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サルコペニア肥満への栄養・運動介入のエビデンス アンブレラレビューの報告

サルコペニア肥満への栄養や運動による介入効果を検討した研究のメタ解析を統合した、アンブレラレビュー論文が報告された。レジスタンス運動の有用性が確認された一方、肥満の解消を意図した低カロリー食は、この病態に対する有用性がみられなかったという。

サルコペニア肥満への栄養・運動介入のエビデンス アンブレラレビューの報告

世界の高齢者の10人に1人が該当するとされるサルコペニア肥満

サルコペニア肥満は加齢などにより、筋肉量や筋力の低下と、脂肪蓄積が並行して進行した結果として生じる。現在、世界の高齢者人口の11%がサルコペニア肥満に該当するとの報告がある。

サルコペニアや肥満はそれら単独でも健康リスクを高めるが、サルコペニア肥満はよりハイリスクとなる可能性が指摘されている。例えば、サルコペニアまたは肥満が単独で存在している場合に比べて障害の発生リスクが2.5倍に上るという報告がある。また、転倒、心血管イベント、介護施設への入所、早期死亡のリスク上昇も報告されている。さらにサルコペニア肥満は、脂肪が過剰蓄積しているにもかかわらず筋肉量が少ないため、しばしば外見上は肥満と見えず、見逃されやすい。

サルコペニア肥満に対する介入は、肥満に伴う心血管疾患のリスク軽減と、サルコペニアに伴う筋骨格系疾患のリスク軽減、および、両者が関与する代謝性疾患のリスク軽減を目指すことになる。つまり、肥満の解消を目指しながら、同時に筋肉量を増やす必要がある。これには、過不足のない栄養素の摂取と、レジスタンストレーニングが不可欠と考えられる。こと、栄養戦略については、過剰摂取は肥満をさらに助長し、過少摂取はサルコペニアをさらに助長することになりかねない。

サルコペニア肥満に対する栄養介入や運動介入の効果を検討した研究の結果が、既に複数報告されてきている。ただし、体系的なレビューは少なく、またそれらの総括はなされて行われていない。これを背景として、今回紹介する論文の著者らは、このトピックスに関するシステマティックレビューとメタ解析の報告のアンブレラレビューを行った。

アンブレラレビューの手順について

システマティックレビューとメタ解析のための優先報告項目(PRISMA)ガイドラインに従い、Medline、PubMed、EMBASEなどの文献データベースを用いて文献検索を実行。サルコペニア肥満は比較的新しい研究課題であるため、過去5年以内に発表されたものに限定した。また、研究対象者の年齢を45歳以上とした。言語は制限しなかった。この文献データベースを用いた渉猟のほかに、Google Scholarで「サルコペニア肥満のシステマティックレビュー」というキーワードで検索し、最初の5ページに表示された情報もスクリーニングの対象とした。

文献検索により51報がヒットし4件の重複を削除後に、2名の研究者が独立してタイトルと要約に基づくスクリーニングを実施。その後、全文精査を行って採否を検討。意見の不一致は3人目の研究者との討議により解決し、2報を適格と判断した。そのほかにハンドサーチにより2報を適格とし、計4報をレビューの対象として特定した。

レジスタンストレーニングのエビデンスが比較的強固

4件の研究はすべてサルコペニア肥満と診断された人を対象にしたシステマティックレビューだった。運動介入と栄養介入をあわせて、計10パターンでの介入が行われていた。

運動介入には、レジスタンストレーニング、有酸素トレーニング、全身への電気筋刺激(whole-body electromyostimulation;WB-EMS)を併用したトレーニング、レジスタンストレーニングと有酸素トレーニング併用の混合トレーニングが用いられていた。栄養介入は、プロテイン補給、低カロリー食と高タンパク食の組み合わせが行われていた。また、運動介入と栄養介入を併用するパターンとしては、WB-EMSとプロテイン補給、混合トレーニングとプロテイン補給、レジスタンストレーニングとプロテイン補給が行われていた。

論文では、それぞれのパターンによる介入のさまざまな評価指標への影響が詳細に述べられている。ここでは一部をピックアップして紹介する。

運動介入による効果

レジスタンストレーニング

レジスタンストレーニングによる運動介入で、歩行速度と下肢筋力への影響を評価した研究のすべてが、有意な改善が観察されたと報告していた。歩行速度に対するレジスタンストレーニングの効果は3件で研究されており、そのうち2件の介入効果は0.14~0.17m/秒の範囲であって、エビデンスの確実性(Certainty of Evidence;CoE)は低かった。下肢筋力の研究は1件のみであり、9.97kgの向上を報告していた(エビデンスの確実性〈CoE〉は低)。

また、レジスタンストレーニングにより体脂肪率が-2.67~-1.53%の範囲で有意に低下することが報告されていた(CoEは比重に低い~中等度)。ただし、非有意とする研究報告も存在した。

その他のトレーニング

有酸素トレーニングによって有意な改善が観察された唯一の指標は、総体脂肪量であり、かつ、2件のレビューのうちの1件のみだった(-5.2kg、CoEは非常に低い)。混合トレーニングでは、体脂肪について、3件のレビューのうち1件のみが有意な改善を認めたと報告していた(-2.05%、CoEは非常に低い)。

栄養介入の効果

栄養介入では、2件のレビューがプロテイン補給の効果を分析していたが、体脂肪率、総体脂肪量、総筋肉量、骨格筋量指数(skeletal muscle mass index;SMMI)、握力のいずれについても、有意な影響は観察されないと結論していた(CoEは非常に低い~中等度)。

また、低カロリー高タンパク食による介入効果が1件のレビューで検討されていて、総体脂肪量が-0.82kgの有意な減少がみられたと報告されていた(CoEは非常に低い)。しかし、その他の指標には有意な変化がみなれないという。

栄養介入の効果は今後の研究に期待

上記のほかに、運動と栄養への並行介入を行った研究のレビューの総括に続き、論文の結論として以下のように述べられている。

「サルコペニア肥満への栄養と運動介入を検討したシステマティックレビューとメタ解析は4件しか抽出されなかった。レジスタンストレーニングは最も多く用いられた介入であり、筋力と身体パフォーマンスの向上に最も有望な結果が示された。一方、カロリー制限、および運動介入の有無にかかわらずプロテイン補給などの栄養介入に関しては、有効性を示すエビデンスはほとんど存在していない。とはいえ、分析のためのデータ自体が限られており、今後より質の高い研究を実施することで、これらの結果が変わる可能性がある」。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Nutrition and Exercise Interventions on Persons with Sarcopenic Obesity: An Umbrella Review of Meta-Analyses of Randomised Controlled Trials」。〔Curr Obes Rep. 2023 May 30〕
原文はこちら(Springer Nature)

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