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高齢になるほど身体活動不足による心血管疾患リスクが高くなる 日本人110万人の追跡研究

高齢になるほど、身体活動不足に伴う心血管疾患リスクへの関与が強まることを示唆する、日本人対象研究のデータが報告された。東京大学医学部附属病院循環器内科の金子英弘氏、上野兼輔氏らが、100万人以上の医療データを追跡して明らかにしたもので、「Canadian Journal of Cardiology」に論文が掲載された。

高齢になるほど身体活動不足による心血管疾患リスクが高くなる 日本人110万人の追跡研究

18~105歳の日本人、約110万人を平均3年以上追跡した解析

身体活動不足が健康リスクであることは広く知られている。とくに心血管疾患(cardiovascular disease;CVD)リスクとの関連に関するエビデンスが多く蓄積されてきている。それらのエビデンスの中には、身体活動不足の影響が年齢によって異なり、高齢者は若年者よりも、両者の関連がより強いことを示唆するものもある。

とは言え、そのような視点で行われた過去の研究は、単に高齢者と非高齢者(65歳以上/未満)で比較していたり、限られた年齢範囲の対象者での検討であって、身体活動不足がCVDリスクに及ぼす影響が年齢によってどの程度異なるのかという詳細は明らかでない。これを背景として金子氏と上野氏らは、DeSCヘルスケア社の大規模データベースを用いた検討を行った。

DeSCヘルスケア社のデータベースは、複数の企業の社会保険データ、国民健康保険データ、後期高齢者医療保険データが統合されたものある。著者らは、CVDや腎代替療法の既往者および、解析に必要なデータの欠落者を除外し、109万7,424人(年齢中央値63歳、男性46.4%)を解析対象とした。解析対象には18〜105歳までが含まれていた。

身体活動不足の判定と評価項目

身体活動は、健診の問診に使われていたり「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 『Exercise and Physical Activity Reference for Health Promotion』」で推奨されている、「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上行っているか」、「歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上行っているか」、「ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が速いか」という3項目で評価。前二者は「いいえ」の場合に身体活動不足と判定し、最後の項目は「いいえ」の場合に歩行速度が遅いと判定した。

CVDリスクについては、主要評価項目として、心筋梗塞、脳卒中、心不全の複合エンドポイントを設定。副次的に、それぞれの発生リスクを評価した。

年齢層は、44歳以下(18.6%)、45~64歳(36.8%)、65~79歳(39.8%)、80歳以上(4.8%)の四つに分類した。

三つの指標のすべて、高齢層ほど身体活動不足の悪影響を示唆する結果に

平均3.2±1.9年の追跡で8万1,649件の複合イベントが観察された。交絡因子(年齢、性別、BMI、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙・飲酒習慣など)を調整後、身体活動不足を表す前記の三つの指標のいずれについても、高齢になるほど該当/非該当でCVDリスクの差が広がるという、有意な関連が認められた。

詳細は以下の通り。いずれも身体活動を行っている群に対するハザード比。
1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上行っているか否かでの違い:

45~64歳ではHR1.08(95%CI;1.05~1.12)、65~79歳はHR1.12(1.10~1.15)、80歳以上はHR1.17(1.12~1.21)。44歳以下はHR0.97(0.88~1.05)で非有意。交互作用p<0.001。
歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上行っているか否かでの違い:

44歳以下ではHR1.11(1.03~1.19)、45~64歳はHR1.06(1.03~1.09)、65~79歳はHR1.12(1.10~1.14)、80歳以上はHR1.18(1.14~1.22)。交互作用p<0.001。
ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が速いか否かでの違い:

45~64歳ではHR1.13(1.10~1.16)、65~79歳はHR1.19(1.17~1.22)、80歳以上はHR1.27(1.22~1.31)。44歳以下はHR1.06(0.98~1.13)で非有意。交互作用p<0.001。

副次評価項目や感度分析も、ほぼ同様の結果

副次評価項目である心筋梗塞は4,415件、脳卒中は2万9,784件、心不全は5万7,011件記録されていた。前記同様の交絡因子を調整した解析の結果、すべて高齢になるほど身体活動習慣がないことによりリスクが大きくなるという関連が認められた。

このほか感度分析として行われた、追跡期間が1年以上のみの対象者での解析、年齢区分を変更した解析などからも、ほぼ同様の結果が示された。

高齢者ほど、身体活動の最適化が重要

著者らは本研究を、「高血圧や糖尿病などの既知のCVDリスク因子の有無にかかわらず、身体活動不足とCVDリスクとの間に年齢依存性の関連があることを示した初の研究」と位置づけている。高齢者ほど身体活動不足の影響が強まることのメカニズムとしては、論文中に考察として、身体活動不足に伴うフレイルや、心保護作用が報告されている骨格筋の減少などが関与している可能性が述べられている。

結論は、「身体活動不足とCVDリスクの高さとの関連性は、高齢者で顕著だった。この年齢依存性の関連は、心筋梗塞、心不全、脳卒中など、CVDのサブタイプ全体で一貫していた。身体活動は生涯を通じて重要と考えられているが、そのメリットは年齢を重ねるほど増加する可能性がある。高齢者のCVD予防のために、身体活動の最適化が重要と考えられる」と総括されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Age-Dependent Relationship of Physical Inactivity with Incident Cardiovascular Disease: Analysis of a Large Japanese Cohort」。〔Can J Cardiol. 2024 Jun 19:S0828-282X(24)00501-4〕
原文はこちら(Elsevier)

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