白身肉の摂取とメタボ、高血圧、糖尿病など健康リスクとの関連を調査 前向き研究のレビュー
赤身肉の摂取は心血管代謝疾患リスクを押し上げるとされているのとは反対に、白身肉の摂取は健康アウトカムを改善する可能性を示唆するレビュー論文が2022年に報告されている。やや古い情報だが、白身肉に着目した数少ない研究として紹介する。
白身肉の摂取と健康との関連を調べた研究は少ない
植物性食品ベースの食生活がからだに良いことは広く知られているが、その一方で「食習慣の欧米化」と表現される変化が世界レベルで進行しており、肉の消費量が増大している。2030年には、アジアやアフリカの一部を除き、1人1日あたりの肉類の摂取量が165g以上になるとの予想があり、これは世界保健機関(World Health Organization;WHO)が目安として示している、調理後の重量で週あたり350~500gという値を大きく超過する。
肉類の過剰摂取と健康リスクとの関連は、これまで主に赤身肉や加工肉についての研究が行われてきており、心血管代謝疾患のリスクを上昇させることが示されている。それに対して、脂身の少ない白身肉の摂取量と健康リスクとの関連については研究報告が少なく、エビデンスが確立していない。
2010年以降に公表された研究報告を対象として検索
この研究は、システマティックレビューとメタアナリシスのガイドライン(PRISMA)に則して実施された。文献検索にはPubMedを用い、2010年1月1日~2022年11月1日の間に収載された、白身肉と健康アウトカムとの関連を健康な成人対象に前向きで調査した、英語で執筆されている論文を抽出した。検索キーワードとして、白身肉、鶏肉、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、高中性脂肪血症、非アルコール性脂肪性肝疾患、メタボリックシンドロームなどを用いた。
除外基準は、横断研究、後方視的研究、症例対照研究などの前向きでないデザインでの研究、総説、レビュー、メタ解析、エディトリアル、英語以外の論文、2010年より前に発表された論文、非成人または心血管代謝疾患の既往およびそのリスク因子を有する成人での研究など。
一次検索で1,915報がヒットし、上記の適格・除外条件に照らし合わせて464報に絞り込み、これを2人の研究者がタイトルと要約に基づきスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は3人目の研究者が解決した。21報が全文精査の対象となり、最終的に13件の研究報告が適格と判断された。なお、それらの論文の参考文献のハンドサーチも行ったが、追加すべき報告は見つからなかった。
健康アウトカム別にみた解析結果
13件の研究はすべて心血管代謝疾患またはそのリスク因子をもたない成人を対象としたものであり、米国から5件、アジアから5件、欧州から3件報告されていた。米国からの5件には、看護師対象の「Nurses' Health Study(NHS)」、およびその次世代での看護師対象研究である「NHS II」、医療従事者対象の「Health Professionals' Follow-Up Study(HPFS)」が含まれていた。13件中7件は2型糖尿病との関連を調査し、高血圧、体重、メタボリックシンドローム(MetS)との関連を調べた研究が各2件だった。
研究参加者は1,126~46万1,036人の範囲で、1件のみ男性の割合が高かったが(73%)、他はすべて女性の割合が高かった。追跡期間は2~24年の範囲だった。
2型糖尿病リスクとの関連
白身魚の摂取量と2型糖尿病のリスクを調査した7件の研究のうち4件は有意な関連はないとし、2件の研究は摂取量とリスクが正相関すると結論していた。後者のうちの一つは、家禽の摂取量の第5分位群(摂取量の多い上位20%)は第1五分位群(摂取量の少ない下位20%)に比較し2型糖尿病のリスクが23~30%高いとし(男性はHR1.30〈95%CI;1.17~1.44〉、女性はHR1.23〈同1.10~1.30〉)、他の研究は家禽摂取量の第4四分位群(摂取量の上位25%)は第1四分位群(下位25%)に比較しリスクが15%高いと報告していた(HR1.15〈1.06~1.24〉、傾向性p=0.004)。
一方、赤身肉を白身肉に替えて摂取すると2型糖尿病リスクが低下するとする研究報告が2件存在した。ある研究では、1週間あたり150gの加工赤身肉の摂取を鶏肉に置き換えると2型糖尿病リスクが4%低下するとしていた(HR0.96〈0.93~0.99〉)。
高血圧リスクとの関連
高血圧のリスクに関する2件の研究のうち、1件は関連性を認めないと結論づけ、別の1件は正の関連があると結論づけていた。後者では摂取量の第3三分位群(上位33%)は第1三分位群(下位33%)に比較し22%ハイリスクとしていた(HR1.22〈1.12~1.34〉、傾向性p<0.001)。ただし、この研究において女性のみのサブグループ解析では、この関連が非有意だった。
体重との関連
体重管理に関する2件の研究のうち1件は、摂取量と体重増加という正の関連を報告し、他の1件は皮付きの鶏肉では同様の正相関が観察されるものの、皮のない鶏肉では逆相関が認められた。
メタボリックシンドローム(MetS)リスクとの関連
MetSリスクに関する2件の研究のうち1件は、べースラインでMetSでない成人6,504人を対象とする中央値約11年の前向き研究であり、家禽摂取頻度が多いことは多重調整モデルにおいてMetSリスクと逆相関していた(OR0.78〈0.72~0.85〉)。
別の1件は1,126人を対象とする2年間の追跡で、未加工家禽の摂取量が中性脂肪値と逆相関すると報告していた。空腹時血糖値や血圧、HDL-C、腹囲とは関連を認めなかった。
これらを総括して論文の結論は、「未加工の白身肉の摂取は、心血管代謝リスク因子に対して潜在的に有益であることを示唆するデータが観察された。食肉と心血管代謝アウトカムとの関連を調査する今後の研究では、白身肉の摂取量を把握する必要があるだろう。未加工の脂肪の少ない白身肉は赤身肉の優れた代替品であり、高品質のタンパク質とビタミンの主要な供給源と言える」と記されている。
文献情報
原題のタイトルは、「White Meat Consumption and Cardiometabolic Risk Factors: A Review of Recent Prospective Cohort Studies」。〔Nutrients. 2022 Dec 7;14(24):5213〕
原文はこちら(MDPI)