スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

余暇の身体活動はストレス解消になるが、仕事中の身体活動はストレスを強める 国内中小企業で調査

国内の中小企業従業員を対象とする調査から、余暇時間の身体活動はストレスの軽減につながるものの、仕事中の身体活動は逆にストレスを強めてしまう可能性があることが明らかになった。島根大学学術研究院医学・看護学系地域包括ケア教育研究センターの安部孝文氏らの研究によるもので、「Industrial Health」に論文が掲載された。

余暇の身体活動はストレス解消になるが、仕事中の身体活動はストレスを強める 国内中小企業で調査

身体活動の種類や行う状況によって、ストレスへの影響は異なるのか?

厚生労働省の「労働安全衛生調査」では、日本の労働者の半数以上が過度のストレスを感じながら働いているという実態が報告されており、そのようなストレスが精神的・身体的疾患のリスクを押し上げている可能性が憂慮されている。ストレス解消法の一つに身体活動があり、健康とストレス解消のために、余暇時間の身体活動が奨励されている。その一方で、仕事中の身体活動にも、余暇時間に行う身体活動と同様の効果を期待してよいのかという点はよくわかっていない。海外からは、そのような身体活動はむしろストレス増大につながっていることを示唆するデータが報告されているが、日本人でのデータは少ない。また、身体活動のタイプによって、ストレスへの影響が異なるのか否かという点も明らかでない。

これらを背景として安部氏らは、島根県内の中小企業従業員の匿名化された健康情報データを用いて、仕事中と余暇時間でのさまざまなタイプの身体活動が、精神的ストレスおよび身体的ストレスとどのように関連しているのかを横断的に解析した。

島根県内の中小企業従業員を対象に横断調査

解析対象は、中小企業35社に勤務する863人(年齢中央値43歳〈四分位範囲32~53〉、男性61.0%、BMI中央値22.1)。後述の方法で身体活動時間・頻度を評価した。精神的または身体的ストレスレベルの評価には、職場でのストレスチェック用として厚生労働省が公開している、「職業性ストレス簡易調査票(Brief Job Stress Questionnaire;BJSQ)を用いた。精神的または身体的ストレスレベルを得点化することができ、得点が高いほどストレスレベルが高い。

身体活動量の評価方法

仕事中の身体活動量の把握には、職業性身体活動調査票(Work-related Physical Activity Questionnaire;WPAQ)を用いて、1日あたりの座位行動や座位行動の中断、立位、歩行、重労働の時間を把握。余暇時間の身体活動については、ストレッチ、筋力トレーニング、およびウォーキングの頻度を把握した。明らかになった身体活動時間・頻度は以下のとおり。

仕事中の身体活動

仕事中の身体活動については、座位行動が1日あたり中央値288分(四分位範囲72~432)、そのうち座位行動の中断が1回あたり30分(10~60)、1日あたりの立位が93分(27~192)、歩行が48分(24~120)であり、重労働は0分(0~24)であって、身体活動歩行と重労働をあわせた中高強度身体活動(moderate-to-vigorous physical activity;MVPA)は60分(27~144)だった。

解析に際しては、重労働以外の時間は三分位で3群に分け、第1三分位群(それぞれの時間が短い下位33%)を基準として比較した。重労働に関しては0分と1分以上とに二分して比較した。

余暇時間の身体活動

余暇時間の身体活動のうち、ストレッチは1週あたり中央値0回(0~5)、筋力トレーニングは0回(0~0)、ウォーキングは0回(0~5)だった。

解析に際しては、週あたりの頻度が0回の群を基準として、残りを実行回数の中央値に基づき二分し、全体を3群として比較した。

仕事中の身体活動はストレスを強めてしまう可能性がある

ストレスレベルに影響を及ぼし得る要因(年齢、性別、BMI、教育歴、世帯収入、雇用形態、職位、喫煙・飲酒習慣)を調整後、余暇時間の身体活動はストレス、とくに精神的ストレスが少ないことと有意な関連が認められた。それに対して仕事中の身体活動はストレスレベルとの関連があまり認められず、有意な関連は身体活動中高強度身体活動(MVPA)の時間のみであり、かつその関連は正の関連(MVPA時間が長いほどストレスレベルが高い)だった。

詳細は以下のとおり。

余暇時間の身体活動とストレスレベル

精神的ストレスとの関連

余暇時間のストレッチの頻度の最も高い群(週に5回以上)は、頻度の最も低い群(同0回)に比べて、有意に精神的ストレスのレベルが低かった(β=-2.34〈95%CI;-4.07~-0.61〉)。頻度が中程度の群(同1~4回)は非有意だった。

筋力トレーニングの頻度については、頻度が中程度の群(週に1~3回)は、頻度の最も低い群(同0回)に比べて、有意に精神的ストレスのレベルが低かった(β=-2.93〈-5.46~-0.40〉)。頻度の最も高い群(4回以上)は非有意だった。

ウォーキングについては、頻度が中程度の群(週に1~4回、β=-2.31〈-4.22~-0.40〉)、最も高い群(週に5回以上、β=-2.41〈-4.13~-0.70〉)ともに、頻度の最も低い群(同0回)に比べて有意に精神的ストレスのレベルが低かった。

身体的ストレスとの関連

余暇時間のストレッチの頻度の高い群は最も低い群に比べて、有意に身体的ストレスのレベルが低かった(β=-1.14〈-2.05~-0.23〉)。頻度が中程度の群は非有意だった。

筋力トレーニングやウォーキングの頻度は、身体的ストレスのレベルと有意な関連がみられなかった。

仕事中の身体活動とストレスレベル

仕事中のMVPAの時間の長い第3三分位群(1日に108分以上)は第1三分位群(同42分以下)に比べて、有意に精神的ストレスのレベルが高かった(β=2.04〈0.18~3.91〉)。第2三分位群は非有意だった。

MVPAの時間と身体的ストレスレベルとの関連は有意でなかった。その他、仕事中の座位、座位行動、立位、歩行、重労働の時間は、精神的および身体的ストレスのレベルと有意な関連がみられなかった。

著者らは本研究には、横断調査であり因果関係は不明であること、サンプルサイズが十分ではないこと、身体活動量を時間や頻度のみで評価していること、ストレスレベルに影響を与え得る職場環境などが考慮されていないことなどの限界点があるとしたうえで、「労働者の身体活動や余暇時間の身体活動身体活動は、その種類や量によって、精神的または身体的なストレスに及ぼす影響が異なる可能性が明らかになった」とまとめている。

なお、仕事中の身体活動がストレスレベルを高めるメカニズムとしては、先行研究に基づき、身体活動後の回復の時間を確保できないことなどが関与している可能性を指摘。そのような状況での身体活動は、心拍数や血圧を上昇させたり、炎症反応を高めたりして、健康リスクともなり得るのではないかとの考察が述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Association between different types of physical activity and occupational stress in Japanese workers: a cross-sectional study」。〔Ind Health. 2024 Jan 16〕
原文はこちら(J-STAGE)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ