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「チャンスは1回だけ」独立開業の管理栄養士による肥満治療における栄養指導

医療機関などに所属せず、独立開業している管理栄養士を対象に、肥満症患者の栄養指導をどのように行っているのかを調査したレポートを紹介する。オーストラリアで実施された研究で、2022年の報告。論文のタイトルには、“Dietitians May Only Have One Chance”とあり、1機会の栄養指導で確実な効果を求められる現状が述べられている。

「チャンスは1回だけ」独立開業の管理栄養士による肥満治療における栄養指導

肥満の蔓延に対して独立開業の管理栄養士は、どう立ち向かう?

肥満が世界的に蔓延していることはよく知られている。この研究が行われたオーストラリアでは、2017~18年の国民健康調査で、成人の3分の2(67.0%)が過体重または肥満であることが明らかにされている。肥満のみでなく、肥満に関連する何らかの合併症を発症している場合は、公的医療保険による医療介入が、同国でも行われる。肥満に対する医療介入の手段として、薬剤や手術もあるものの、大前提として食事・栄養指導が欠かせないことは言うまでもない。同国では、医師が必要と認めた場合、管理栄養士による栄養指導や運動生理学者による運動指導などが保険診療下で実施される。その際、栄養指導については医療機関に所属している管理栄養士のみでなく、独立開業している管理栄養士が担うこともある。

オーストラリアでは、本論文によると管理栄養士が5,360人いて、そのうち1,944人が独立開業しているという。独立開業している管理栄養士は地域社会に密着した立場でヘルスケアの第一線を担っており、組織に所属しているスタッフに比べて、より確実な介入効果を期待される可能性が想定される。

一方、肥満に対する非外科的かつ非薬理学的な介入方法で最も有効性の高い手法は、シェイクやスープなどの代替食(meal replacement products;MRP)を用い、医師の管理下で行われる超低エネルギー食(very low energy diet;VLED)であるとされる。そのエビデンスとして例えば、肥満者に対する栄養介入としてVLEDを用いた場合と通常の食事指導をした場合を比較した研究のレビューの結果、10%以上の減量を達成した割合が前者で2.6倍(42 vs 16%)だったという報告がある。また、オーストラリア栄養士会のガイドラインでも、レベルAのエビデンスがあると位置づけている。

しかし、それにもかかわらず、臨床においてにVLEDを最初から指導することは多くない。その理由として、安全性やリバウンドの懸念、頻繁なモニタリングが必要とされることなどが関係しているのではないかとの指摘がある。

これら諸点を背景として、本論文の研究者らは、独立開業している管理栄養士の肥満患者に対する栄養指導の実際を、VLEDに重点を置きながら調査する定性的研究を行った。

20人の独立開業管理栄養士にインタビュー調査

2018~19年にかけて、オンライン検索で連絡先が特定された現役の独立開業管理栄養士64人に対して、研究参加協力のメールを送信。そのうち31人が研究テーマに興味を示したが、11人は時間の調整がつかず、研究参加者は20人となった。

調査手法は半構造化インタビューであり、基本となる質問項目は管理栄養士、VLED指導の経験が豊富な研究者、および定性的研究の専門家によって作成され、インタビュアーは管理栄養士が担当した。インタビューは対面、zoom、電話のいずれかの方法で行われ、所要時間は45分~1時間50分の範囲だった。

20人の管理栄養士は大半が女性(男性は2人)で、独立後の経験年数は4~30年であり、全員が公的医療保険診療の下での肥満患者に対する栄養指導の経験を有していた。なお、全員が肥満のみを有する対象への指導経験は稀であり、通常は肥満関連合併症を有する患者への指導を行っていると回答した。これは、肥満のみでは保険が適用されないためと考えられる。

独立開業管理栄養士による肥満患者への栄養指導に関する四つのテーマ

インタビューの内容を分析した結果、このトピックに関連のあるテーマを以下の四つに集約可能であることが明らかになった。

四つのテーマとは、(1)好まれている介入モデルは患者中心のケア、(2)超低エネルギー食(VLED)は限られた条件下で優れた減量効果を発揮する、(3)効果的な食事療法の実践を妨げる構造的な障壁、(4)栄養指導の成功は、構造的な障壁を超えて、それ以上の取り組みを行うことが前提となる。

以下に一部を抜粋して要約する。

超低エネルギー食(VLED)は限られた条件下で優れた減量効果を発揮する

超低エネルギー食(VLED)を指導に用いるケースとして、管理栄養士自身の提案で開始する以外に、紹介元の医師からVLEDによる介入を指定される、患者から求められるというケースが報告された。VLEDを積極的に用いる一般的な理由は、減量が達成され、それによってモチベーションを高められるためだった。

一方、VLEDの指導を成功させる条件として、指導の経験を積んでいることが重要であり、また指導開始後の長期的な関与が必要であることが指摘され、それらがそろっていない場合は有効性が乏しく、リバウンドのリスクが生じると報告された。

効果的な食事療法の実践を妨げる構造的な障壁

保険診療の下で肥満患者への栄養指導を成功させるうえでの障壁として、リベート(対価)の不足、指導に充てられる時間の不足、指導可能な回数の不足という3点が挙げられた。

これらのうち最初の対価の不足に関しては、管理栄養士が指導の手を抜くなどの質の低下につながる可能性があるとの指摘があった。2番目の時間の不足に関しては、「保険診療での指導時間は20分だが、それで何ができるというのだろうか(経験年数10年の管理栄養士)」などの声が聞かれた。3番目の指導回数の不足については、「数回の指導が終了すると、その人が次の年も指導対象となり紹介を受けるまでは再び会うきとはなく、再会したとしてもそれまでにその人は初めて会ったときの状態に戻っている。このようなことは介入の不成功と、指導する側のモチベーション低下を招く(前記とは別の経験年数10年の管理栄養士)」といった回答が得られた。

また、介入後の経過をモニタリングするうえで、臨床検査値を把握する必要がある場合も、管理栄養士から検査をオーダーすることは許されず、医師に検査オーダーを依頼しなければならないという問題も指摘された。「血糖値や血清脂質のデータを把握できなければ、たとえ体重減少が認められているとしても、それが健康状態に何らかの変化をもたらしているかどうかを判断することは困難だ。検査値を常時参照できるなら、素晴らしいことだ(経験年数4年の管理栄養士)」。

栄養指導の成功は、構造的な障壁を超えて、それ以上の取り組みを行うことが前提

栄養指導の成功体験として報告された最も明らかな結果は、保険診療ではカバーされない指導を患者個人が負担し長期間、治療を受けた患者で認められた。また、成功した成果の大部分は超低エネルギー食(VLED)で介入を開始し、その後、個別化された持続可能な方法を採用した場合だった。

論文の結論は、「独立開業している管理栄養士は、エビデンスに基づく栄養指導を地域住民に対して広く行えるという、恵まれた立場にある。しかし、効果的なケアへの公平なアクセスを提供するには、構造的な障壁に対処する必要がある」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「“Dietitians May Only Have One Chance”—The Realities of Treating Obesity in Private Practice in Australia」。〔Healthcare (Basel). 2022 Feb 21;10(2):404〕
原文はこちら(MDPI)

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