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子どもたちの食事・栄養に対する父親の影響は? 今後の研究のための考察

「お父さんはどこに?(Where is the father?)」という疑問が論文タイトルの最初に掲げられている報告を紹介する。この疑問に続くタイトルは「Challenges and solutions to the inclusion of fathers in child feeding and nutrition research」であり、つまり、子どもたちの食事や栄養に関する研究に、父親にも加わってもらうための課題と解決策を考察したレビュー論文だ。

子どもたちの食事・栄養に対する父親の影響は? 今後の研究のための考察

子どもの食習慣と保護者との関連の研究の大半は、母親のみが対象

子どもの食習慣は保護者の影響を強く受けることが知られている。そのため小児肥満などへの治療介入または予防法を探るための研究では、しばしば保護者も研究のターゲットとなる。ただし、大半は保護者のうちの母親のみが研究に組み込まれていて、父親の影響が考慮されていない。無作為化比較試験のシステマティックレビューでは、小児肥満に関する研究のうち、父親か母親のどちらかの参加が必要なデザインの研究の中で、父親の参加は全体の6%に過ぎなかったという。

このような状況を背景として、この論文の著者らは、以下の三つの視点からこの問題の考察を繰り広げている。一つ目は、まず、(1)最近の調査報告に基づき、子どもの食事と家族の健康的な食行動のための父親の参加の重要性を強調すること、次に、(2)この課題に父親が参加することの障壁について明らかにすること、最後に、(3)将来の研究のための推奨事項をまとめること。本稿では、これらのうち、(1)と(2)の要旨を紹介する。

(1)子どもの栄養や健康に関する取り組みに、父親が参加することがなぜ重要か?

子どもの食事に関する研究のほとんどは、母親を対象に実施されているにもかかわらず、研究から得られた結果は、両親の態度や考え方を代表するものとして解析されている。母親と父親は異なる存在であるため、このような研究手法は問題と考えられる。

一部の研究のみ、子どもの食習慣に対する態度について、父親と母親に有意差はないとしており、その他の多くの研究は、父親のほうが強制的な手法、例えば何らかの食品を食べるように圧力をかけるといった手法を、より多く用いると報告している。さらなる研究が必要ではあるが、そのような手法は子どもの食行動に逆効果で悪影響を及ぼす可能性がある。

いくつかの研究から、父親のBMIや食品摂取量、食行動、および子育てのスキルが、子どもの体重や食品摂取量と関連があることが示されている。その関連は、母親の影響を除外した後でも有意だという。また、父親の野菜・果物の摂取量を増やすと子どもにもそのような変化が現れるとする無作為化比較試験の報告もある。

これらの知見からも、父親の役割を過小評価することが、小児肥満に対する家族ぐるみの介入の有効性を、限られたものと見なすことにつながりかねないということができる。

(2)父親が子どもの食事や栄養に関わることの障壁

なぜ、父親は子どもの食事と栄養の実践に関する研究に参加しないのだろうか。また、そのような傾向を、研究者はどのように捉えるべきだろうか。

父親を研究に含めることの躊躇

父親が子どもの食行動に関する研究に参加しない理由の一つは、父親が研究への参加に積極的に招かれていないためと考えられる。米国の300人以上の父親に、男性が女性よりも児童健康研究への参加が少ないと思う理由を尋ねたところ、80%が単純に「参加の意思を問われなかったからだ」と答えたという。これには、子どもに食事を与える主な責任を負っている存在は母親であるという一般的な解釈が根底にあると言える。研究者がすでに、子どもの発達や食行動における父親の役割を過小評価しているのではないか。

父親を参加させることが困難であるという実態も影響しているだろう。ある研究者は、子どもの食事に関する研究に父親を組み込もうとしない理由を尋ねられたとき、「成功の可能性がほとんどないのに、なぜそこに労力をつぎ込まなければならないのか?」と回答したという。確かに、父親はたとえ積極的な参加を促されたとしても、母親に比べて参加しようとしないことが少なくない。

積極的に誘われても父親は参加したがらない

子どもの食行動に関する研究に父親を参加させようとする場合、最初の課題は父親にアクセスする方法を見いだす必要があり、続いて父親に参加を「説得」する必要がありそうだ。

我々はかつて、研究参加に消極的な数人の父親を対象として、その理由を探る試みを行った。対象者の多くはブルーカラーだった。検討の結果、答の可能性の一つとして、彼らにとって研究に参加することは、彼らが「高い知識をもっている」と考えている研究者の管理下に置かれると捉えて不快感を抱くためではないかということだった。

また、父親は子どもの食行動については母親が「専門家」であると考える傾向があり、子どもの食行動に対する責任感や自己効力感が低いことも関係しているだろう。さらに、時間的な制約もあると考えられる。「オンラインなどでの参加なら可能」と述べた父親も存在することが報告されている。

ジェンダーイデオロギー

父親が子どもの食行動にかかわることに積極的でないことの理由の一部は、ジェンダーイデオロギーに根差している可能性がある。男性は、リスクを取ること、無敵であること、痛みに耐えることなどで特徴づけられるとする伝統的なアイデンティティーは、栄養問題に無関心であるという態度を説明できるかもしれない。また、父親の育児は母親のそれに比べて、子どもの自主性を重視し、ときに危険を冒すことを勧めるような接し方をする。

研究者が、子どもの摂食行動の研究から父親を除外することは、子どもの健康促進における男性の責任を軽視するという古くからの慣習を助長するものであるともいえる。我々は、今後の研究において積極的に父親を取り込もうとすることが、この課題の解決の重要なステップとなり得ると信じている。

文献情報

原題のタイトルは、「Where is the father? Challenges and solutions to the inclusion of fathers in child feeding and nutrition research」。〔BMC Public Health. 2023 Jun 20;23(1):1183〕
原文はこちら(Springer Nature)

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