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太らない炭水化物の種類と摂り方 米国の約14万人追跡調査で明らかになったポイント

太りやすい炭水化物の種類や摂り方と、太りにくい炭水化物の種類や摂り方が明らかになった。米国人14万人弱を対象に、4年間の体重変化を計24年間にわたって追跡した結果であり、英国医師会雑誌「BMJ」に論文が掲載された。

太らない炭水化物の種類と摂り方 米国の約14万人追跡調査で明らかになったポイント

食事摂取状況と4年後の体重変化を24年間にわたり集計

肥満が世界的なパンデミックとなって久しく、これまでにさまざまな減量法が提案されてきている。栄養素の割合に着目した食事関連の減量法としては、エネルギー密度の高い脂質を制限するという考え方と、インスリン負荷を高める炭水化物を制限するという考え方があり、近年は後者のほうがわずかに減量または体重増加抑制効果が強いことを示唆する研究報告が増えている。とは言えそれらの研究では摂取エネルギー量を制限するか否か、炭水化物摂取割合をどの程度に設定するかなどの条件がまちまちであり、かつ、観察期間が十分でないため、いまだこのトピックに関する結論が得られていない。

一方で、炭水化物の質や供給源の差異も体重に影響を及ぼすことが明らかになってきている。具体的にはグリセミックインデックス(glycemic index;GI)の高い炭水化物や、野菜であってもでんぷんを多く含む野菜は体重増加につながりやすいことが示唆されている。

ただし、現在、世界中で増加が問題となっている肥満の多くは、中年期に徐々に、長期間かけて少しずつ体重が増加していった結果として生じるものであり、これまで行われてきている食事と体重変化との関連の研究は、そのような長期的な関連を明らかにすることができていない。

以上を背景として本論文の著者らは、米国で長期間継続して行われている、3件の大規模前向きコホート研究のデータを用いて、ある時点の食事摂取状況とその後の体重の変化との関連を解析するという研究を行った。

3件の大規模前向きコホート研究とは、一つは30~55歳の看護師対象に1976年にスタートした「Nurses' Health Study;NHS」、別の一つはNHSより若年の25~42歳の看護師を対象に1989年にスタートした「NHS II」、残りの一つは40~75歳の男性医療従事者を対象に1986年にスタートした「Health Professionals Follow-up Study;HPFS」。これらの研究では2~4年ごとに食事摂取状況や健康状態の調査が行われている。本論文の解析では、それぞれの研究における参加者が最初に詳細な食事調査が行われた年をベースラインとし、ベースライン時の食事摂取状況とその後4年間での体重変化との関連を検討している。

解析対象者が摂取している炭水化物の種類や質

NHS、NHS II、HPFSの参加者から、ベースライン時に糖尿病、癌、心血管疾患、呼吸器疾患、神経変性疾患、消化器疾患、慢性腎臓病、全身性エリテマトーデスに罹患していない65歳以下の成人13万6,432人(平均年齢50.2歳、女性83.5%)を解析対象とした。ベースラインの平均BMIは、NHSとNHS IIは25.7、HPFSは25.8であり、いずれも米国の過体重、我が国の基準では肥満に該当していた。4年間の体重変化は平均+1.5kgであり、24年間では平均8.8kg増加していた。

食事調査から明らかになった炭水化物源や質、および栄養素の摂取状況は以下のとおり。

炭水化物の総摂取量

対象の大半が女性であるNHSやNHS IIではベースライン時に221~224g/日であり、4年間の変化は、時代が古いNHSでは+3.9g/日、時代の新しいNHS IIでは-2.0g/日。男性対象のHPFSではベースライン時に244.6g/日であり、4年間の変化は+2.3g/日

炭水化物食品のグリセミックインデックス(GI)

NHSやNHS IIではベースライン時が52.5で、4年間の変化はNHSでは+0.1、NHS IIは-0.5。HPFSではベースライン時に53.1であり、4年間の変化は-0.2。

炭水化物食品のグリセミックロード(glycemic load;GL)

NHSやNHS IIではベースライン時が116~118で、4年間の変化はNHSでは+2.9、NHS IIは-2.1。HPFSではベースライン時に130.1であり、4年間の変化は+1.0。

炭水化物の種類

食物繊維はベースライン時に19.8~21.9g/日の範囲で、4年間の変化は+0.7~0.9の範囲。でんぷんは同順に73.8g/日、-0.5~+5.5g/日。総グルコース量はベースライン時に125.8~138.5g/日の範囲で、4年間の変化は-1.7~+5.84g/日の範囲。総果糖量はベースライン時に42.1~47.7g/日の範囲で、4年間の変化は-0.8~+0.3g/日の範囲。添加糖はベースライン時に45.1~50.8g/日、天然糖(natural sugar)はベースライン時に53.4~60.0。

炭水化物源

全粒穀物はベースライン時に15.0~20.4g/日の範囲で、4年間の変化は+2.5~3.3の範囲。精製穀物はベースライン時に50.5~55.8g/日の範囲で、4年間の変化は-2.8~0.0の範囲。果物はベースライン時に19.9~22.7g/日の範囲で、4年間の変化は+0.7~2.1の範囲。でんぷんの少ない野菜はベースライン時に12.3~12.8g/日の範囲で、4年間の変化は+0.3~0.6の範囲。でんぷんの多い野菜はベースライン時に18.6~21.5g/日の範囲で、4年間の変化は-0.6~-0.3の範囲。

摂取エネルギー量

NHSやNHS IIではベースライン時に1,762~1,783kcal/日であり、4年間の変化は、-6~+2kcal/日。HPFSではベースライン時に2,005kcal/日であり、4年間の変化は-6kcal/日。

タンパク質摂取量

NHSやNHS IIではベースライン時に80.3~81.6g/日であり、4年間の変化は、-1.3~±1.1g/日。HPFSではベースライン時に88.9g/日であり、4年間の変化は-1.5g/日。

脂質摂取量

NHSやNHS IIではベースライン時に61.5~62.7g/日であり、4年間の変化は、-1.6~+1.2g/日。HPFSではベースライン時に69.8g/日であり、4年間の変化は-0.7g/日。

炭水化物の種類や質によって体重への影響は正反対にもなる

交絡因子(摂取エネルギー量、タンパク質・脂質・トランス脂肪酸摂取量、多価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸比、ベースラインのBMI、喫煙・飲酒・運動習慣、睡眠時間、スクリーンタイムなど)を調整後、炭水化物の摂取量や炭水化物源、炭水化物の質と、4年間での体重変化幅との間に、以下のような有意な関連が見い出された(p値は天然糖〈natural sugar〉が0.005で、その他はすべて0.001未満)。

炭水化物の総摂取量との関連

炭水化物の総摂取量が100g/日多いと、4年間での体重増加幅が0.2(95%CI;0.2~0.2)kg大きい。

炭水化物の質との関連

摂取している炭水化物のGIが10単位高いと体重増加幅が1.2(1.2~1.3)kg大きく、GLが100単位高いと体重増加幅が0.7(0.6~0.7)kg大きい。

炭水化物の種類との関連

食物繊維の摂取量が10g/日多いごとに、4年間での体重の変化は-0.8(-0.8~-0.8)kgであり、体重減と関連。反対にでんぷんは1.5(1.4~1.5)kgの体重増と関連。総グルコース量は1.5(1.4~1.5)kgの体重増、総果糖量は-0.2(-0.4~-0.1)kgの体重減と関連。添加糖は0.9(0.8~1.0)kgの体重増、天然糖は-0.1(-0.1~0.0)の体重減と関連。

炭水化物源との関連

全粒穀物は摂取量が100g/日多いことが-0.4(-0.5~-0.3)kgの体重減と関連、反対に精製穀物は0.8(0.7~0.9)kgの体重増と関連。果物は-1.6(-1.7~-1.5)kgの体重減と関連。でんぷんの少ない野菜は-3.0(-3.3~-2.7)の体重減と関連、でんぷんの多い野菜は2.6(2.4~2.8)kgの体重増と関連。

でんぷんの少ない野菜は体重減、でんぷんの多い野菜(ポテト)は体重増と関連

以上からの結論として著者らは、「この研究結果は、過体重(国内の基準では肥満)の人の長期的な体重管理における、炭水化物の質と供給源の潜在的な重要性を強調している。砂糖の添加、加糖飲料、精製穀物、でんぷん質の野菜の摂取を控え、全粒穀物、果物、非でんぷん質の野菜を摂取することが、体重コントロールに役立つ可能性がある」と述べている。

なお、前記の結果の一部を言い換えると、でんぷんの少ない野菜の1日の摂取量が100g多いことは、4年間で体重が3.0kg減少することと関連しており、食物繊維は10g多いごとに0.8kgの体重減と関連していると言える。反対にでんぷんの多い野菜(論文によると、具体的にはポテトが多くを占めるという)の1日の摂取量が100g多いことは、4年間で体重が2.6kg増加することと関連していることを意味する。

文献情報

原題のタイトルは、「Association between changes in carbohydrate intake and long term weight changes: prospective cohort study」。〔BMJ. 2023 Sep 27:382:e073939〕
原文はこちら(BMJ Publishing Group)

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