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カーリングのショット精度は、カフェインとL-テアニンの併用で向上する

カフェインとアミノ酸の一種であるL-テアニンを併用することで、カーリングのショットの精度が有意に上昇することが、トルコのナショナルチームレベルの選手を対象とする二重盲検試験によって明らかになった。認知機能テストの結果にも有意差が認められたという。

カーリングは長時間の集中力維持が要求される

ウインタースポーツとしてカーリングの人気が国内外で高まりをみせている。カーリングには、安定した姿勢やショットの動作スキルの高さが求められるが、最も際立った特徴は、正確なショットのための集中力や戦略思考スキルが要求されることであり、長時間の試合中にそれらのパフォーマンスを維持するため、適切な栄養戦略が重要となる。実際、カーリング選手が試合中に補食を行うシーンはテレビにしばしば映し出され、何を食べているのかがしばしば世間の話題となる。

覚醒レベルや集中力を高めるために、カフェインは、アスリートに限らず広く用いられている。アスリートのカフェイン使用も、2004年に禁止物質から外されて以来、急速に広まり、国際大会参加レベルの選手の使用率は76%とするデータもある。

他方、緑茶などに含まれているアミノ酸のL-テアニンも、セロトニン、ドパミン、γ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid;GABA)レベルを高め、リラックス作用を生み、パフォーマンスに資するとする報告が増えている。カフェインの効果が豊富なエビデンスにより確立されたものであるのに比べると、L-テアニンに関してはまだ研究結果の一貫性が十分でないものの、カフェインと併用した場合に認知機能やスポーツパフォーマンスにプラスの影響が生じる可能性が想定される。

このような背景のもと、今回紹介する論文の著者らは、集中力の持続が結果を大きく左右するカーニングの選手を対象として、カフェインとL-テアニンの同時摂取の影響を検討した。

ナショナルチーム所属選手対象の二重盲検無作為化クロスオーバー試験

研究参加者は、トルコのカーリングナショナルチームに所属する選手22人。適格条件として、18歳以上であって国内チームの選手として5年以上の経験があり国際大会に参加していることなどが設定され、除外基準としては、過去3カ月以内に栄養補助食品やステロイドなど、スポーツパフォーマンスに影響を与える可能性のある物質を摂取していること、パフォーマンスを損なう可能性のある疾患または状態にあることなどが設定されていた。参加者のおもな特徴は、年齢20.20±1.61歳、競技歴6.20±0.51年、BMI21.80±3.47。なお、性別に関する情報の記載は見当たらない。

試験デザインは二重盲検無作為化クロスオーバー試験であり、全員に対してカフェイン単独(CAF)条件、L-テアニン単独(THE)条件、カフェインとL-テアニン併用(CAF+THE)条件、およびプラセボ(PLA)条件という4条件を試行した。カフェインとL-テアニンの用量はどちらも6mg/kgであり、プラセボは400mgのマルトデキストリンを用いた。いずれも粉末を500mLの水に溶解して、内容を識別できない状態で摂取してもらい、60分後から後述の認知機能テストおよびカーリングのショットトライアルを行った。。

すべての試行は概日リズムの影響を除外するため午前9~11時の間に実施された。また、試験期間がスタートする48時間前からは、コーヒー、紅茶、エナジードリンク、チョコレートを含む、カフェインが豊富な食品の摂取を禁止した。

認知機能テストとショットトライアルで評価

評価項目は、認知機能テストおよびカーリングのショットトライアルの二つ。認知機能テストはストループテストと呼ばれる神経心理学的テストにより、課題に対する反応時間とエラー率をスコア化して評価した。

カーリングのショットトライアルでは、ハウス(ターゲット)の手前にストーンを停止させるガードショット、ハウス中央にストーンを停止させるドローショット、対戦相手のストーンを弾き飛ばして自チームのストーンをハウス中央に停止させるテイクアウトショットという3種類のショットにより、正確さを評価した。

カフェインやL-テアニンの単独より併用する条件で、よりスコアが向上

併用条件では、3種のショットトライアルのすべてが有意にスコアUP

では結果だが、まずショットトライアルについてみると、ガードショットではプラセボ(PLA)条件のスコア1.40±2.22に対して、カフェインとL-テアニン併用(CAF+THE)条件では18.10±3.44であり、有意に優れていた。ドローショットでもPLA条件14.30±5.16に対して、CAF+THE条件は24.70±6.09で、有意に優れていた。カフェイン単独(CAF)条件、L-テアニン単独(THE)条件は、ガードショット、ドローショットともに、プラセボ条件よりスコアは高かったものの有意差は認められなかった。

テイクアウトショットに関しては、PLA条件が14.20±5.43、CAF条件は21.70±4.27、THE条件は24.00±4.52、CAF+THE条件は26.70±5.51であり、プラセボ以外の3条件はいずれもプラセボ条件より有意にハイスコアだった。

ストループテストの結果は併用条件のみ、対プラセボで有意に優れる

次にストループテストの結果については、反応時間の短さやエラー率の低さともにカフェインとL-テアニン併用条件はプラセボ条件に比較し有意に優れていた。カフェインまたはL-テアニンを単独で摂取する条件は、いずれもプラセボ条件と有意差がみられなかった。

結論として、カフェインとL-テアニンを併用摂取すると、カーリングのショットの精度と認知パフォーマンスが有意に向上する可能性が示された。カフェインやL-テアニンを単独で摂取した場合もショットの精度は向上する可能性があるが、併用した場合に比べて影響は小さかった。

文献情報

原題のタイトルは、「Effect of single or combined caffeine and L-Theanine supplementation on shooting and cognitive performance in elite curling athletes: a double-blind, placebo-controlled study」。〔Int Soc Sports Nutr. 2023 Dec;20(1):2267536〕
原文はこちら(Informa UK)

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