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運動は新型コロナ罹患リスクや重症化・死亡リスクを低下させることが明らかに

身体活動量と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患や重症化・死亡リスクとの関連を検討したこれまでの研究報告を対象とする、システマティックレビューとメタ解析の結果が報告された。罹患リスクへの影響は一貫性が十分でないようだが、入院や死亡リスクに関しては、有意な関連が明らかにされた。

運動は新型コロナ罹患リスクや重症化・死亡リスクを低下させることがメタ解析で明らかに

スポーツや運動はCOVID-19リスクを下げるのか?

COVID-19パンデミックが発生して約4年となる。当初は極めて恐れられたCOVID-19だが、治療薬とワクチンの普及、変異による弱毒化、そして、リスクに関連する因子が徐々に明確になり有効な対策を立てやすくなったことで、それほど恐れられなくなった。とは言え、いまだ死亡につながることのある侮れない感染症である。

COVID-19リスクを下げる可能性のある因子の一つとして、スポーツ栄養という切り口からは、ビタミンDおよび身体活動の有用性が、パンデミックの比較的早い段階から指摘されていた。ビタミンDについては既にシステマティックレビューの報告もあるが、身体活動とCOVID-19リスクとの関連については、今回取り上げる論文によると、そのような報告がないという。

また、ビタミンDも身体活動量も、屋外にいる時間が長いほど効率よく高められるが、パンデミックの状況では屋外での活動が制限されるため、仮にそれらが有効な予防法であることが確認されたなら、なんらかの対策を構築する必要が生じる。以上を背景として本論文の著者らは、このトピックに関するシステマティックレビューとメタ解析を実施した。

身体活動を行っていることが、入院や死亡のリスクの低さや回復の速さと関連

システマティックレビューとメタ解析のガイドライン(PRISMA)に則して、Web of Sciences、PubMed、Scopusなどの文献データベースを用い、2019年12月~2021年11月に収載された論文を対象として、身体活動、運動、身体的不活動、座位行動、ライフスタイル、スポーツ、COVID-19、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)などのキーワードを用いて検索した。観察研究、横断研究、縦断研究、症例対照研究、ケースシリーズなどは適格基準に含めた一方、定性的研究、レビュー、総説、論説は除外した。

一次検索で6,485報がヒットし、重複削除により3,332報となり、これを2名の研究者が独立してスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は3人目の研究者を含む討議により解決した。67報を全文精査の対象とし、最終的に27報を定性的な解析対象とし、メタ解析に必要なデータが十分にある場合はメタ解析を施行した。

身体活動との関連が解析された項目は、COVID-19の罹患、罹患した場合の入院リスク、死亡リスク、および回復や重症度など。

身体活動とCOVID-19罹患リスク

身体活動とCOVID-19罹患リスクとの関連は、12件の研究報告が抽出された。このトピックではメタ解析は行われていない。

週に5回を超える身体活動を行うと、COVID-19罹患リスクが高まることを示唆する報告が1報あり、反対に座位行動がリスク因子だとする報告が複数存在した。また、運動量(MET-分/週)が多いほどリスクが低下するという報告、十分な身体活動(有酸素運動や筋肉強化運動)を行っている人とそうでない人との比較では、前者でリスクが低い(2.6 vs 3.1%)とする報告など、身体活動を支持する報告が多かった。しかし、中~高強度運動や総身体活動レベルは、罹患リスクと相関関係がないといった、有意な関連の存在を否定するものも認められた。

身体活動とCOVID-19による入院リスク

身体活動とCOVID-19罹患時の入院リスクとの関連については7件の研究報告が抽出され、メタ解析が行われている。

7件中6件は身体活動を行っている場合の入院オッズ比が1を下回り、かつ、そのうちの4件は95%信頼区間が1を跨がず有意だったが、2件は95%信頼区間の上限が1を超え非有意だった。また、他の1件はオッズ比が1を超過していたが、95%信頼区間が1を跨いでおり非有意だった。

メタ解析の結果はOR0.54(95%CI;0.49~0.60)であり、身体活動を行っている対象ではCOVID-19罹患時の入院リスクが有意に低いことが示された。ただしI2統計量が81.7%であり、データの異質性が大きかった。

身体活動とCOVID-19による死亡リスク

身体活動とCOVID-19に伴う死亡リスクとの関連については11件の研究報告が抽出され、その定性的な解析に加えて、データの統合が可能な5件の研究を用いたメタ解析も行われている。ここではメタ解析の結果のみを紹介する。

5件の研究報告はすべて身体活動を行っている場合の死亡オッズ比が1を下回り、かつ1件を除いて95%信頼区間の上限も1未満であり有意だった。メタ解析の結果はOR0.61(95%CI;0.50~0.75)であり、身体活動を行っている対象ではCOVID-19に伴う死亡リスクが有意に低いことが示された。I2統計量は45.8%であり、データの異質性は中程度だった。

身体活動とCOVID-19罹患時の重症化、回復などとの関連

7件の研究が、身体活動とCOVID-19罹患時の重症化リスクや回復の迅速さなどとの関連を検討していた。ある研究では、習慣的に身体活動を行っていた患者では、罹患後の回復が2.7倍早くなると指摘していた。別の研究でも、METが低いと入院期間が長くなることを示唆していた。一方、身体活動量と入院期間、ICU入室リスク、人工呼吸器管理の必要性との間に関連性は検出されなかったという報告もみられた。

著者らは、「十分な身体活動を行っていると、COVID-19に罹患した際の入院や死亡のリスクが低下する可能性がある。パンデミック中に身体活動を増やすプログラムを開発することが、適切な重症化予防対策となるのではないか」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Association between physical activity and risk of COVID-19 infection or clinical outcomes of the patients with COVID-19; A systematic review and meta-analysis」。〔J Prev Med Hyg. 2023 Aug 1;64(2):E123-E136〕
原文はこちら(Pacini Editore Srl)

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