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プロテインサプリ摂取と心血管の健康状態に関連は見られずも、体重増加や持久力低下の可能性あり

プロテインサプリメントを摂取している若年男性の心血管の健康状態を、年齢の一致するサプリを摂取していない人と比較した研究結果が報告された。ハーバードステップテストによる運動負荷前後の心電図所見については群間に差がないものの、ステップの持続時間はサプリ摂取群のほうが短かったという。インドの研究者の報告。

プロテインサプリ摂取と心血管の健康状態に関連は見られずも、体重増加や持久力低下を憂慮

プロテインサプリの筋肥大以外のメリットはほとんど検討されていない

近年、とくに若年男性の間で、プロテインサプリメントの利用が世界的に拡大している。ホエイプロテインなどが最も好まれ摂取されているが、その大半は医師や専門家の監督下ではなく、自己判断によるものと考えられている。

プロテインサプリの有用性に関しては既に多く研究がなされてきているが、それらの多くは筋肉の合成・肥大・筋力を評価したものであって、心血管の健康状態に対する影響の研究は、本論文の著者によると「全く考慮されていない」という。また、運動パフォーマンスについても主に瞬発力に焦点を当てた研究が多く、持久力への影響のデータは不足しているとしている。

以上を背景として本論文の著者らは、若年男性がプロテインサプリを摂取することの心血管系の健康と運動持久力への影響に的を絞り、以下の検討を行った。

プロテインサプリ摂取群には過体重が多く、持久力は低い

この研究の対象は18~25歳の若年男性60人で、半数の30人は過去3カ月以上にわたりプロテインサプリを摂取しており、他の30人はプロテインサプリを摂取していない年齢が一致する対照群。研究デザインは横断研究であり、ハーバードステップテストによる運動負荷前と負荷後に心電図検査を行い、自律神経機能の指標(LF/HF比〈low frequency/high frequency ratio〉、SDNN〈successive differences between adjacent NNs〉、SDSD〈standard deviation of successive differences〉)の変化を比較した。

なお、ハーバードステップテストは、ハーバード大学で開発された心肺機能や持久力を測定するための簡易な運動負荷テスト。この研究では16インチ(約40cm)の台の昇降を1分間に30回のペースで行い、5分間もしくは継続不能になるまでのいずれか早い時点まで続けられた。

テスト実施の24時間前からは、コーヒー、ニコチン、アルコールの摂取を禁止し、2時間前からは食事の摂取を禁止した。テストは室温27℃の研究室内で実施した。

サプリ摂取群の全員が専門家の意見によらず摂取

まず、各群のBMIの分布をみると、対照群は正常範囲が24人、過体重が4人、低体重が2人であるのに対して、サプリ摂取群は正常範囲が18人、過体重が12人であって、サプリ摂取群は過体重への分布が有意に多かった。

サプリの摂取期間は、大半の参加者が6カ月以上であり、医療専門家の処方によって摂取している人はなく、インターネット情報またはジムトレーナーから情報を得て摂取を判断していた。

サプリ摂取群の30人が摂取していたサプリは合計13ブランドにわたっていた。それらの多くは20種類のアミノ酸がすべて含まれていたが、数種類のアミノ酸しか含まれていないものもあった。ただし、分岐鎖アミノ酸(BCAA)のロイシン、イソロイシン、バリンについては、全製品に含まれていた。

心電図所見には差はないが、ステップテストの持続時間はサプリ摂取群が短い

では、持久力パフォーマンスと心血管の健康状態を比較した結果をみてみよう。

ハーバードステップテストの持続時間

ハーバードステップテストの持続時間は、対照群は平均4分2秒であったのに対して、サプリ摂取群は平均2分93秒と、有意に短い時間で終了していた。

血圧や心電図所見

血圧は運動負荷前において対照群が114.85/74.5mmHg、サプリ摂取群は118.22/76.44mmHgで有意差がなく、運動負荷後も同順に158.5/90.78mmHg、170.22/90.88mmHgで有意差がなかった。LF/HF比、SDNN、SDSDについても、運動負荷前/負荷後の双方とも、有意な群間差は認められなかった。

以上をもとに著者らの結論は、「プロテインサプリメントの使用者では体重が有意に重く、ステップテストの平均持続時間は有意に短かった。心電図上の心血管パラメータについては、両群ともに運動負荷前と負荷後に有意な差は認められなかった」とまとめられている。なお、研究の限界点として、サンプルサイズの小ささが統計学的に有意な結論を得られなかったことの一因の可能性があることを挙げて、「市販のプロテインサプリの利用と心血管の健康の関係の確認には、より大きなサンプル数での研究が必要かもしれない」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effect of protein supplements on cardiovascular health and exercise performance of young adult males」。〔J Family Med Prim Care. 2024 Aug;13(8):3209-3213〕
原文はこちら(Wolters Kluwer)

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