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スポーツにおける相対的エネルギー不足(REDs)はどのように診断されているのか? 文献レビュー

スポーツによる相対的エネルギー不足(REDs)の診断に、どのようなバイオマーカーが用いられているのかという実態を、文献レビューによる検討した結果が報告された。体重やBMI、体脂肪量、骨密度、トリヨードサイロニン(T3)などが最も多く使われている一方、REDsという病態の基盤である、利用可能エネルギー不足(LEA)の評価・検出を行っていたのは4割に満たないという。

スポーツにおける相対的エネルギー不足(REDs)はどのように診断されているのか? 文献レビュー

スポーツによる相対的エネルギー不足(REDs)をどうやって見つけるか?

エネルギーの出納がマイナスの状態を「利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)」といい、スポーツによってLEAが生じている状態は「スポーツにおける相対的エネルギー不足(relative energy deficiency in sport;REDs)」と呼ばれる。REDではパフォーマンスの伸び悩みにとどまらず、健康への悪影響が生じ、その一部はスポーツから引退後も生涯にわたって影響が残ることがある。例えば骨粗鬆症や女性アスリートでの妊孕性喪失だ。

2014年に国際オリンピック委員会(International Olympic Committee;IOC)がREDsの定義づけを行い、2023年に一部改訂された。また2023年にはREDsのスクリーニングから診断までの流れを示した臨床評価ツール(IOC REDs Clinical Assessment Tool-Version 2;IOC REDs CAT2)が公表されている(DOI: 10.1136/bjsports-2023-106914)。「IOC REDs CAT2」の策定はこの領域の重要な進歩ではあるが、評価マーカーが多岐にわたっていて、実際のスポーツの現場でどのように用いるべきかはまだ手探り状態と言える。

関連情報
特集「REDsを知る、見つける、治す、予防する」

今回紹介する論文は、チェコ共和国の研究者によるもので、REDsの診断にどのようなマーカーが使われる傾向があるのかを、文献レビューによって検討したもの。

「IOC REDs CAT2」に取り上げられているマーカーの利用状況を検討

文献検索はPRISMAガイドラインに則して2023年4月に、Medline/PubMed、Web of Science、SPORTDiscus/EBSCOhostを用いて行われた。検索用語としては、アスリートや相対的エネルギー不足に関連する語句を設定した。レビュー論文、レター、英語以外の論文は除外した。また、「IOC REDs CAT2」に取り上げられているマーカーの利用状況を検討するという意図から、各論文執筆者の主観的な判断によると思われるマーカーについては、レビューの過程で除外した。

検索でヒットした595報を重複削除後の488報にいついて、2名の研究者が独立してスクリーニングを実施し、25報を全文精査の対象として、最終的に13件の研究報告を適格と判断した。なお、除外された論文は3人目の研究者が確認した。また採否の意見の不一致は3人目の研究者の判断により解決した。

13件の研究で79種類のマーカーが使用されている

抽出された13件の研究のうち7件は女性アスリートを対象としていた。競技別では持久系競技のアスリートが最も多く研究対象とされていた。研究デザインは12件は観察研究で、1件は介入を行っていた。

すべての研究で、複数のマーカーを組み合わせてREDsを判定

13件の研究のすべてが、単一のマーカーのみでREDsを判定することはなく、複数のマーカーを組み合わせて判定していた。全体で合計79種類のマーカーがREDsの検出に利用されており、大別すると、骨密度、安静時代謝量(resting metabolic rate;RMR)、血液検体、体重や体組成、栄養素摂取状況、およびパフォーマンスパラメータという6種類となった。

より詳細にみると、13件中10件(76.9%)の研究で用いられていたマーカーとして、体重、BMI、体脂肪量、骨密度、および甲状腺ホルモンの一種であるトリヨードサイロニン(tri-iodothyronine;T3)が該当した。続いて9件(69.2%)の研究で安静時代謝量(RMR)が用いられていた。

エネルギー可用性(EA)が評価されていた研究は半数足らず

続いて8件の研究(61.5%)で用いられていたマーカーとして総テストステロンが該当し、また摂取エネルギー量も8件の研究で計測されていた。

エネルギーを生成する栄養素である炭水化物やタンパク質、脂質の摂取量はそれぞれ7件の研究(53.9%)で用いられていた。また、REDsという病態の基盤にある「利用可能エネルギー不足(LEA)」の検出に必須である「エネルギー可用性(energy availability;EA)」をマーカーとして使用していた研究は6件(46.2%)だった。

なお、LEAの有病率が4件の研究で報告されており、22~67%の範囲であって、平均は39.5%だった。

REDsのマーカーの絞り込みには、しばらく時間がかかる可能性

著者らは本論文を、「REDsの診断に使用されているマーカーの種類と頻度をまとめた初のレビュー」と位置づけ、「マーカーの多様性と一貫性のない方法論は、結果の解釈を複雑にするため、REDsの診断方法の統一に焦点を当てることが将来の研究にとって不可欠」と述べている。ただし、「新しいツールを研究や臨床に採り入れるには、しばらく時間がかかる可能性があり、現状において一貫性が欠如していることを指摘することも重要である」としている。

なお、REDsの直接的な原因であるLEAの検出のためにはエネルギー出納の把握が必要だが、その評価結果は計測方法などによって大きな誤差が生じ得るため、他のマーカーとの組み合わせで判断すべきと付言されている。

文献情報

原題のタイトルは、「A literature review of biomarkers used for diagnosis of relative energy deficiency in sport」。〔Front Sports Act Living. 2024 Jul 12:6:1375740〕
原文はこちら(Frontiers Media)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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