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サーファーの過半数が利用可能エネルギー不足(LEA)リスク 食事の8割で炭水化物不足

サーファーの食事摂取状況を調査したパイロット研究の結果が報告された。調査対象の6割弱、女性では8割に、利用可能エネルギー不足(LEA)のリスクが認められたという。オーストラリアとニュージーランドで行われた研究。

サーファーの過半数が利用可能エネルギー不足(LEA)リスク 食事の8割で炭水化物不足

東京2020以降、世界的に人気が上昇しているサーフィン

サーフィンは2021年のオリンピック東京大会で初めて競技として採用されて以降、世界的に人気が高まっている。例えば、ワールドサーフリーグの視聴者は、2021年から2022年にかけて22%増加したという。

サーフィン競技者、つまりサーファーももちろんスポーツ栄養戦略が重要と考えられる。実際、サーフィンの運動強度は最大心拍数の64~85%であり、消費エネルギー量は1時間あたり500kcalに上ると報告されており、運動負荷は低くない。さらに、サーファーはいったん海に出ると、4~5時間もサーフィンを続けることが稀でない。ところが、サーファーのこのような身体活動のサポートに必要とされる食習慣や栄養素摂取状況の調査は、現在までほとんど行われていない。

これを背景として、今回紹介する論文の著者らは、サーファーには利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)のリスクが存在するとの仮説を立て、食事調査に基づく検討を行った。

中級レベル以上のサーファー21人の食事を調査

研究参加者は、ソーシャルメディアを通じて募集された。適格基準は、18歳以上で慢性疾患がなく、サーファー歴が2年以上で過去3カ月間にわたり週に2回以上サーフィンを行っており、中級以上のレベルがあると自認していること。エネルギーバランスに影響を与える可能性のある薬剤を使用している場合や、怪我のため8割以上の実力を発揮できない状態にあるアスリートは除外した。31人が募集に応じ、21人が適格と判断され研究に参加した。

主な特徴は、年齢中央値が30歳(四分位範囲28~40.5)、男性16人(76%)、BMI24.62±1.72。

食事摂取状況の評価とLEAの判定について

食事・栄養素摂取量は、連続4日間の食事記録に基づき評価。その結果、1日の摂取エネルギー量は2,434.76±1,104.96kcal、タンパク質摂取量は116.84±55.11g(1.56±0.71g/kg)、脂質は95.41±45.77g(摂取エネルギー比34.09±16%)、炭水化物は261.30±111.64g(3.36±1.44g/kg)だった。

利用可能エネルギー不足(LEA)のリスクは、女性サーファーについては25項目からなる女性アスリートのLEAスクリーニングツール(low energy availability in females questionnaire;LEAF-Q)を用いて、8点以上の場合にリスクありと判定した。男性サーファーについては摂食障害のスクリーニングツール(eating disorder examination questionnaire;EDE-Q)を用いて、2.3点以上の場合にリスクありと判定した。その結果、全体の57%、性別では男性の50%、女性の80%にLEAのリスクが認められた。

LEAリスクのあるサーファーの特徴とは?

次に、LEAのリスクのあるサーファー(12人)とリスクのないサーファー(9人)とに分けて特徴を比較したところ、年齢や身長、体重、BMI、性別の分布、競技レベル、週あたりの運動時間・サーフィンを行っている時間・座位行動時間などに有意差はみられず、LEAリスクに関連する因子は特定されなかった。

続いて、競技レベルに基づき、中級(9人)、上級(12人)に二分し比較すると、上級者のほうが高齢で(中級は中央値30歳〈四分位範囲28~32〉、上級は36.67±8.28歳)、身長が高い(1.73±0.08 vs 1.80±0.07m)という有意差が観察されたが、BMIやLEAF-QおよびEDE-Qのスコアに有意差はなかった。

炭水化物の摂取量が推奨を満たしているのは全体の4分の1足らず

続いて、調査対象者全員の4日間にわたる延べ70人日の食事記録に基づき、1日の平均栄養素摂取量を、オーストラリアおよびニュージーランドにおけるガイドラインまたは既報研究の推奨値と比較。すると、炭水化物の推奨量を満たした割合はわずか23%にすぎないこと、その一方で飽和脂肪酸が推奨値を上回る割合が57%に及ぶこと、カルシウムの推奨量を満たす割合は44%であることなどが明らかになった。詳細は以下のとおり。

炭水化物は推奨値が5~7g/kg/日であるのに対して摂取量は前述のように3.36±1.44g/kgであり、推奨を満たしていたのは70人日のうち16件で23%。飽和脂肪酸に関しては推奨値が摂取エネルギー比に対する上限が10%であるのに対して12.29±6.81%であり、70人日のうち40件が10%を超過していた。カルシウムの推奨値(男性1,000mg、女性1,300mg)を満たしていたのは、70人日中31件だった。

論文の結論では、「驚くほど多くのサーファーがLEAのリスクに直面している」と述べられている。研究の限界点として、解析対象に女性が少ないこと、競技レベルに偏りがありハイレベル者での実態が不明なことなどを挙げ、より大規模なサンプルでの調査の必要性を指摘している。また、男性のLEAリスクを評価するスタンダードな指標やカットオフ値が確立されていないことも、今後解決すべき課題だと述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Surfboard riders are at risk of low energy availability -A pilot study」。〔Nutr Health. 2023 Sep 29:2601060231204927〕
原文はこちら(SAGE Publications)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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