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日本人のランチは健康的? 就労者の昼食の栄養学的特徴を準備する場所・食べる場所で比較調査

国内の就労者が摂取する昼食の栄養学的特徴が明らかにされた。手作りの弁当、あるいは社員食堂で主に昼食をとっている人は、外食やテイクアウトの昼食が中心の人と比べると、比較的昼食の栄養学的な質が高い(健康的である)ことが示された。東邦大学の研究グループが、東京都東南部にある8事業所の従業員を対象に質問票調査を行った結果であり、「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に論文が掲載されるとともに、同大学のサイトにプレスリリースが掲載された。研究グループによると、この研究は「日本人就労者における昼食の栄養学的特徴を明らかにした初めての研究」であり、「就労者における健康的な食生活の促進に役立つ可能性がある」としている。

日本人のランチは健康的? 就労者の昼食の栄養学的特徴を準備する場所・食べる場所で比較調査

研究の背景:就労者が摂取している食事の3分の1は職場環境が関与

就労者は、1日の多くの時間を職場で過ごす。シフト勤務者を除けば、フルタイム勤務者は職場および職場周辺で昼食を食べることが多く、1日のエネルギー摂取量のおよそ3分の1は昼食が寄与していることを考えると、職場環境の中で適切な食事を摂ることは、就労者の健康的な食生活を促進するために不可欠。しかし、就労者の昼食の栄養学的な特徴を調べた研究は限られている。

目的:就労者の昼食は、何によって特徴づけられているか?

食事を準備する場所や喫食場所は、食事の内容に関連する可能性が示唆されている。そこで本研究では、日本人就労者が摂取する昼食の栄養学的特性が、昼食が準備される場所・喫食される場所によってどのように異なるかを調べるとともに、就労関連の特性がどのように異なるかについても比較した。

方法:就労者の昼食の摂り方を四つのスタイルに分類して比較

2022年10月に東京都東南部にある8事業所の従業員892名(20~75歳)に対して、食事歴法質問票(Meal-based Diet History Questionnaire;MDHQ)による調査を行った。MDHQは、朝食、昼食、夕食、間食ごとに、主な食品・栄養素の過去1カ月間の摂取量を把握できる、三つのパートからなる食事歴法質問票。MDHQから算出された栄養素摂取量と食品群摂取量をもとに、栄養学的な食事の質を示すスコア(Healthy Eating Index-2015;HEI-2015)を計算した。HEI-2015は、「米国人のための食事ガイドライン2015〜2020年版」の遵守度を評価するための尺度(100点満点)であり、スコアが高いほど食事全体の質が高いことを示す。

質問票を用いて、ふだん昼食を準備してくれる人、昼食を食べる場所、昼食にかける金額、食べ始める時刻を尋ねた。さらに、就労に関連する因子として、職種と週あたりの就労時間を尋ねた。

質問票への回答が得られた675人のうち、分析に必要な項目がある620人を解析対象者とし、昼食がふだん準備されている場所・喫食している場所に対する回答から、手作り群(190人)、社員食堂群(77人)、外食群(109人)、テイクアウト群(244人)の4群に分類(図1)。この4群間で、性別や年齢などの基本情報、昼食にかける金額、食べ始める時刻、職種と週当たりの勤務時間を比較し、さらに年齢と性別、Body Mass Index(BMI)、喫煙習慣、職種、就労時間を調整したうえで、栄養素摂取量、食品群摂取量、HEI-2015スコアを4群間で比較した。

図1 昼食を準備する場所・食べる場所での対象者の分類

昼食を準備する場所・食べる場所での対象者の分類

(出典:東邦大学)

結果:年齢や性別、職種、就労時間、摂取時間帯、コストなどに群間差

外食群とテイクアウト群は、年齢が若い傾向があり、手作り群は女性の割合が高い傾向があった。外食群とテイクアウト群は、手作り群、社員食堂群に比べて、販売・サービス職の割合が高く、就労時間が長い傾向があった(表1)。

表1 職種と就労時間の比較
手作り群
(n=190)
社員食堂群
(n=77)
外食群
(n=109)
テイクアウト群
(n=244)
P值*
職種(%)<0.0001
管理職12231818
專門•技術職1213514
事務職38291827
販売・サービス職22135033
保安職1101
技能・労務職142176
その他1021
就労時間(時間/週)(%)0.0006
<355122
35-4046443634
41-4820272720
49-5418182724
≧55109920
*:連続変数は分散分析、カテゴリ変数は火検定
(出典:東邦大学)

費用は手作り群、社員食堂群の方が安い傾向があり、外食群、テイクアウト群では、13時以降に食べ始める人が多い傾向があった(表2)。

表2 昼食の費用、食べ始める時刻の比較
手作り群
(n=190)
社員食堂群
(n=77)
外食群
(n=109)
テイクアウト群
(n=244)
P值*
昼食の費用(円/日)(%)<0.0001
<300322929
300-<5004258516
500-<70018102044
700-<900433918
900-<1100403511
≧11001002
食べ始める時刻(%)<0.0001
12時より前1001
12時台71966849
13~14時台1832036
15時以降5125
一定でない40108
*:連続変数は分散分析、カテゴリ変数はΧ二乗検定
(出典:東邦大学)

表2 昼食の費用、食べ始める時刻の比較

HEI-2015を4群間で比較すると、社員食堂群が最も高く(平均49.6、標準偏差0.9)、手作り群(平均47.4、標準偏差0.6)がその次だった(図2)。

栄養素摂取量を比較すると、手作り群は、外食群とテイクアウト群に比べて、ビタミンA、チアミン、リボフラビン、ビタミンB6、亜鉛の摂取量が高く、同様に、社員食堂群はビタミンA、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビタミンC、カリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅の摂取量が外食群とテイクアウト群に比べて多いことがわかった。

図2 Healthy Eating Index-2015の得点(合計)の比較

Healthy Eating Index-2015の得点(合計)の比較

(出典:東邦大学)

さらに、食品群摂取量を比較すると、手作り群は外食群やテイクアウト群よりも、米類と卵類の摂取量が多く、社員食堂群は、外食群やテイクアウト群よりも、米類、いも類、豆類、野菜類、魚類、肉類の摂取量が多いことがわかった(図3)。

図3 食品群摂取量の比較

食品群摂取量の比較

手作り群の摂取量を1とした場合の相対的な値を示す。
(出典:東邦大学)

結論:手作り弁当や社員食堂のほうが健康的

昼食を、主に手作りの弁当あるいは社員食堂で摂っている人は、外食やテイクアウトの昼食が中心の人と比べると、比較的昼食の栄養学的な質が高い(健康的である)ことが示された。社員食堂での昼食の提供は、手作りの昼食を準備することが難しい就労者において、健康的な食生活の促進に役立つ可能性がある。

プレスリリース

日本人就労者が摂取する昼食の栄養学的特徴~主に準備される場所・喫食される場所の種類での比較~(東邦大学)

文献情報

原題のタイトルは、「The Nutritional Characteristics of Usual Lunches Consumed Among Japanese Workers: Comparison Between Different Lunch-Type Groups」。〔J Occup Environ Med. 2024 Jan 1;66(1):e17-e25〕
原文はこちら(American College of Occupational and Environmental Medicine)

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