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野菜摂取量を表す皮膚カロテノイドレベルが高いほどメタボ有病率が低い 久山町研究

皮膚のカロテノイドレベルが高いほど、メタボリックシンドローム(MetS)の有病率が低いという負の関連のあることが、久山町研究から報告された。九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の二宮利治氏らの研究の結果であり、「International Journal of Obesity」に論文が掲載された。BMIで調整後にもメタボ構成因子との関連が有意であることから、皮膚のカロテノイドは健康的な食行動のマーカーという側面を有する可能性があるという。

野菜摂取量を表す皮膚カロテノイドレベルが高いほどメタボ有病率が低い 久山町研究

野菜摂取量の定量的指標「カロテノイドスコア」はメタボリスクと関連があるのか?

野菜摂取量が多いことがメタボリックシンドローム(MetS)の予防につながる可能性が、観察研究から示されている。ただし、野菜摂取量を把握するには詳細な食事調査が必要であり、また野菜摂取量のマーカーである血中カロテノイドの測定には採血が必要で、これらいずれの方法も、MetS予防という公衆衛生対策として行うことは、時間やコスト等の点で現実性が乏しい。

一方、最近、反射分光法を用いて体内のカロテノイド濃度を皮膚レベルで測定する技術が確立され、野菜摂取量の指標として試用され始めている。この手法は低コストで非侵襲であり、前記の課題を回避可能。しかしこの手法で測定した皮膚カロテノイドレベルとMetSとの関連に関するエビデンスはまだ少ない。

久山町研究参加者のデータを横断的に解析

久山町研究は、福岡県糟屋郡久山町の地域住民を対象として1961年より開始された心血管病、生活習慣病の疫学研究である。これまでに数々の重要な疫学データを報告してきている。久山町研究では毎年住民の健康調査が行われている。2019年には40歳以上の2,627人が検査を受け、このうち1,743人(66.6%)が皮膚カロテノイドの測定に参加した。さらに、測定エラーや他のデータが欠落している人を除外した1,618人(平均年齢63.1歳、男性37.3%)を解析対象として、皮膚カロテノイドレベルとMetSとの関連を検討した。

皮膚カロテノイドは、実測値をアルゴリズムに基づき0.1~12.0の範囲にスコア化し、「カロテノイドスコア」として評価した。本研究参加者のカロテノイドスコアは、ほほ正規分布であり、男性は平均値5.3±1.3(中央値は5.1で範囲1.4~11.2)、女性は平均値6.2±1.3(中央値6.1、範囲1.4~10.7)だった。

MetSは、国際6学会の共同声明(ウエスト周囲長のカットオフ値は男性90cm、女性80cm)に基づき判定。その結果、MetS有病率は31.3%だった。なお、後述のように、感度分析として国内基準および国際糖尿病連合のアジア基準に基づきMetSを判定した解析も行われている。

カロテノイドスコアが高いほどMetS有病率は低い

男性/女性別のカロテノイドスコアの四分位数で4群に分けて比較すると、野菜摂取量が多いことを表すスコアの高い群ほど高齢でBMIやウエスト周囲長が低値で、現喫煙者率や習慣的飲酒者率が低く、運動習慣のある割合は高かった。

カロテノイドスコアの第1四分位群を基準として、交絡因子(年齢、性別、LDL-C、脂質改善薬、喫煙・飲酒・運動習慣)を調整のうえ、他の群のMetSの有病率を比較すると、第2四分位群はOR0.91(95%CI;0.66~1.24)で非有意だったが、第3四分位群はOR0.64(0.47~0.89)、第4四分位群はOR0.39(0.28~0.55)と有意なオッズ比低下が観察され、カロテノイドスコアが高いほどMetS有病率が低いという有意な関連が認められた(傾向性p<0.001)。

年齢や性別、喫煙・飲酒・運動習慣にかかわらず一貫した結果

次に、年齢(65歳未満/以上)、性別、喫煙・飲酒・運動習慣の有無などで層別化したサブグループ解析を実施。その結果いずれにおいても有意な異質性は認められず(前記についてはすべて異質性p>0.39)、カロテノイドスコアが高いほどMetS有病率が低いという関連性は一貫していた。

スプラインモデルを用いた解析からは、カロテノイドスコアが5を超えたあたりからMetS有病率が低下して、スコア6付近で基準値(3.8)と比較した場合の95%信頼区間の上限が1を下回ることが示された。

調整因子にBMIを追加してもMetS構成因子との関連は引き続き有意

続いて、MetS構成因子との関連を検討。前記同様の交絡因子で調整後の解析で、血圧高値(傾向性p<0.001)、空腹時血糖高値(p<0.001)、HDL-C低値(p=0.048)、中性脂肪高値(p=0.004)のいずれも、カロテノイドスコアが高いほどMetS有病率が低いという有意な関連が認められた。

さらに、交絡因子にBMIを追加してもなお、血圧高値(傾向性p<0.001)、空腹時血糖高値(p=0.04)は有意な関連が保たれていた。HDL-C低値(p=0.69)、中性脂肪高値(p=0.21)は有意性が消失した。

なお、感度分析として行った、MetSの判定に国内基準および国際糖尿病連合のアジア基準を用いた場合のMetS有病率はそれぞれ16.4%、28.4%であり、解析結果は主解析結果と同様に、カロテノイドスコアの第3~4四分位群で有意なオッズ比低下が観察され、全体の傾向性が有意だった(いずれも傾向性p<0.001)。

カロテノイドスコアには、野菜摂取量を含む良好な食習慣が反映されている可能性

著者らは、本研究が横断研究であり因果関係は不明であること、カロテノイド測定がオプション項目だったため、他の一般的な健診項目のように久山町住民のほぼ全員が受けたわけでなく、サンプルバイアスが存在する可能性などを限界点として挙げたうえで、「我々の研究結果は、国内一般住民において、非侵襲的に測定されたカロテノイドスコアが高いほどMetSのリスクが低いことを示唆している」と結論づけている。

この関連性のメカニズムについては、「カロテノイドは強力な抗酸化物質であり、酸化ストレスを抑制しインスリン抵抗性を改善するという経路で、MetSリスクを下げるのではないか」と述べられている。さらに、野菜摂取量が多く皮膚カロテノイドレベルが高い人は、規則正しい食習慣、例えば食事の多様性や適切な摂取間隔・摂取速度などを有している傾向があるため、このような食習慣が肥満の予防やMetSリスクの低下に寄与しているのかもしれない」との考察も付け加えられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Skin carotenoid scores and metabolic syndrome in a general Japanese population: the Hisayama study」。〔Int J Obes (Lond). 2024 Jul 9〕
原文はこちら(Springer Nature)

関連情報

皮膚カロテノイド値が心血管イベントリスクと逆相関 日本人健診データの解析結果

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