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運動の効果やパフォーマンス向上における「プラセボ効果」や「ノセボ効果」の影響

今回は、スポーツパフォーマンスや運動の効果におけるプラセボ効果とノセボ効果に関するレビュー論文を紹介する。2019年以降に発表された研究論文のレビューから、スポーツや運動ではプラセボ効果やノセボ効果は従来考えられていた以上の影響力があること、ノセボ効果はプラセボ効果の約2倍の影響力がある可能性などが記されている。

運動のパフォーマンス向上や効果において「プラセボ効果」や「ノセボ効果」の影響

スポーツ・運動領域でのプラセボ効果とノセボ効果

プラセボ効果は、効果を期待できない物質であるにもかかわらず、事前に知らされている情報や期待などが働いて実際に効果が現れることをいい、ノセボ効果はその反対に害はないにもかかわらず副作用が生じたり、あるいは実際には有効な薬の効果が発揮されないことを指す。どちらも医学の臨床では古くから重視されており、とくに新薬開発の治験ではプラセボ効果を上回る有効性の証明が求められる。

スポーツ領域において使用されるサプリメントなどの食品のほかに、暑熱対策や機械的な手法も含む広義のエルゴジェニックエイドについても、プラセボ効果やノセボ効果の存在が知られており、今世紀に入ってから研究数が増加している。顕著なプラセボ効果を報告した例として、カフェインのプラセボで膝伸展力が23.8%増加したとする報告や、アミノ酸のプラセボで重量挙げの記録が11%向上したといったものがあり、またノセボ効果については、架空のサプリメントに関する否定的な情報がランニング速度を低下させることなどが報告されている。

2019年には、2000~2018年に報告された31件の論文を対象とするレビュー論文も発表されている。今回紹介する論文は、その2019年のレビュー論文以降に報告された新たなエビデンスを対象とするレビューとして総括されたもの。

2019年以降の発表論文20報を抽出してレビュー

今回のレビューの対象は、2019年~2024年5月に、PubMed/MEDLINE、Web of Science、EBSCOに収載された論文。包括基準は、スポーツパフォーマンスや運動の効果に対するプラセボ効果またはノセボ効果を対照群との比較または介入前後の比較により、一つ以上の客観的指標を用いて検討していて、査読システムのあるジャーナルに英語で掲載されている論文。除外基準は、学会発表、抄録のみ、プロトコル論文、レビュー・エディトリアル・論評、書籍、英語以外で執筆されているもの、主観的評価指標による解析論文、および研究参加者が自身の介入条件(プラセボか否か)を知り得るデザインでの研究など。

検索キーワードとして、プラセボ効果/反応、ノセボ効果/反応、スポーツ、エクササイズ、パフォーマンスなどを設定。一次検索で103報がヒットし、GoogleScholarなどを用いた参考文献のハンドサーチにより18報を追加、重複削除とタイトル・要約に基づくスクリーニングを経て92報を全文精査の対象とした。最終的に20件の研究報告を適格と判断した。

スポーツ・運動領域では無視できないプラセボ効果とノセボ効果がある

抽出された20件の研究の参加者数は4~78人範囲で合計535人であり、多くは男性だった。研究デザインは大半が前後比較試験だったが3件は対照群を置いた比較試験だった。研究参加者は、15件は一般成人であり、そのほかにパラリンピック選手を対象とした研究、未成年対象研究、未成年のエリートレベルのアスリート対象研究、肥満の小児対象の研究などが含まれていた。

行われた介入は、15件ではサプリメント、4件は機械的なエルゴジェニックエイド、1件はオープンラベルプラセボ(参加者にプラセボの有用性について解説した後にプラセボと知らせた上で摂取させる)により介入していた。

サプリメントの種類としては、カフェイン、ミントやメンソールのジェル、着色された人工甘味料溶液、エナジージェル、高濃度酸素、水などが用いられていた。機械的なエルゴジェニックエイドとしては経頭蓋電気刺激などが用いられ、そのほかにスキーの装具に対する信念、口頭での暗示、小麦粉の錠剤(オープンラベルプラセボ)などの効果が調査されていた。

プラセボ効果は中程度、ノセボ効果はその2倍

20件の研究報告を統合すると、プラセボ効果の効果量(Cohenのd)は0.67であり、中程度の影響力があることが示された。これは、以前のレビューで報告されていた効果量を上回り、これまで考えられていた以上に、プラセボ効果が運動パフォーマンスに大きく影響する可能性が示唆された。

介入手段別にみると、サプリメントの効果量(d)は全体で0.86であり、効果量が小~大に広く分布していた。機械的エルゴジェニックエイドの効果量は中程度(d=0.38)、オープンラベルプラセボはd=0.16だった。

ノセボ効果については3件の研究が5種類の評価指標のデータがあり、それらを統合すると、プラセボ効果のほぼ2倍の効果量が認められた(d=1.20)。

著者らは本研究の限界点として、報告されている結果が研究間で大きな食い違いがあること、ノセボ効果については報告が3件のみであることなどを挙げたうえで、「さまざまな運動パフォーマンスに対してプラセボ効果は小~大の影響を及ぼし、ノセボ効果はその2倍強い影響力を持ち得る」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Placebo and Nocebo Effects on Sports and Exercise Performance: A Systematic Literature Review Update」。〔Nutrients. 2024 Jun 21;16(13):1975〕
原文はこちら(MDPI)

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