スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

β-アラニンと重曹を一緒に摂取すると運動パフォーマンスが向上する可能性

β-アラニンと重炭酸ナトリウム(重曹)を、それぞれ単独で摂取した場合と、両者を併用した場合とで、パフォーマンスへの影響が異なるのかどうかを、システマティックレビューにより検討した結果が報告された。メタ解析では、両者を併用した場合にのみ、有意な効果が現れる可能性が示されたという。

β-アラニンと重曹を一緒に摂取するとパフォーマンスが有意に向上する メタ解析

β-アラニンと重炭酸ナトリウム(重曹)を併用すると効果が高まる?

高強度運動を続けた際のパフォーマンスの低下には、無酸素性代謝に伴い水素イオン(H+)が増加し筋肉内のpHが低下して筋アシドーシスとなることが、部分的に関与していると考えられている。これに対してβ-アラニンは、筋肉内でカルノシンを生成し、H+の蓄積を緩衝することでpHの低下を抑制するように働く。また重炭酸ナトリウム(重炭酸曹達〈重曹〉)は、体内に取り込まれると血液中の重炭酸イオン濃度を増加させ、pHを直接的に上昇させる。つまり、β-アラニンと重炭酸ナトリウムはともに、スポーツパフォーマンスの低下を抑制するように働く、エルゴジェニックエイドとなり得る。

これまでに、β-アラニンおよび重炭酸ナトリウムの摂取によるスポーツパフォーマンスへの影響については多くの研究がなされてきており、既にそれぞれのシステマティックレビューとメタ解析の報告もある。しかし、両者を併用した場合の影響に関するシステマティックレビューとメタ解析はまだ行われていなかった。

文献検索の手法について

この研究では、システマティックレビューとメタ解析のためのガイドライン(PRISMA)に準拠した文献検索が行われた。用いられた文献データベースは、PubMed/MEDLINE、SPORTDiscus、Web Of Science、MEDLINEで、2021年5月に最初の検索を行い、2023年2月に追加の文献を確認した。包括基準は、健康な成人(アスリートおよび非アスリート)を対象として、β-アラニンと重炭酸ナトリウムのそれぞれ単独および併用する条件でプラセボ対照の介入を行い、運動能力やスポーツパフォーマンスへの効果を検討し、査読システムのあるジャーナルに掲載された論文。疾患や身体活動に制限のある対象での研究、β-アラニンと重炭酸ナトリウム以外のサプリメントを同時に用いた介入研究などは除外した。

2021年5月の検索では179報がヒットし、重複削除後の119報を論文のタイトルと要約に基づくスクリーニングで13報に絞り込み、全文精査を経て10件の研究報告を適格と判断した。2023年2月の検索では新たに25報がヒットし、重複削除後の10報をスクリーニングにより4報に絞り込み全文精査を行ったところ、適格と判断された論文は抽出されなかった。なお、採否の判定は2名の研究者が独立して行い、意見の不一致は3人目の研究者との討議により解決した。

両者を併用した場合にプラスの影響が認められる

抽出された10件の研究は、英国、オーストラリア、ブラジルからが各3件で、残り1件はフィンランドで行われ、全体で合計12件の解析結果が報告されていた。研究参加者は合計243人であり、女性が含まれていた研究は1件のみだった。参加者の年齢は18~45歳の範囲であり、評価パフォーマンスは自転車が5件、水泳4件、ランニング2件、ローリング1件だった。評価のための運動負荷時間は、大半(11件)が30秒から10分の範囲であり、1件は30秒未満だった。これは、評価されたパフォーマンスの多くが、強い無酸素運動の要素を持っていたことを意味している。

メタ解析の結果について

β-アラニン単独介入の研究については、12件の結果のすべてがプラセボと有意差がないことを報告しており、メタ解析の結果も有意でなかった(標準化平均差〈SMD〉0.18〈95%CI;-0.06~0.43〉)。研究間の異質性は観察されなかった(I2=0%)。

重炭酸ナトリウム単独介入についても、12件の結果すべてがプラセボと有意差がないことを報告しており、メタ解析の結果も有意でなかった(SMD0.17〈同-0.08~0.41〉)。研究間の異質性は観察されなかった(I2=0%)。

一方、β-アラニンと重炭酸ナトリウムを併用した試験では、12件中1件はプラセボに対して有意に優れる結果を報告しており(SMD0.32〈0.07~0.57〉)、メタ解析の結果も有意だった(SMD0.32〈0.09~0.35〉)。研究間の異質性は観察されなかった(I2=0%)。

また、これら三つの条件(β-アラニン単独、重炭酸ナトリウム単独、両者併用)を統合したメタ解析では、プラセボに対する有意な効果が認められた(SMD0.22〈0.09~0.35〉、I2=0%)。なお、ファンネルプロットにより、出版バイアスと小規模研究バイアスの存在は否定された。

実際への適用

以上に基づき論文の結論は、「このメタ解析の結果、β-アラニンと重炭酸ナトリウムを同時に摂取すると、プラセボと比較して運動パフォーマンス上のメリットがあることが示された。しかし、それらのサプリメントをそれぞれ個別に摂取しても、明らかなメリットはないようだ」とまとめられている。また、既報文献からの考察として、推奨される摂取方法が以下のように述べられている。

β-アラニンについては、1日6.4gを4週間以上継続して摂取する必要がある。不快な副作用を避けるために、できれば3~4時間の間隔を空けて4回に分けて1.6gずつ摂取する。

重炭酸ナトリウムについては、運動を開始する1~3時間前に0.3g/kgを摂取する。潜在的な副作用リスクを最小限に抑えるために、可能であればカプセルの形態で炭水化物が豊富な食事とともに摂取する。

文献情報

原題のタイトルは、「Sodium bicarbonate and beta-alanine supplementation: Is combining both better than either alone? A systematic review and meta-analysis」。〔Biol Sport. 2024 Jul;41(3):79-87〕
原文はこちら(Termedia)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ