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心不全パンデミックで栄養管理の重要性が高まる 医師による患者の栄養評価・指導に改善の余地

国内の循環器医による、心不全入院患者に対する栄養管理や栄養指導の実態を調査した結果が報告された。心不全の病態との関連が強い塩分や水分の摂取量の指導は比較的行われているものの、QOLや長期予後との関連が示唆されている微量栄養素やタンパク質摂取量については、あまり評価・指導が行われていないことなどが示されている。順天堂大学医学部附属順天堂医院循環器内科の堂垂大志氏、前田大智氏、末永祐哉氏らの研究によるもので、「International Heart Journal」に論文が掲載された。

心不全パンデミックで栄養管理の重要性が高まる 医師による患者の栄養評価・指導に改善の余地

心不全パンデミックで高まる栄養サポートの重要性

人口の高齢化を背景として心不全患者数が世界的に増加しており、「心不全パンデミック」とも言われている。心不全に対する薬物治療は進歩しているが、依然として食事・栄養管理も治療に欠かせない。栄養関連では塩分や水分の摂取制限が古くから行われているほか、近年では鉄やビタミンB1などの微量栄養素の適切な摂取が病態やQOLを改善し得ることや、長期予後への影響が大きいフレイルの予防のためのタンパク質摂取の重要性も明らかになってきた。

しかしこれまでのところ、国内の循環器ドクターが心不全入院患者の栄養評価や栄養指導をどの程度行っているのか、その詳細は明らかにされていない。堂垂氏、前田氏、末永氏らは、webアンケートによる横断調査を行い、実態の把握を試みた。

国内循環器ドクター約150人にwebアンケート

この調査は2022年3~4月に、過去に順天堂大学循環器内科と共同研究を行ったことのある国内32施設(うち22施設は大学病院)に勤務する心臓病専門医154人に対して、メールにて回答協力を依頼し行われた。アンケートの質問は35項目で、心不全患者の栄養評価・教育・介入、サルコペニア・フレイル・心臓悪液質の評価などについて質問した。

147人から有効回答が寄せられ(回答率95.5%)、男性が89.8%、医師歴11.6±5.9年であり、全員が日本循環器学会会員で59.2%は循環器専門医だった。

心不全入院患者の栄養管理・指導

心不全入院患者の栄養管理を日常臨床として行っていると回答したのは78.2%で、栄養状態の評価スタッフは、管理栄養士との回答が86.1%、医師が48.7%、栄養サポートチーム(NST)37.4%、看護師28.7%だった。その評価方法は、89.6%と大半の回答が、アルブミン、総タンパク、プレアルブミンなどの検査値に基づき主観的に判断していた。客観的な栄養評価ツールも使用しているとの回答は38.3%だった。

心不全入院患者に対して栄養指導を行っているとの回答は89.8%であり、その担当は管理栄養士93.9%、医師33.3%、看護師31.8%、NST20.5%、薬剤師3.0%で、タイミングは退院時が83.3%だった。

栄養指導の内容については、塩分制限については97.0%と指導に含めている割合が最も高く、水分制限は63.6%であった。適切な摂取エネルギー量は43.2%、理想的BMIは34.8%、タンパク質摂取量は20.5%と少なく、さらにビタミンや鉄などの微量栄養素の適切な摂取については9.1%に過ぎなかった。

この点について論文の考察には、「塩分・水分摂取制限の心不全治療における有益性のエビデンスは十分とは言えないものの、食欲低下や低栄養と関連する可能性がある。また鉄やビタミンB1が症状や左室駆出率の改善と関連するという報告があり、それらの管理を考慮すべき」と述べられている。

心不全入院患者のフレイル、サルコペニア、心臓悪液質の評価・介入

フレイル、サルコペニア、心臓悪液質は、低栄養に関連して生じることがあり、心不全患者では心機能ではなく、フレイル等が予後を規定することもある。

今回の調査で、心不全患者の入院中にフレイルリスクを評価するとの回答は46.9%であり、フレイルが認められる患者に栄養または運動介入を行っているとの回答は21.7%だった。サルコペニアの評価は31.3%、心臓悪液質の評価は9.5%にとどまった。

栄養管理の目標設定

心不全入院患者に対して栄養管理目標を示すスタッフは、管理栄養士が78.3%、医師が67.4%、NSTが41.3%、看護師が32.6%、薬剤師が8.7%であり、患者に伝えるタイミングは、退院時が56.5%、入院時が39.1%、入院中の最初の栄養教育時が23.9%、心臓リハビリテーション開始時が13.0%だった。

栄養管理の目標設定に参照する情報は、検査データが56.5%、摂取エネルギー量が45.7%、BMIが41.3%だった。

著者らは本研究を、臨床現場での心不全患者に対する栄養管理の実態を医師に対して調査した初の研究と位置づけている。サンプル数が十分ではなく、回答した医師が比較的若手中心であることが結果に影響を与えている可能性などの限界点を挙げたうえで、「心不全入院患者に対する栄養状態やフレイル・サルコペニア・悪液質の評価および栄養教育が、十分行われているとは言えない可能性がある。臨床医は心不全患者の臨床転帰を改善するために、包括的な栄養管理の必要性を認識すべき」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Nutrition Assessment and Education of Patients with Heart Failure by Cardiologists」。〔Int Heart J. 2024 Mar 30;65(2):246-253〕
原文はこちら(J-STAGE)

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