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米国と英国のレストランメニュー、どちらが「非健康的」? 大手チェーン店の栄養素を比較

米国と英国の大手レストランチェーン138社、4万点以上のメニューのエネルギー量や栄養素含有量を調査して比較した研究結果を紹介する。全体として、米国のほうがより非健康的な傾向があるものの、両国ともに、公衆衛生上の懸念のある栄養成分が過剰に含まれているメニューが95%以上を占めているという。

米国と英国のレストランメニュー、どちらが「非健康的」? 大手チェーン店の栄養素を比較

外食の特徴

世界的な傾向として、食事を家庭内で調理する頻度が低下するとともに外食の機会が増加している。本研究が実施された米国では2020年時点において食費の45.2%が外食に費やされ、英国では2018~19年の調査で31.0%と報告されている。ちなみに日本では、厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」において、外食を週1回以上利用している人の割合は、男性41.6%、女性26.7%であり、若年者層ほど高値であり、20~30歳代の男性は60%以上と報告されている。

外食メニューの特徴として、エネルギー密度が高いわりに栄養価は低いことが挙げられる。例えば、米国心臓病協会(American Heart Association;AHA)の調査によると、米国のレストランメニューのうち、AHAが定める7項目(エネルギー、脂質、飽和脂肪、トランス脂肪酸、コレステロール、ナトリウム、タンパク質、食物繊維)の基準に適合していたメニューは8%であり、英国のレストランでも9%に過ぎないとの報告がある。ただし、レストランメニューの国際比較はあまりなされておらず、前記以外にはファストフード店のハンバーガー(ビックマック)が米国では1,054kcal/100g、英国では958kcal/100gだとする報告がみられるものの、レストランメニューを網羅的に調査した研究は存在しない。

国が異なれば、外食頻度を含む食習慣が異なり、疾病構造も異なる。疾病構造との差異を端的に表すデータとして、米国成人における肥満有病率は2018年時点で42%であるのに対して、英国では28%にとどまっている(日本は男性33.0%、女性22.3%)。

今回紹介する論文の研究は、以上を背景として実施された。

米国と英国の138社、4万点以上のメニューを比較

この研究は、2018年時点で米国および英国における、各国の総販売量上位100社に入る大手レストランチェーンを対象に実施された。それらの企業のサイトを確認し、提供しているメニューのエネルギー量・栄養素量が公開されている企業を抽出。米国96社、英国の42社が、それらの情報を公開しており、メニュー数は米国が計3万120点、英国は計1万785点、合計4万902点となった。

傾向として、米国は飲み物のメニューが占める割合が高く、成人対象メニューの30.5%、子ども専用メニューの40.5%が飲み物だった。英国でのそれらの割合は21.9%、3.9%だった。

成人対象メニューの比較

まず、成人対象メニューを比較すると、1品あたりの平均エネルギー量、脂質、飽和脂肪、添加糖については、米国のほうが有意に高値だった(いずれもp<0.05)。詳細は、エネルギー量は米国が438.6kcal、英国が392.9kcal、脂質は同順に20.1g、16.9g、飽和脂肪は7.6g、6.4g、添加糖は20.7g、17.5g。炭水化物、タンパク質、ナトリウムには有意差はなかった。

感度分析として、米国と英国の双方で営業しているレストランチェーンのメニューのみを比較したところ、ほぼ同様の結果が得られた。

子ども専用メニューの比較

次に、子ども専用のメニューを比較すると、1品あたりの平均エネルギー量、脂質、飽和脂肪が、米国のほうが有意に多いことは成人対象メニューと同じであり(脂質はp<0.001。その他はp<0.05)、さらにナトリウム量にも有意差がみられ(p<0.001)、いずれも米国のほうが高値だった。ただし、添加糖については成人対象メニューとは異なり、両国間に有意差がなかった。

有意差のみられた項目の詳細は以下のとおり。エネルギー量は米国が248.1kcal、英国が204.4kcal、脂質は同順に10.6g、6.7g、飽和脂肪は3.7g、2.5g、ナトリウムは399.5mg、218.4mg。

公衆衛生上の懸念のある栄養成分が過剰に含まれているメニューの比較

続いて、公衆衛生上の懸念のある栄養成分が過剰に含まれているメニューの比較を行った。公衆衛生上の懸念のある栄養成分とその含有量は、パン・アメリカン保健機関(PAHO)の以下の定義に基づいて評価した。脂質がエネルギー比30%以上、飽和脂肪がエネルギー比10%以上、添加糖がエネルギー比10%以上、ナトリウムが1mg/kcal以上。

その結果、米国のメニューの95.8%、英国のメニューの96.8%が、上記4成分のいずれか一つ以上が超過していた。各成分別にみた、上記の範囲を超過しているメニューの割合は以下のとおり。

脂質は米国の成人メニューでは57.3%、子どもメニューでは44.0%、英国の成人メニューは67.2%、子どもメニューは41.5%がPAHOの基準値以上。以下、成人メニュー、子どもメニューの順に、飽和脂肪は米国が54.1%、40.0%、英国は60.9%、39.1%、添加糖は米国42.7%、51.3%、英国46.8%、46.7%、ナトリウムは米国63.9%、英国58.6%、43.8%がPAHOの基準を超過していた。

著者は、「我々の研究結果は、レストランメニューに改善の余地があり、栄養素量などをモニタリングするための基準を設ける必要のあることを示している」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Differences in energy and nutrient content of menu items served by large chain restaurants in the USA and the UK in 2018」。〔Public Health Nutr. 2022 Jun 1;25(10):1-9〕
原文はこちら(Cambridge University Press)

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