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小児期に複数のスポーツを経験することで「協調運動」が養われる? 8歳前後の子ども180人を比較

水泳のみを行っている子どもと、複数のスポーツを行っている子どもとの「協調運動」(motor coordination)を比較した研究結果が報告された。後者の子どもの協調運動のほうが有意に優れているという。著者らは、低年齢の子どもに対しては一つのスポーツのみに特化するよりも、さまざまなスポーツを行うことを奨励すべきだと述べている。セルビア、クロアチアの研究者による報告。

小児期に複数のスポーツを経験することで「協調運動」機能が養われる? 8歳前後の子ども180人を比較

早期の専門化は有利? 不利?

全身の筋肉を協調させて体幹や四肢などの関節を滑らかに動かすことなどの「協調運動」(motor coordination)は、運動能力と日常生活動作の基本であり、小児期に発達するさまざまな能力の中で最も重要な能力の一つと考えられている。協調運動はスポーツなどの身体活動を行うことで発達する。

一方、子どもに何か秀でた特技を身に着けさせようとする場合に、小さい頃からそれに特化したトレーニングを行うことがあり、「早期専門化」と呼ばれる。スポーツにおいても早期専門化が行われることがあるが、そのことによって協調運動の発達に何らかの影響が生じる可能性が考えられる。今回紹介する論文の著者らは、水泳に特化している子どもと、多くのスポーツを行っている子ども、およびスポーツを行っていない子どもという3群で、この点について横断的な比較を行った。

水泳群、マルチスポーツ群、スポーツを行っていない群で協調運動を比較

研究参加者は180人で年齢8.25±0.89歳、男児51.7%。ふだんの身体活動状況によって以下の3群に分けられた。

一つ目のグループは、学校での体育授業以外に全く運動を行っていない「非スポーツ群」の58人(8.89±0.69歳、男児48.3%)。二つ目のグループは、水泳を1年以上行っている「水泳群」の59人(8.39±0.91歳、男児55.9%)。3番目のグループは、過去1年以上にわたり水泳以外の複数のスポーツやトレーニングを行っている「マルチスポーツ群」の63人(8.18±0.68歳、男児50.8%)。マルチスポーツ群では、サッカー、バスケットボール、バレーボールなどの競技と、筋力トレーニング、障害物レースなどのアクティビティーが行われていた。

協調運動の評価にはKTKテストを用いた。KTKテストの評価項目は、平均台の上を後ろ向きに歩く(歩行後退)、片足での縦方向のジャンプ、両足での横方向のジャンプ、障害物を避けながらの横方向への移動の四つで、ドイツ人のサンプルで示された年齢・性別のデータを参照して「motor quotient;MQ」としてスコア化し比較した。

マルチスポーツ群、水泳群の順に協調運動が高く、非スポーツ群は最も低い

論文には、KTKテストの4項目を個々に比較した結果と、それらの総合スコアの比較した結果が示されている。まずは4項目を個々に比較した結果をみてみよう。

水泳群とマルチスポーツ群との間にジャンプ力の有意差

全体的な傾向として、スポーツを行っている2群(水泳群とマルチスポーツ群)は、非スポーツ群に比べてMQスコアが高かった。水泳群では歩行後退と横への移動という2項目、マルチスポーツ群では4項目すべてが非スポーツ群より有意に優れていた。また、マルチスポーツ群と水泳群との間に、縦方向へのジャンプと横方向へのジャンプという2項目で有意差が認められ、マルチスポーツ群のほうが優れていた。詳細は以下の通りで、4項目すべて、分散が有意だった(すべてp<0.001)。

歩行後退

非スポーツ群33.0±13.9点、水泳群44.0±10.9点、マルチスポーツ群42.9±11.5点。水泳群とマルチスポーツ群は非スポーツ群に対して有意差があり、水泳群とマルチスポーツ群とは有意差なし。

縦方向へのジャンプ

非スポーツ群38.4±13.8点、水泳群40.7±10.6点、マルチスポーツ群46.5±11.6点。マルチスポーツ群は非スポーツ群および水泳群に対して有意差があり、水泳群は非スポーツ群と有意差なし。

横方向へのジャンプ

非スポーツ群51.5±11.6点、水泳群53.7±11.1点、マルチスポーツ群63.8±14.5点。マルチスポーツ群は非スポーツ群および水泳群に対して有意差があり、水泳群は非スポーツ群と有意差なし。

障害物回避を伴う横への移動

非スポーツ群34.5±4.7点、水泳群40.4±5.8点、マルチスポーツ群42.6±7.5点。水泳群とマルチスポーツ群は非スポーツ群に対して有意差あり、水泳群とマルチスポーツ群とは有意差なし。

総MQスコアもマルチスポーツ群が水泳群より優れるという結果

総MQスコアにも3群間の有意差が認められた。

まず、マルチスポーツ群と非スポーツ群との差は19.8点(95%CI;13.1848~26.4152)であり、マルチスポーツ群と水泳群との差は12.8点(同6.3456~19.2544)であって、いずれも有意だった(いずれもp=0.001)。

著者らは、本研究が横断研究であるため因果関係の考察は制限されること、解析対象児童のトレーニング量が評価されていないことなどの限界点を挙げたうえで、「我々の研究結果は、子どもの協調運動スキルの発達にとって、マルチスポーツが重要であることを強調している。したがって、低年齢の子供たち(10歳未満)が、1種類のスポーツだけに参加したり、またはスポーツを行わないというのではなく、さまざまなスポーツに参加するように、保護者、教師、コーチが奨励することが非常に重要と言える」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Motor Coordination in Children: A Comparison between Children Engaged in Multisport Activities and Swimming」。〔Sports (Basel). 2023 Jul 25;11(8):139〕
原文はこちら(MDPI)

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