伊サッカー「セリエA・B」所属選手500人以上の身長・体重・体組成をポジション別に比較
イタリアのサッカーリーグ、セリエAおよびBに所属しているサッカー選手の体重や身長、体組成を、ポジション別に比較した研究結果が報告された。キーパーとセンターフォワードの選手が身長と体重が最も高値であり、また他のポジションの選手に比べて筋肉質であるといった有意な違いが明らかになったという。
サッカーではポジションによって最適な体格が異なる
サッカーは断続的な運動負荷のかかるチームスポーツで、必要とされるスキルは複雑であり、ポジションによって生理学的要求が異なる。例えばゴールキーパーはフィールドプレイヤーより試合中の総走行距離が短く、かつ高速での走行(約20km/時以上)は総走行距離の10%未満にとどまる。また、セントラルミッドフィルダーはセンターバックよりも総走距離が長く高速での走行が多く、サイドバックととともにボール保持回数が多くてフルバックとともにVO2maxが最高値を示す。これらの相違から、ポジションごとに異なる体組成の特徴があるのは当然と考えられる。そのような特徴はサッカーの進化とともに変化している可能性がある。
この研究では、サッカーのプレーポジションによって体重や身長、体組成がどのように異なるかを検討するとともに、フィールドラインとゾーンで分類したうえで同様の検討が行われた。
プレーポジション、フィールドライン、ゾーン別の解析結果
対象は、イタリアのプロサッカーリーグ(セリエAおよびセリエB)の12クラブに所属する506人のエリート白人サッカー選手。年齢は25.72±4.02歳、身長183.72±5.86cm、体重79.91±6.31kg。ポジションは、各チームのコーチングスタッフの判断に基づき、以下のように九つに分類された。
ゴールキーパー(GK)57人、センターバック(CB)82人、フルバック(FB)73人、セントラルミッドフィルダー(MID)43人、ワイドミッドフィルダー(WM)66人、アタッキングミッドフィルダー(AM)42人、セカンドストライカー(SS)37人、エクスターナルストライカー(external striker;ES)52人、センターフォワード(CF)54人。
体組成の評価はインシーズン(10月)に各チームで実施され、24時間前からはカフェインとアルコールの摂取および激しい運動を禁止し、12時間前から絶飲食として翌朝に測定した。測定項目は、身長、体重、位相角、全身水分、細胞外水分、細胞内水分、除脂肪量、脂肪量、腕の除脂肪軟組織、脚の除脂肪軟組織。これらの多くの項目でポジションによる有意差が認められた。ここでは身長、体重、除脂肪量の結果についてのみ紹介する。
ポジション別の比較
身長
ポジション | 身長(cm) | |
---|---|---|
1 | GK | 189.15±3.50 |
2 | CB | 187.96±3.51 |
3 | CF | 187.74±4.73 |
4 | WM | 183.49±4.58 |
5 | AM | 181.80±4.78 |
6 | FB | 181.61±4.03 |
7 | MID | 179.87±4.81 |
8 | ES | 179.34±5.42 |
9 | SS | 177.49±5.08 |
身長が高いポジションの順に、GK 189.15±3.50cm、CB 187.96±3.51cm、CF 187.74±4.73cmで、以上3ポジションは全体の平均(183.72±5.86cm)より高身長だった。続いてWM 183.49±4.58cm、AM 181.80±4.78cm、FB 181.61±4.03cm、MID 179.87±4.81cm、ES 179.34±5.42cm、SS 177.49±5.08cm。
体重
ポジション | 体重(kg) | |
---|---|---|
1 | GK | 85.89±4.66 |
2 | CF | 84.73±5.54 |
3 | CB | 84.04±4.11 |
4 | WM | 78.54±5.58 |
5 | AM | 77.98±5.32 |
6 | FB | 77.48±4.31 |
7 | MID | 76.96±5.03 |
8 | SS | 75.92±4.40 |
9 | ES | 73.83±5.07 |
体重が重いポジションの順に、GK 85.89±4.66kg、CF 84.73±5.54kg、CB 84.04±4.11kgで、以上3ポジションは全体の平均(79.91±6.31kg)より高体重だった。続いてWM 78.54±5.58kg、AM 77.98±5.32kg、FB 77.48±4.31kg、MID 76.96±5.03kg、SS 75.92±4.40kg、ES 73.83±5.07kg。
除脂肪量
ポジション | 除脂肪量(kg) | |
---|---|---|
1 | GK | 74.14±4.06 |
2 | CF | 73.25±4.47 |
3 | CB | 72.73±3.63 |
4 | WM | 68.22±4.83 |
5 | FB | 67.73±3.82 |
6 | AM | 67.60±3.86 |
7 | MID | 66.96±4.22 |
8 | SS | 65.78±3.22 |
9 | ES | 63.90±4.61 |
除脂肪量が重いポジションの順に、GK 74.14±4.06kg、CF 73.25±4.47kg、CB 72.73±3.63kgで、以上3ポジションは全体の平均(69.3±5.29kg)より除脂肪量が多かった。続いてWM 68.22±4.83kg、FB 67.73±3.82kg、AM 67.60±3.86kg、MID 66.96±4.22kg、SS 65.78±3.22kg、ES 63.90±4.61kg。
フィールドライン別の比較
フィールドラインで、ディフェンス、ミドル、オフェンスに分けた比較でも、有意差が認められた。
ディフェンス | ミドル | フォワード | |
---|---|---|---|
身長(cm) | 184.97±4.92 | 181.99±4.91 | 182.03±6.77 |
体重(kg) | 80.95±5.33 | 77.93±5.36 | 78.49±7.08 |
除脂肪量(kg) | 70.38±4.47 | 67.69±4.41 | 67.92±5.97 |
身長が最も高いフィールドラインはディフェンスで184.97±4.92cm、次いでオフェンスが182.03±6.77cm、ミドルは181.99±4.91cmだった。
体重についても同様にディフェンスが最も重く80.95±5.33kg、次いでオフェンスが78.49±7.08kg、ミドルは77.93±5.36kgだった。
除脂肪量も同様に、ディフェンス 70.38±4.47kg、オフェンス 67.92±5.97kg、ミドル 67.69±4.41kgという順だった。
フィールドゾーン別の比較
フィールドゾーンで、センターとタッチライン寄りに二分した比較でも有意差が認められた。身長、体重、除脂肪量については以下のように、いずれもセンターのほうが高値だった。
センター | タッチライン | |
---|---|---|
身長(cm) | 185.16±5.55 | 180.97±5.14 |
体重(kg) | 81.68±5.92 | 76.70±5.18 |
除脂肪量(kg) | 70.76±4.85 | 66.68±4.54 |
身長はセンターが185.16±5.55cm、タッチライン寄りが180.97±5.14cmだった。体重は同順に81.68±5.92kg、76.70±5.18kg、除脂肪量は70.76±4.85kg、66.68±4.54kg。
この結果について著者らは、「ポジション別のトレーニングプログラムを立てるうえで役立つのではないか」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「How Do Football Playing Positions Differ in Body Composition? A First Insight into White Italian Serie A and Serie B Players」。〔J Funct Morphol Kinesiol. 2023 Jun 15;8(2):80〕
原文はこちら(MDPI)