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女性アスリートは睡眠時間が短いと状態不安を引き起こし月経不順が増える可能性

睡眠時間が短い女性アスリートは状態不安や特性不安のレベルが高く、さらにこの状態不安のレベルの高さが月経不順と関連があるとする研究結果が報告された。新潟医療福祉大学健康栄養学科の宮本真菜氏らが行った横断研究によるもので、「PeerJ」に論文が掲載された。

女性アスリートは睡眠時間が短いと状態不安を引き起こし月経不順が増える可能性

睡眠不足と心的不安増加は月経不順に関連あり?

睡眠はヒトの健康維持に重要な役割を担っていると考えられるが、身体的・精神的ストレスの大きいアスリートでは睡眠による回復がより重要であり、睡眠がスポーツパフォーマンスに影響を及ぼすことも明らかになってきている。

これまでに、睡眠時間が短いことや、不眠症などの睡眠障害が月経周期の変化や月経障害発症に関連があるということが報告されている。

さらに月経不順を引き起こす要因として、うつ病や心的不安レベルの増加など精神的な問題が関与している可能性も示唆されている。また、ある研究では、睡眠不足、メンタルヘルス問題、月経不順有病率は関連があることが報告されている。短い睡眠時間と高レベルの心理的ストレス、抑うつ状態の組み合わせは月経不順と無月経の増加と関連していることがわかっている。しかし、これらは一般人を対象とした研究であり、アスリートを対象とした研究は限られている。

よって、本研究では、女性アスリートを対象に、エネルギー摂取量、心的不安レベル、睡眠時間が月経機能に与える影響を検討することを目的とした。さらに、睡眠不足は月経不順の有病率に直接影響を与えないかもしれないが、心的不安レベルの増大やエネルギー摂取不足の原因となりその結果月経不順のリスクを増加させるという仮説を立てた。

140人の女性アスリートを対象として睡眠、栄養、不安、月経の関連を検討

研究参加者は15~23歳の女性アスリート140人(19.2±1.2歳)。このうち、陸上選手が90人、ローイング競技選手が50人で、全員が国内または国際レベルで活動しており、初経発来後1年以上が経過していて経口避妊薬は使用していなかった。データ欠落のある12人を除外し、解析対象は128人(BMI20.7±1.8、体脂肪率19.0±3.4%)となった。

月経周期や睡眠時間をアンケートによって把握したほか、3日間にわたる食事記録を基に摂取栄養素量を推計した。月経不順は、月経周期が2カ月以上の場合、または不規則な月経や無月経状態が3カ月以上続いている場合と定義した。また睡眠時間については6時間をカットオフ値として全体を二分し、後述の比較検討を行った。

不安レベルについては、STAI(State and Trait Anxiety Inventory)という評価ツールを用いて、状態不安(一過性の不安)と特性不安(不安を抱きやすい傾向)を評価した。STAIのスコアは20~80点で評価し、高値であるほど不安レベルが高いと判定する。40点を臨床上のカットオフ値とすることが多い。

短時間睡眠群はエネルギー摂取量が少なく、不安レベルが高い

短時間睡眠者は23人(18.0%)だった。短時間睡眠群とそうでない群とを比較すると、BMIや体脂肪率には有意差がないものの、摂取エネルギー量(2,160±449.4 vs 2,435±512.8kcal/日、p=0.014)や炭水化物摂取量(270.4±58.5 vs 309.6±80.6g/日、p=0.010)が有意に少なく、ビタミンB1、B2、Cの摂取量も短時間睡眠群が有意に少なかった。タンパク質や脂質などの摂取量には有意差がなかった。

状態不安(46.9±8.6 vs 42.4±9.6点、p=0.014)や特性不安(46.9±9.7 vs 46.4±10.3点、p=0.027)のレベルは、短時間睡眠群の方が高いという有意差が観察された。

状態不安の大きさと月経不順が有意に関連

全体の53人(41.4%)が、本研究における月経不順の定義を満たしていた。

月経不順と関連のある因子を特定するため、赤池情報量に基づき、状態不安、短時間睡眠、摂取エネルギー量という3因子を独立変数としたうえで、一般化線形モデルによる解析を施行。その結果、状態不安のみ有意な関連が認められ(p=0.048)、短時間睡眠や摂取エネルギー量は、月経不順とは直接的な関連がみられなかった。

以上の結果を基に著者らは、「睡眠不足が状態不安のレベルを直接的に増大させ、月経不順の有病率に間接的に影響を与えることを示唆するデータが得られた。睡眠時間の減少は、精神的健康上の問題だけでなく月経不順にも関連している可能性があり、それらのいずれもが女性アスリートにとって大きな懸念事項である。睡眠が女性アスリートの健康にどのような影響を与えるか、さらなる研究が求められる」と結論づけている。

なお、研究の限界点としては、睡眠時間や月経周期を自己申告に基づき評価していること、解析対象のSTAIの平均が40以上であり、全体として不安レベルの高い集団であったことなどを挙げている。

睡眠不足と摂取エネルギー量の関係は、一般人口とアスリートでは異なる

ところで、本研究では前述のように、短時間睡眠群のほうが摂取エネルギー量が有意に少ないという結果が示された。しかし、一般住民を対象とする先行研究の多くが、短時間睡眠者のほうが摂取エネルギー量が大きいことを報告している。この違いについて論文の考察では、「この発見については今後継続して検証する必要がある」としたうえで、「一般集団とアスリートの消費エネルギー量の多寡の違いが関係しているのではないか」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Sleep duration has a limited impact on the prevalence of menstrual irregularities in athletes: a cross-sectional study」。〔PeerJ. 2024 Feb 16:12:e16976〕
原文はこちら(PeerJ)

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