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ボディビルダーが使うサプリメント、優勝経験の有無で差はあるか? 18カ国の選手で調査

薬物を使用しないボディビルであるナチュラル・ボディビルの選手のサプリメント摂取習慣を、過去の大会での優勝経験の有無で比較した研究結果が報告された。年齢や競技歴、大会参加回数などには有意差が認められたものの、サプリメント摂取習慣には有意差がなかったという。また、選手の大半は栄養士などの指導を受けずにサプリメントを利用している実態も浮かび上がった。

ボディビルダーが使うサプリメント、優勝経験の有無で差はあるか? 18カ国の選手で調査

ナチュラル・ボディビル選手のサプリメント摂取状況に焦点を当てた研究

ボディビルではステロイドなどの薬物が使用されることが少なくないが、薬物を一切使用しないことを条件とするナチュラル・ボディビルの人気も高まっている。ナチュラル・ボディビルの選手は、世界アンチ・ドーピング機構(World Anti-Doping Agency;WADA)の基準に準拠したドーピング検査対象となり、違反と判定された場合は厳格な制裁が科せられる。一方で、他のアスリートと同様に、カフェインやクレアチン、アミノ酸、ビタミンなどのサプリメントは広く利用されている。

ボディビルダーのサプリメント利用状況はこれまでにも調査されてきているが、それらの多くは特定の地域で実施されたものであり、国際的な研究はなされていない。また、食事調査の一部として実施されたものが多く、サプリの利用に特化した研究は限られている。

今回紹介する研究では、インターネットを用いて多国籍のナチュラル・ボディビル選手を対象として、サプリ使用に的を絞った横断的調査が実施された。

優勝経験のある選手とない選手でサプリ利用状況を比較

ソーシャルメディアを通じて、56人のナチュラル・ボディビル選手が調査に回答した。調査回答の適格条件として、ドーピング検査の対象となるナチュラル・ボディビル団体に所属していること、公式大会に参加しトップ10以内の成績を残していることなどが設定され、除外基準としては禁止物質の使用歴があることが設定されていた。

56人中女性は5人で、女性はすべてビキニクラスの選手であり、男性は26人がフィジーク、25人がボディビルで競技に参加していた。国籍はスペインが31人と最多であり、その他をあわせて計18カ国の選手が参加した。

過去の大会の成績によって、優勝経験のある選手19人と優勝経験のない選手37人に二分したうえで、年齢や経験、サプリ摂取習慣に関する質問への回答を比較するという解析が行われている。

優勝経験のある選手のほうが高齢で競技歴が長い

年齢は、優勝経験のある選手が中央値31歳、優勝経験のない選手が同27歳で、前者のほうが有意に高齢だった(p=0.024)。トレーニング歴は同順に9年、6年で群間差はわずかに有意水準未満だったが(p=0.055)、大会参加歴は3年、2年で前者のほうが有意に長く(p=0.027)、また前年の大会参加回数は3回、2回でやはり前者のほうが多かった(p=0.011)。

1年間でのダイエット期間は同順に24週、20週で有意差はなく、体重はダイエット開始時点が85kg、86kg、大会参加時点が72kg、72kgでいずれも有意差がなかった。

使用率に有意差のあるサプリはない

調査では約30種類のサプリの使用率が質問され、優勝経験の有無別に集計された。その結果、使用率に有意差のあるサプリは存在しないことが明らかになった。

使用率の高いサプリとして、クレアチン(優勝経験ありが94.7%、なしが91.9%)、ホエイプロテイン(94.7、89.2%)、マルチビタミン(73.7、59.5%)などが挙げられた。

上述のようにすべてのサプリの使用率に有意差はないものの、比較的群間差が大きいサプリとして、メラトニンの使用率は57.9%と37.8%であり、優勝経験のある選手のほうがやや高かった(p=0.153)。メラトニンは睡眠に関与し、回復を促進する可能性があるとされている。

反対にシネフリン(P-Synephrine)は15.8%と37.8%であり、優勝経験のない選手のほうがやや高かった(p=0.089)。なお、シネフリンはWADAの2024年のモニタリング対象として記載されており、スポーツにおける濫用のパターンを把握するために監視が望まれる物質という位置づけ(オキシロフリン〈メチルシネフリン〉は禁止物質)。

次に、コーヒー、茶、エナジードリンク、アルコールなどの飲料の摂取頻度を比較した結果をみると、上記同様に優勝経験の有無で有意差のある飲料はなかった。

サプリ入手経路はネットが7~8割で、医療職者の関与は数パーセント

続いてサプリの入手経路や情報源等が比較されている。これらについても、優勝経験の有無で有意差は認められなかった。ただし、全体的に医師や栄養士がほとんど関与せずに使用されている実態が明らかになった。

例えば入手経路については、インターネットとの回答が優勝経験のある選手で78.9%、優勝経験のない選手で70.9%におよび、医師または栄養士の施設との回答は同順に5.3、2.7%にすぎなかった。その他の回答はサプリメントストアやジムなどが占めていた。

また、サプリの使用を決定したのは誰かという質問の回答は、自分自身が前記と同順に57.9、52.2%、トレーナーが42.1、35.1%であり、医師または医療従事者は10.5、2.7%だった。サプリの情報源は、トレーナーが47.4、51.4%、ソーシャルメディアが31.6、16.2%、医師または医療従事者は5.3、8.1%だった。なお、査読済み論文(36.8、43.2%)、研究報告のレビュー(36.8、48.6%)も比較的多く選択されていた。

ナチュラル・ボディビルダーの優勝に重要なのは経験?

以上を基に論文の結論は次のようにまとめられている。

「本研究の結果は、ナチュラル・ボディビル競技の成功に関連する、特定のサプリメントプロトコルというものは存在しないことを示唆している。摂取するサプリの種類よりもむしろ、年齢(および、おそらくはトレーニング経験)、競技経験、大会参加歴において差が認められた。また、選手のサプリ摂取はさまざまな情報源の影響を受けているが、医療提供者の影響はほとんど受けていない。全体として、ナチュラル・ボディビルダーのサプリ使用習慣は、競技で成功を収めるうえで、経験ほどには重要でないようだ」。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary supplementation habits in international natural bodybuilders during pre-competition」。〔Heliyon. 2024 Feb 20;10(5):e26730〕
原文はこちら(Elsevier)
https://www.cell.com/heliyon/fulltext/S2405-8440(24)02761-0

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