欠乏リスク判定ツールの開発を目指した。

研究では、北海道・東北、関東、近畿・中国・四国、九州の栄養系大学に所属する18~40歳の女性、計583名を対象として、2020~2022年の夏期(7~9月)、冬期(12~2月)のそれぞれ調査を行った。夏と冬に調査を行ったのは、皮膚に紫外線を浴びることでビタミンDが体内産生される影響を考慮したため。

調査項目は年齢、居住地域、採血時期、現病歴、服薬状況、喫煙状況、飲酒状況、運動頻度、日光曝露習慣および状況、魚類摂取頻度、ビタミンDサプリメントの使用状況。食事調査は自記式食事歴法質問票を用いて行い、紫外線照射量は各地域の採血前30日間の平均ならびに累積値を算出した。また、ビタミンD欠乏は25(OH)D濃度20ng/mL未満を判断基準とした。一度の調査で、ビタミンD欠乏リスクスクリーニング票の開発と妥当性の検討を行うため、対象者をランダムにモデル構築用群と妥当性評価群の2群に分類した。

解析の結果、対象者全体のビタミンD欠乏者の割合は69.5%であり、モデル構築用群と評価用群の間で、背景因子に有意差はみられなかった。また、モデル構築用群のビタミンD欠乏者では、関東地方以外の居住地、冬場の採血、BMI18.5未満の割合、ビタミンDサプリメント非使用、平日の外出時間が短い、魚類の摂取が週1回未満の人の割合が、非欠乏者よりも有意に高い結果を示した。さらに、この結果に基づいて作成したビタミンD欠乏リスクスクリーニング票は、評価用群に適用した場合も妥当であることが確認された。

期待される効果と今後の展開

本研究で開発した「ViDDPreS」は、低コストで介入すべき集団の同定やビタミンD欠乏の要因推測が可能なため、アプローチの方法についても提示ができる。また、ビタミンDサプリメントの使用はビタミンD欠乏者に対して有用な効果が得られやすいため、個人でのViDDPreSの活用により、適切なサプリメントの使用促進につながると考えられ、公衆栄養学分野におけるビタミンD欠乏対策の有用なツールとなることが期待される。

プレスリリース

若年女性に不足しがちなビタミンD 低コストで簡単な欠乏リスク判定ツールを開発(大阪公立大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Development of a predictive scoring system for vitamin D deficiency 'Vitamin D Deficiency Predicting Scoring (ViDDPreS)' based on the vitamin D status in young Japanese women: a nationwide cross-sectional study」。〔Public Health Nutr. 2024 Sep 27;27(1):e185〕
原文はこちら(Cambridge University Press)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ