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ビタミンDレベルが高いのは? 屋外あるいは屋内での運動習慣、座位行動中心の3タイプを比較

何らかのスポーツを行っている人は、座位行動中心の生活スタイルの人に比べて体組成や血清脂質値が良好であり、かつ、屋外スポーツと屋内スポーツで比較すると屋外スポーツを行っている人のほうがビタミンDレベルが高いという有意差がみられるとする研究結果が、トルコから報告された。BMIについても有意差が認められたという。

ビタミンDレベルが高いのは? 屋外あるいは屋内での運動習慣、座位行動中心の3タイプを比較

人口の77%がビタミンD不足との報告もある

ビタミンDは骨代謝に影響を及ぼす微量栄養素として知られているが、近年ではそればかりでなく、ビタミンDの受容体が全身に発現しており、感染症や肥満、糖尿病、癌、および全死亡と関連のあることが明らかになり、注目度が上昇している。

例えば肥満に関しては、体脂肪の増加に伴いビタミンDレベルが低下し、これには増大した体積による血液の希釈が関与している可能性があること、肥満者のビタミンDレベルを保つのに必要とされる経口摂取量は非肥満者の2~3倍に上る可能性があること、体重に応じたビタミンDが摂取されるとインスリン抵抗性や炎症、高血圧、脂質異常症などの肥満関連の病態が改善される可能性のあることなどが報告されている。

また、ビタミンDはアスリートにも関連が深く、30nmol/L未満では筋力の低下が発生し、反対にビタミンDレベルが高いことはパフォーマンスが高いこと、疲労骨折の発生率が低いことと関連のあることが知られている。一方で、一般人口の約77%がビタミン不足の状態にあるというデータもあり、世界的規模での公衆衛生上の新たな課題となりつつある。

他のビタミンとは異なるビタミンDの特徴として、経口摂取される以外に皮膚の紫外線曝露によっても合成されるという経路のあることが挙げられる。肥満者は紫外線照射量の多い環境で外出する頻度が非肥満者に比べて低い可能性があり、そのこともビタミンDレベルの低下に関与している可能性がある。また、スポーツを行っている人は通常、肥満であることは少ないが、行っているスポーツが屋内競技か屋外競技かで、ビタミンDレベルに差のある可能性がある。

今回の論文の研究は、これらを背景として、屋外スポーツを行っている人、屋内スポーツを行っている人、およびスポーツを行っておらず座位行動の多い人という3群で、ビタミンDレベルやBMI、血清脂質などのパラメーターを横断的に比較している。

日焼け止めやビタミンDサプリの利用状況

研究は、トルコのヴァン・ユズンチュ・ユル大学の学生を対象に実施された。3群のうち2群は体育学部の学生で、他の1群は座位行動中心の生活パターンの学生。全群ともに何らかの慢性疾患のある学生は除外されている。各群30人ずつ計90人のうち男性が57.8%で、平均年齢は22.26±3.86歳。BMIは22.91±4.06、ウエスト/ヒップ比0.76±0.06。

性別での比較

結果について、まず全体を性別に2群に分けて比較すると、紫外線曝露量に影響する日焼け止めの利用率、およびビタミンDサプリメントの利用率に、以下のような有意差が認められた。

日焼け止めについては「常に使用」が女性13.2%、男性0%、「時々使用」が同順に42.1%、23.1%、「使用しない」が44.7%、76.9%で、女性の利用率が有意に高かった(p=0.002)。ビタミンDサプリについては「常に使用」が女性18.4%、男性26.9%、「時々使用」が同順に36.9%、11.5%、「使用しない」が44.7%、61.6%で、女性は使用しないか時々使用が多く、男性は使用しないか常に使用が多かった(p=0.01)。

一方、マルチビタミンなど、ビタミンD以外のサプリの利用率は、性別による有意差はなかった。

3群での比較

次に、前記の3群で日焼け止めおよびビタミンDサプリの利用率を比較したところ、以下のように、日焼け止め利用率については有意な群間差がみられ、ビタミンDサプリ利用率は有意差がなかった。

日焼け止めについては、屋外スポーツ群では「常に使用」が0%、「夏のみ使用」が26.7%、「使用しない」が73.3%、屋内スポーツ群では同順に6.7%、16.7%、76.7%、座位行動群では10.0%、50.0%、40.0%であり、スポーツを行っている群よりも座位行動群のほうが利用率が高く、分散分析の結果が有意だった(p=0.007)。ビタミンDサプリについては、「常に使用」が3群ともに23.3%で等しく、「時々使用」が屋内スポーツ群と座位行動群は26.7%、屋外スポーツ群は13.3%、「使用しない」が屋内スポーツ群と座位行動群は50.0%、屋外スポーツ群は63.3%であり、群間に有意差がなかった(p=0.68)。

ビタミンDはサプリよりも日光が重要?

続いて、25-ヒドロキシビタミンD(25-OHビタミンD〈25-OH VD〉)、BMI、血清脂質の群間差が解析された。

ビタミンDサプリの利用状況別の解析では、25-OH VDレベルに有意差なし

まず、ビタミンDサプリの利用状況と25-OH VDレベルとの関連をみると、高値であった群から順に、サプリを常に使用している群(28.98±2.79nmol/L)、時々使用している群(26.77±3.34nmol/L)、使用していない群(22.64±1.75 nmol/L)の順となった。ただし、統計的な有意差はなかった。また、各群の食品摂取頻度に差はなかった。

3群での比較では、25-OH VDレベルや BMI、血清脂質に有意差

次に、研究の主題である3群で比較した結果をみると、25-OH VDレベルについては、屋外スポーツ群が30.75±11.54nmol/L、屋内スポーツ群が21.59±7.04nmol/L、座位行動群が22.77±3.16nmol/Lであり、屋外スポーツ群は他の2群より有意に高値だった(p<0.004)。

BMIは同順に、21.03±2.94、23.51±3.31、24.06±5.22であり、屋外スポーツ群は他の2群より有意に低値だった(p<0.004)。ビタミンDサプリの利用の有無では、BMIに有意差はみられなかった。

総コレステロールは、150.63±6.09mg/dL、150.92±4.56mg/dL、169.61±6.57mg/dLであり、スポーツを行っている2群は座位行動群より有意に低値だった(それぞれp<0.02、p<0.03)。

著者らは本研究のサンプルサイズが比較的小さく、追試が求められるとしたうえで、「屋外でスポーツをすることが、太陽の恩恵をより多く受け、ビタミンDの合成に効果的かつ重要であることが示された。また、屋内でスポーツをする人やスポーツをしていない人に比べて、BMIが有意に低かった。健康的な生活を維持し、代謝性疾患を予防するために、屋外でのスポーツや身体活動が推奨されるべきであろう」とまとめている。

なお、本研究では前述のように、ビタミンDサプリ摂取状況により25-OH VDレベルに有意差は認められていないが、サプリおよび食品として摂取されていたビタミンDが定量的に把握されていない点は、限界点として指摘可能かもしれない。

文献情報

原題のタイトルは、「Comparison of individuals doing sports in indoor and outdoor areas and sedentary individuals in terms of vitamin D, body fat content, and obesity values」。〔Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2023 Aug;27(16):7401-7408〕
原文はこちら(European Review for Medical and Pharmacological Sciences)

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