タンパク質、炭水化物、水分、サプリメント…ゴルフのスコアを上げるための栄養戦略 ナラティブレビュー
今回は、ゴルフのための栄養戦略をまとめた、オーストラリアの研究者によるナラティブレビュー論文を取り上げる。ゴルフをプレーする際のエネルギー需要、競技特性、炭水化物とタンパク質の需要、水分補給、リカバリー、サプリメント戦略、トラベルニュートリション(大会参加のための移動における栄養上の考慮事項)などが述べられており、それらの一部を紹介する。
スポーツ栄養の視点から見たゴルフという競技の特徴
ゴルフは主としてスキルベースのスポーツであり、パフォーマンス向上にとってテクニカルなトレーニングが優先されることが多く、栄養の役割が注目されることが少ない。しかし実際には、1ラウンドで最大20km移動することがあり、アマチュアのトーナメントでは1日に最大36ホールをプレーし、コース上に10時間滞在することもあるという、栄養要求の少なくないスポーツである。また、エリートレベルでは、世界各地で開催されるツアーに参加し、その遠征のための食事・栄養戦略も結果に影響を及ぼす可能性がある。
これを背景としてこの研究では、PubMed、Web of Science、Google Scholarなどのデータベースを用いた文献検索に基づくレビューが行われた。検索用語は、ゴルフと栄養/栄養素、ゴルフとサプリメント、ゴルフと水分補給などが用いられた。ただし、このトピックに関しては、査読システムのあるジャーナルに掲載された論文が少ないため、関連書籍も参照した。
ゴルフの生理的要求
ゴルフでの成功は身体的特性よりも、技術的、戦術的、精神的な側面が重要であると考えられている。実際、ゴルファーの有酸素能力は持久系競技のアスリートと比較して一般に低いことが報告されている。
とは言え18ホールのラウンドには通常3~5時間を要し、平均7~8kmの歩行を要する。スイングでの身体活動自体はわずか2秒足らずだが、プロ選手の場合、トーナメント中に2,000回以上のスイングを行うことがある。また、天候や立地などの環境要因も生理学的要求に大きな影響を与えることも、ゴルフの特徴として挙げられる。
ゴルフのエネルギー需要については、他のスポーツによる消費エネルギー量が十分に研究されているのに比べてデータが少ない。また、ゴルフではプレーの形式によって、エネルギー需要は大きく異なると考えられる。例えばプロゴルファーはキャディーのサポートを受けるが、アマチュアは自分のバッグを持ち運びながら、1日に最大36ホールのプレーをすることもある。限られた研究の中には、1ラウンドあたりの消費エネルギー量が663~756kcalであり、エリートレベルでは3.4±1.0kcal/分とする報告がみられる。
ゴルフに関連する栄養上の考慮事項
過去10年ほどの間にスポーツ栄養への関心が急速に高まり、国際オリンピック委員会や米国スポーツ医学会などから、複数のステートメントやリコメンデーションが発表されている。それにもかかわらずゴルフパフォーマンスのための栄養ガイドラインはまだ不足している。限られたデータではあるが、現在の知見を以下のようにまとめることができる。
摂取エネルギー量
季節性を考慮し最適なエネルギー可用性を目指す。健康とパフォーマンスのため40~45kcal/kg除脂肪体重(FFM)/日が必要とされる。さらに筋肉量を増やすためには300~500kcal/日の増加と個別化したトレーニングを要する。
タンパク質
タンパク質摂取量とゴルフパフォーマンスに関する具体的なガイドラインは存在しない。一般的なアスリートの場合、1.4~2.0g/kg体重(BW)/日、または1食につき0.4g/kgBWの高品質のタンパク質源を4~5回の食事で均等に摂取することが望ましい。
炭水化物
炭水化物摂取量とゴルフパフォーマンスに関する具体的なガイドラインは存在しない。エネルギー需要は1ラウンドで約700kcalであり、その主要なエネルギー源が炭水化物である。筋力強化のためにレジスタンストレーニングを行う場合は、状況に応じて3~5g/kgBW/日の範囲の付加が適切。プレーにおいては血糖値の低下による認知機能への影響を抑制するため、ラウンド中の炭水化物摂取を考慮する必要がある。
水分
エリートゴルファーは、可能であれば一日中または競技中、常に十分な水分バランスが維持された状態に保つよう努めるべきであり、それが不可能な場合でも、体液喪失による体重の減少を1%未満に抑える必要がある。認知機能の最適化と脱水の影響の抑止のため、電解質と炭水化物を含む飲料を摂取する。
サプリメント
ゴルフのパフォーマンスのためのサプリメントの使用に関する具体的なガイドラインは存在しない。ただし、カフェインについては、トレーニングまたは競技の30分前に2~5mg/kgBWを摂取し、試合中にも補給すると、疲労感が軽減しゴルフパフォーマンスが向上するとする報告がある。クレアチン一水和物については、レジスタンストレーニングの効果を高めるためには、1日5gの投与プロトコルで十分である可能性が報告されている。
トラベルニュートリション
ツアー参加のための移動に際しては、出発前に栄養戦略を計画する必要がある。開催地の文化や環境に関する情報を事前に入手する。遠征中に概日リズムを維持するための教育を受けることは有益である。上気道感染症のリスクを軽減するために、ビタミンDサプリの使用を検討し、30ng/mL以上に維持する。
文献情報
原題のタイトルは、「Nutritional Considerations for Elite Golf: A Narrative Review」。〔Nutrients. 2023 Sep 23;15(19):4116〕
原文はこちら(MDPI)