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栄養知識が豊富なアスリートのほうが利用可能エネルギー不足リスクが高いという意外な関係 NCAA選手での調査

NCAA所属選手を対象に、栄養に関する知識と利用可能エネルギー不足(LEA)のリスクとの関連を検討した調査の結果、意外なことに、女子選手においては知識が豊富なほうがLEAリスクが高いという関連が示されたとする研究報告が発表された。

栄養知識が豊富なアスリートのほうが利用可能エネルギー不足リスクが高いという意外な関係 NCAA選手での調査

NCAA所属選手の栄養知識とLEAリスクとの関連についてのパイロット研究

アスリートは性別を問わず利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)のリスクに曝されやすく、LEAは回復の遅延、怪我や疾患のリスク上昇につながり、スポーツパフォーマンスの低下にもつながる。このことは広く知られるようになってきており、米大学体育協会(National Collegiate Athletic Association;NCAA)もLEAリスク抑制のための栄養教育を充実させている。

しかし、今回紹介する論文の著者によると、NCAAアスリートの栄養に関する知識が豊富であることが、LEAリスクの低下に結びついているのか否かという点は、これまで十分検討されていないという。そこで著者らは、パイロット研究としてその関連の有無の調査を行った。

女性はLEAF-Q、男性はMATスクリーニングツールでLEAリスクを判定

この調査はNCAAディビジョンIに所属し、年齢が18歳以上の学生アスリートを対象に、義務付けられている年に1回の健診を受けた際、または電子メールを通じて回答を呼びかけ実施された。284人が回答を寄せ、そのうち188人(完了率66.2%)の解答は解析に十分な記載がなされていた。性別は女性が64.4%を占め、学年は1年が30.3%、4年が23.4%、3年が22.3%、2年が14.9%で、その他(大学院生など)が9.1%であり、行っている競技は18種類に分布していた。

栄養の知識の評価方法について

栄養に関する知識の評価には、35項目からなるアンケート(Abridged Nutrition for Sport Knowledge Questionnaire;A-NSKQ)を用いた。A-NSKQは35点満点で、スコアが高いほど栄養知識のレベルが高いことを表す。既報研究における平均正答率は47±12%と報告されていることから、47%以上の場合に平均以上の知識があると判断される。

LEAリスクの評価方法について

女性アスリートのLEAリスクの評価には、精度検証済みのツールであるLEAF-Q(Low Energy Availability in Females Questionnaire)を用いた。LEAF-Qは、月経周期、消化器症状、怪我の既往、避妊などについて質問するもので、スコアが8点以上の場合はLEA高リスクとして判定した。

一方、男性アスリートのLEAあるいはトライアド(male athlete triad;MAT)リスクの評価ツールとして、確立されたものは存在しない。そこで既報研究を基に、10項目の質問によりMATリスクを評価する質問票を援用し、LEAリスクの評価を試みた。著者によると、このような試みは本研究が初めてだという。

女子学生アスリートでは、栄養知識の高さがLEAリスクと関連

栄養の知識を表すA-NSKQのスコアは平均15.3±4.2点で、正答率としては43.7±12%であり、性別では女性が44.6±12%、男性42.3±12%で有意差はなかった(p=0.24)。

一方、LEAリスクを表す女性のLEAF-Qスコアは、55%の選手が8以上であり、過半数がLEAのリスクがあることが示された。女性アスリートのA-NSKQスコアを、LEAリスクの有無(LEAF-Qスコア8点以上/未満)で比較すると、LEAリスクのない群では14.5点であるのに対して、LEAリスクのある群では16.6点であり、群間の有意差が認められた(p=0.007)。つまり、栄養に関する知識が豊富な女性アスリートのほうが、むしろLEAリスクが高い可能性が示唆された。

男性アスリートのMATスコアは平均1.48±1.08であり、MATスコアとA-NSKQスコアとの間には、わずかな相関が認められた(R2=0.012)。

論文ではこのほかに、栄養の知識を問うA-NSKQを完了する前の段階では、参加者の36.2%が、自分の栄養の知識を「良好」または「優れている」と評価していたが、A-NSKQを完了した後にはその割合が12.8%に低下していたことが述べられている。また、以前に栄養教育を受けたことを報告したアスリートは、そうでないアスリートに比べてA-NSKQのスコアが有意に高かったという(16 vs 14.6点、p=0.02)。

全般的に栄養に関する知識が不十分なことも明らかに

以上の結果を総括して著者らは以下のような考察を述べている。

栄養知識の不十分さ

A-NSKQを用いた選考研究の結果(正答率47%)と同様に、今回の正答率も43.7%と、学生アスリートの栄養に関する知識が低いことがわかった。何らかのかたちで以前に栄養教育を受けたと報告したアスリートは、A-NSKQスコアが高く、知識が多かった。この点も、栄養教育が評価スコア向上に有効とする既報研究の結果と一致する。また本研究では、調査前段階では3分の1以上が自分自身の栄養知識を高く評価していたが、調査後には13%に低下した。このことは、栄養知識を問う調査を実施することが、学生アスリート自身の能力の認識に影響を与えることを意味している。

男性アスリートのLEAリスクの評価法が確立されていない

男性の栄養知識とLEAリスクとの関係については、有意義な結論を導くことができなかった。男性のLEAのスクリーニングツールの開発が期待される。

女性アスリートのLEAリスクの高さ

女性アスリートの55%がLEAF-Qスコア8点以上でLEAリスクありと判定された。これも先行研究と同様であるが、本研究では栄養知識が高い女性アスリートでLEAリスクが高い傾向が認められた。この関連のメカニズムを本研究のみから明らかにすることはできないが、意図的に食事摂取量を制限しようとする女性アスリートは、体重や体格を最も効果的に変える方法を学ぶことに時間を費やしているという実態をみているのかもしれない。

文献情報

原題のタイトルは、「The relationship between nutrition knowledge and low energy availability risk in collegiate athletes」。〔J Sci Med Sport. 2024 Apr 11:S1440-2440(24)00107-5〕
原文はこちら(Elsevier)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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