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マグネシウムで筋肉痛が抑制され回復やパフォーマンスにプラスの影響 系統的レビューの報告

マグネシウムの摂取の影響をシステマティックレビーにより検討した論文を紹介する。高強度運動をする人は10~20%程度、マグネシウムを多く摂取し、とくにトレーニングの2時間前に摂取すると、筋肉痛などに対する有用性が期待できるのではないかとのことだ。

マグネシウムで筋肉痛が抑制され回復やパフォーマンスにプラスの影響 系統的レビューの報告

スポーツサプリとしてのマグネシウム

マグネシウムは人体で4~5番目に多いミネラルであり、エネルギーの産生や貯蔵、神経や血管運動の制御、筋肉の収縮、心筋の亢奮など、さまざまな生化学反応にかかわっている。マグネシウムの吸収はビタミンDへの依存性があり、ビタミンDが不足している状態ではマグネシウムの吸収が低下し、マグネシウムの過剰摂取はビタミンDの不足を招くことがある。またマグネシウムは糖代謝にも関与することや、持続的なトレーニングによって血中のマグネシウム濃度が低下することが報告されている。さらに、血中マグネシウム濃度が基準範囲内であっても、細胞内マグネシウムが欠乏した場合、運動後の筋肉痛が生じる可能性が指摘されている。

このようにマグネシウムはスポーツアスリートにとっても重要な微量栄養素と考えられるが、これまで非活動的な個人を対象とする研究が多く、アスリート対象の研究はあまり行われてきていない。また、マグネシウムには酸化マグネシウムだけでなくいくつかの形態があり、どの形態がスポーツ領域で適しているのかは不明で、至適用量や至適投与タイミングも明らかでない。また、マグネシウム単独で介入を行った研究も限られている。

今回取り上げる論文の著者らは、これらの点についてシステマティックレビューによる検討を行った。

4件の研究から明らかになったこと

文献検索は、2024年1月8日にPubMed、Scopus、Web of Science/Core Collectionを用いて行い、検索された文献の関連情報もハンドサーチにより検索した。包括基準は、身体的に活動的な個人を対象に行われた研究であり、英語で執筆されている論文とした。除外基準は、健康でない個人を対象とする研究、マグネシウム以外のサプリを併用した研究、動物実験、基礎研究、レビュー論文など。

一次検索で1,253報がヒットし重複削除後の960報を2名の研究者がタイトルと要約に基づき独立してスクリーニングを実施。5報を全文精査し4件の研究報告を適格と判断した。なお、意見の不一致は3人目の研究者との討議により解決した。

4件の研究の参加者は19~27歳で合計73人(男性60人、女性13人)だった。最も古い報告は2017年だった。おもに筋肉痛とパフォーマンスへの影響に焦点を当てられており、1件はランニングパフォーマンス、他にチームスポーツアスリートを対象とする研究が行われていた。なお、本研究ではメタ解析は行われていない。

筋肉痛への影響

2022年に米国から報告された研究では、ベンチプレスにより筋肉痛を誘発し、マグネシウムグリシン酸塩350mgカプセル1日摂取の影響を、9人の男性と13人の女性を対象に検討していた。筋肉痛に関しては主観的な評価による有意な影響が観察された。24、36、48時間後に、マグネシウム群では筋肉痛の評価がベースライン(誘発時点)より低下していたが、対照群では有意な変化がなかった。また、マグネシウムは回復感を有意に改善した。

2019年に英国と中国の研究者により報告された研究では、ふだんのマグネシウムの摂取量が少ない9人の男性レクリエーション長距離ランナー(27歳)を対象に、マグネシウム500mgをカプセルの形態で7日間連続摂取した場合の運動誘発性ストレスへの影響を検討していた。トレッドミルで10kmの下り坂走行とランニングタイムトライアルを行い、トライアル間に2週間のウォッシュアウト期間を置いた。結果は、運動後の数日間の血糖値と筋肉痛に有益な効果があることを示していた。残念ながら、著者らはトライアルタイムを報告していない。

筋損傷への影響

2017年にスペインから報告された研究では、12人のエリートバスケットボール選手(25.3歳)を対象に、筋損傷パラメータへの影響を検討していた。午前中のジムトレーニング2時間、午後のバスケットボール3時間からなる激しいトレーニングを実施。競技シーズンを通して、アスリートは1日400mgのマグネシウムを摂取した。その種類は示されていない。解析の結果、血中マグネシウム濃度が筋損傷マーカー(クレアチニン、尿素窒素、クレアチンキナーゼ、乳酸脱水素酵素など)に影響を与えることが明らかになった。

2019年にスペインから報告された研究(論文著者の多くは前記の研究と同一)では、21日間の自転車レースに参加した18人のプロサイクリストの筋損傷への影響を評価し、マグネシウムが筋損傷に対する保護効果を発揮すると思われると結論付けていた。具体的には、マグネシウムの推奨摂取量(recommended dietary allowance;RDA)を満たすことにより、自転車競技のような激しい運動からの筋肉の回復が促進され、さらにRDAを超える用量では筋肉のパフォーマンスの維持に対する若干の効果が認められた。

以上を基に著者らは、「さらなる研究がもとめられるが、マグネシウムのプラス効果を得る場合、激しい運動をする人は運動をしない人よりも10~20%多い量を摂取し、トレーニングの2時間前にカプセルで摂取することが推奨される。また、オフシーズン中にはマグネシウムレベルをRDAの範囲内に維持することが推奨される」と総括している。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of magnesium supplementation on muscle soreness in different type of physical activities: a systematic review」。〔J Transl Med. 2024 Jul 5;22(1):629〕
原文はこちら(Springer Nature)

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