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長時間のスクリーンタイムと小児肥満に関連性 運動や睡眠で肥満リスク低下の可能性も

スマートフォンなどのスクリーンタイム(画面視聴時間)と小児肥満との関係の詳細が明らかにされた。新潟県阿賀野市・三条市と新潟大学が共同研究プロジェクトとして実施してきた、小中学生生活習慣病予防事業のデータを解析した結果であり、「Endocrine Journal」に論文が掲載されるとともに、同大学のサイトにプレスリリースが掲載された。スクリーンタイムの長さと肥満リスクとの関連が、十分な身体活動や睡眠時間によって相殺される可能性も示されている。

長時間のスクリーンタイムと小児肥満に関連性 運動や睡眠で肥満リスク低下の可能性も

研究成果のポイント

  • 小学5年生〜中学2年生(10〜14歳)では、女子のみにおいて、長時間のスクリーンタイム(スマートフォン、スマートフォン以外のどちらについても)と肥満が関連した。
  • スマートフォンとスマートフォン以外のスクリーンタイムは相加的に肥満と関連し、スマートフォン3時間以上かつスマートフォン以外2時間以上の女子では、いずれにも該当しない女子と比較して、肥満リスクが約7倍上昇していた。
  • スクリーンタイム全体が4時間以上5時間未満、またはスマートフォンのスクリーンタイムが2時間以上の女子では、十分な身体活動(23メッツ・時/週≒60分/日以上)または睡眠時間(8.5時間/日以上)があった場合には、肥満には結びついていなかった。

研究の背景:小中学生の生活習慣調査は十分でない

小児肥満は成人肥満へ移行しやすく、2型糖尿病や高血圧などの生活習慣病へとつながることから、小児期の生活習慣は非常に重要。これまでにも、テレビ視聴やパソコン、ビデオゲームの使用は小児肥満と関連することが報告されているが、近年爆発的に普及したスマートフォンに関する研究は多くない。日本国内でも、小中学生に対して生活習慣調査を含む詳細な健康診断は行われておらず、スマートフォンなどのスクリーンタイムが小児肥満と関連しているかは十分に解明されていなかった。

研究の概要:女子ではスクリーンタイムの長短で、オッズ比が最大7倍に

2018〜19年に新潟県阿賀野市および三条市の小中学校に通っていた小学5年生〜中学2年生2,242人(女子1,278人)を対象として、スマートフォンおよびスマートフォン以外のスクリーンタイムが肥満と関連するかを横断的に検討した。スクリーンタイム、睡眠時間などの生活習慣はアンケートで調査し、健康診断の身長と体重から、国際肥満タスクフォースの性別・月齢別カットオフ値(Cole et al. 2012)を用い肥満を診断した。身体活動量は国際標準化身体活動質問票(IPAQ)、食事摂取量は簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)にて調査した。

その結果、男子14.5%、女子9.9%が肥満と診断された。また、女子において、各スクリーンタイムの最低の群と比較して、全スクリーンタイム4時間以上5時間未満、スマートフォン3時間以上4時間未満、スマートフォン以外2時間以上の群では、それぞれ約3倍、統計学的有意に肥満と関連していた。一方、男子ではそのような傾向は見られなかった(表1)。

表1 男女別のスクリーンタイムと肥満との関連
(A) 全スクリーンタイム(時間/日)
男子女子
<21.00(基準)1.00(基準)
≥2<31.24(0.66-2.33)1.71(0.83-3.50)
≥3<41.79(0.99-3.24)1.48(0.71-3.10)
≥4<51.39(0.75-2.56)2.99(1.50-5.98)
≥51.83(0.94-3.56)4.16(1.99-8.69)
(B) スマートフォンスクリーンタイム(時間/日)
男子女子
非使用1.00(基準)1.00(基準)
<10.74(0.33-1.69)1.20(0.54-2.63)
≥1<20.67(0.29-1.54)0.89(0.38-2.05)
≥2<30.72(0.31-1.66)1.47(0.66-3.30)
≥31.00(0.52-1.94)2.99(1.63-5.47)
(C) スマートフォン以外スクリーンタイム(時間/日)
男子女子
<11.00(基準)1.00(基準)
≥1<20.96(0.36-2.54)1.13(0.45-2.85)
≥2<31.16(0.46-2.93)2.45(1.05-5.71)
≥3<41.80(0.72-4.51)2.30(0.95-5.57)
≥41.51(0.60-3.80)3.55(1.52-8.32)
多変量ロジスティック回帰分析によるオッズ比(肥満との関連度)、および95%信頼区間。年齢、身体活動量、睡眠時間、エネルギー摂取量、炭水化物および脂質(%エネルギー)、加えて、(B)はスマートフォン以外スクリーンタイム、(C)ではスマートフォンスクリーンタイムの影響を補正済み。女子のみで全スクリーンタイム、スマートフォンスクリーンタイム、スマートフォン以外スクリーンタイムが肥満と関連していた。
(出典:新潟大学)

さらに、スマートフォンとスマートフォン以外のスクリーンタイムを組み合わせた分析においても、女子のみで、両スクリーンタイムは相加的に肥満と関連する結果が得られた(図1)。具体的には、スマートフォン3時間未満かつスマートフォン以外2時間未満群と比較して、スマートフォン3時間以上またはスマートフォン以外2時間以上のいずれか片方、または両方同時に該当すると肥満のリスクは、それぞれ約3倍、約7倍に有意に増加した。

図1 スマホおよびスマホ以外スクリーンタイムの組み合わせによる肥満の関連

スマホおよびスマホ以外スクリーンタイムの組み合わせによる肥満の関連

多変量ロジスティック回帰分析。年齢、身体活動量、睡眠時間、エネルギー摂取量、炭水化物および脂質(%エネルギー)の影響を補正済み。
(出典:新潟大学)

さらに、女子において、スクリーンタイム全体またはスマートフォンのスクリーンタイムが長いことと、身体活動が少ないか、睡眠時間の不足が重なると、肥満のリスクがさらに高まった(図2、3)。しかし、全スクリーンタイムが4時間以上5時間未満、またはスマートフォンのスクリーンタイム2時間以上の場合は、1日の身体活動(運動や日常生活で身体を動かす時間)が60分以上、または睡眠時間が8.5時間以上を確保できていれば、肥満のリスクは上昇していなかった。

図2 女子のクリーンタイムと身体活動を組み合わせた場合の肥満との関連

女子のクリーンタイムと身体活動を組み合わせた場合の肥満との関連

(A)全スクリーンタイム、(B)スマートフォンスクリーンタイム。身体活動は23メッツ・時/週、すなわち60分/日相当量の未満と以上で層別化。年齢、睡眠時間、エネルギー摂取量、炭水化物および脂質(%エネルギー)、加えて(B)はスマートフォン以外スクリーンタイムの影響を補正済み。
(出典:新潟大学)

図3 女子のスクリーンタイムと睡眠時間を組み合わせた場合の肥満との関連

女子のスクリーンタイムと睡眠時間を組み合わせた場合の肥満との関連

(A)全スクリーンタイム、(B)スマートフォンスクリーンタイム。睡眠時間は8.5時間未満/以上で層別化。年齢、睡眠時間、エネルギー摂取量、炭水化物および脂質(%エネルギー)、加えて(B)はスマートフォン以外スクリーンタイムの影響を補正済み。
(出典:新潟大学)

研究の成果:身体活動や睡眠時間の確保で、肥満リスクを軽減できる可能性

スクリーンタイムと肥満の関係性の分析から、女子のみにおいてスマートフォン、スマートフォン以外のいずれについても長時間のスクリーンタイムが肥満と関連することが判明した。また、スマートフォンのスクリーンタイム3時間以上かつスマートフォン以外のスクリーンタイム2時間以上の女子では、どちらにも該当しない女子と比較して、肥満を有するリスクが約7倍高かったことが判明した。

しかし同時に、一定以上の身体活動や睡眠時間を確保することで、肥満リスクを軽減できる可能性も示唆された。

今後の展開

今回の研究では、スクリーンタイムをスマートフォンによるものとそれ以外に分類し、詳細な解析を行ったことにより、これまで知られていなかった日本人青少年におけるスマートフォンなどのスクリーンタイムと肥満との関係を明らかにすることができた。その結果、女子において肥満リスクとの関連が明らかになった。さらに運動、食事、睡眠時間などの生活習慣を同時に調査することにより、十分な身体活動や睡眠時間を確保することで、肥満の可能性を低減できる可能性が示された。

著者らは、これらの研究成果を広く児童生徒生活指導に生かしていく予定としている。

関連情報

スマホなどのスクリーンタイム(画面視聴時間)と小児肥満との関係の詳細が明らかに~新潟県阿賀野市・三条市との小中学生生活習慣病予防事業より~(新潟大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Association between screen time, including that for smartphones, and overweight/obesity among children in Japan: NICE EVIDENCE Study 4」。〔Endocr J. 2024 Feb 28;71(2):171-179〕
原文はこちら(J-STAGE)

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