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歩行習慣がない人は健康アプリで減量しやすい? 肥満の成人68人を対象に検証 筑波大学

2024年08月18日

スマートフォンの健康アプリを利用して減量に取り組む人が増えているが、減量開始時に歩行習慣がない人のほうが、健康アプリを用いて減量に成功しやすいことがわかった。筑波大学の研究グループの研究結果であり、「Nutrients」に論文が掲載されるとともに、同大学のサイトにプレスリリースが発表された。

歩行習慣がない人は健康アプリで減量しやすい? 肥満の成人68人を対象に検証 筑波大学

研究の概要:健康アプリが役立つ集団の特徴を見つける

肥満は、2型糖尿病や心血管疾患など、非感染性疾患の主要なリスク要因であり、世界的な公衆衛生課題の一つ。肥満を解消するためのさまざまな対策が検討されるなか、近年、ウェブベースで提供される生活習慣改善指導による減量介入に注目が集まっている。なかでもスマートフォンの健康アプリを利用した食事や運動の介入は、減量に効果的な方法として人気がある。しかし、実際の減量効果には個人差がある。そこで、この研究では、健康アプリを利用して減量に成功する人の特徴を探索的に分析した。

本研究では、過去に同研究グループが実施した、健康アプリの有効性を検証したランダム化比較試験において、アプリを利用した介入群に割り付けられた過体重または肥満成人68人を対象に、この試験で得られたデータの二次分析を行った。初期体重の3%を減量できた人を減量成功者と定義し、減量開始時の特徴とアプリ利用状況との関連を分析した結果、減量開始時に歩行習慣がない人ほど、健康アプリを用いた減量に成功しやすいことがわかった。これは、もともと歩行習慣がない人ほど、アプリから配信される歩くことを促す通知に反応し、運動量が増えたためであると考えられる。

また、歩行速度が遅いことや、家族に既往歴があることも、減量成功に関連する可能性が示唆された。本研究結果は、今後の健康アプリの開発や改良に役立つと考えられる。

研究の背景:減量効果の個人差と健康アプリ利用との関連は?

近年、ウェブベースで提供される生活習慣改善指導による減量介入(ウェブベース介入)に注目が集まっていて、スマートフォンの健康アプリを利用した食事や運動の介入は、減量に効果的な方法として人気があり、公衆衛生的にも大きな意義がある。しかしながら、同研究グループが過去に実施した健康アプリの有効性を検証したランダム化比較試験では、その有効性が認められた一方で、実際の減量効果には個人差があることも示されていた。そこで本研究では、このデータを用いて、健康アプリを利用して減量に成功する人の特徴を探索的に分析することを目的とした。

研究内容と成果:歩行習慣の有無のみが有意な決定因子

本研究では、先行研究のランダム化比較試験において、指定の健康アプリを利用した介入群に割り付けられた過体重または肥満成人68人(平均年齢42.3歳、男性73.5%)を対象とし、この先行研究で得られた体重変化や身体活動量などのデータを利用した。参加者には、体重を測定するための体重計を提供し、身体活動量をモニタリングするための加速度計を貸与した。また、自記式質問票ソフトウェアを用いて、参加者の基本的特徴(年齢、性別、身長、体重、運動習慣、歩行習慣、歩行速度、既往歴、服薬状況、家族歴、喫煙状況、職業、学歴、世帯収入、居住形態)が収集された。

参加者は、スマートフォンのアプリ内に毎日の食事(朝食、昼食、夕食、間食)、運動、体重、気分、睡眠を記録しており、これらの入力回数を介入への遵守性の指標とみなした。介入期間中、研究グループはデータの入力回数をモニタリングし、食事の入力が週4日に満たない場合は参加者にメールを送り、継続的な記録を促した。ただし、このようなリマインドによる介入効果を避けるために、本研究の分析では、リマインドを行わなかった最初の1週間の入力回数を遵守性のデータとして利用した。

その結果、初期体重の3%減量を達成した人を減量成功者と定義すると、3カ月の介入により、対象者68名のうち25名が減量に成功していた。減量開始時の特徴とアプリ利用状況との関連を分析したところ、単変量解析※1では、歩行習慣の有無と歩行速度は減量成功と負の関連を示した一方、家族歴(脳卒中、心臓病、高血圧、脂質異常症、糖尿病)があることは減量成功と正の関連を示した。

※1 単変量解析:一つの要因(説明変数)から「2値の結果(目的変数)」が起こる確率を説明・予測する統計手法。

これらの変数を用いて多変量解析※2を実施したところ、歩行習慣の有無のみが統計学的に有意な決定因子となり、減量開始時に歩行習慣がない人ほど減量に成功することがわかった(表)。このことから、もともと歩行習慣がない人ほど、アプリから配信される歩くことを促す通知に反応し、運動量が増えて減量につながった可能性が考えられる。

さらに、統計学的有意水準には達しなかったものの、歩行速度が遅いことと、家族に既往歴がある(家族歴がある)ことも、減量成功に関連する可能性が示唆された。

※2 多変量解析:複数の要因(説明変数)から「2値の結果(目的変数)」が起こる確率を説明・予測する統計手法。

表1 3%以上の減量成功に対する多変量解析の結果
変数オッズ比(95%信頼区間)p値
歩行習慣0.248 (0.079, 0.786)0.018
歩行速度0.324 (0.105, 1.004)0.051
家族歴4.269 (0.972, 18.746)0.055
調整変数:性別、年齢、減量体験、体重変動、運動習慣、既往歴、教育歴、年収、同居状況、婚姻状況、最初の1週間の各項目のアプリ入力回数
(出典:筑波大学)

今後の展開:より有用性の高いパーソナライズ機能のあるアプリ開発に期待

本研究結果より、減量開始時に歩行習慣がないことが減量成功に関連する有意な予測因子として同定され、歩行速度が遅いことと家族歴があることも減量成功に関連する可能性が示唆された。

健康アプリを使って減量に成功する人の特徴が明らかになったことは、今後の健康アプリの開発や改良、とりわけ健康アプリのパーソナライズ機能の向上に役立つと考えられる。研究グループでは、そのような機能を追加した際の有効性についてさらなる研究を進める予定としている。

プレスリリース

もともと歩行習慣がない人ほど健康アプリを用いた減量に成功しやすい(筑波大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Exploring Determinants of Successful Weight Loss with the Use of a Smartphone Healthcare Application: Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial」。〔Nutrients. 2024 Jul 2;16(13):2108〕
原文はこちら(MDPI)

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