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子どもの睡眠障害と食習慣は密接に関連している 42カ国20万人超の調査

小児から思春期の子どもたちの睡眠障害が食習慣と密接に関連していることが、42カ国20万人超の調査から明らかになった。朝食の欠食、野菜や果物の摂取頻度の少なさ、ソフトドリンクの摂取頻度の高さが、いずれも有意に睡眠が困難であることと関連しているという。

子どもの睡眠障害と食習慣は密接に関連している 42カ国20万人超の調査

子どもの睡眠障害は学業への支障となり、成人期の睡眠障害のリスク

「眠れない」「日中に眠気のためにパフォーマンスが上がらない」と感じている成人は少なくないが、同じことが子どもたちの間にも生じているようだ。研究によって差があるものの、青少年の睡眠障害の有病率は15~44%と報告されており、公衆衛生上の懸念材料となっている。青少年の睡眠障害は学業成績にマイナスの影響を及ぼすだけでなく、成人期の睡眠障害のリスク因子である可能性も指摘されている。

睡眠障害の一因として、日中の眠気を解消するためのカフェイン摂取、夜間のスマホ利用などブルーライト曝露を伴うスクリーンタイムの増加などが指摘されているが、食習慣の関与を示唆する研究報告も増えている。ただし、小児の睡眠障害と食習慣の関連はまだ十分に理解されていない。

11~15歳の子ども21万3,879人を対象に横断的解析

この研究は、各国の研究者と世界保健機関(World Health Organization;WHO)との共同研究として実施されている、子どもたちの健康行動に関する研究「HBSC(Health Behaviour in School-aged Children)研究」の2013/14年のデータを横断的に解析したもの。対象は42カ国の11歳、13歳、15歳の子どもたち、計21万3,879人に上る。

食習慣については、朝食を食べる頻度、および、野菜・果物・菓子・ソフトドリンクの摂取頻度に関する質問で評価した。睡眠障害については、「過去6カ月の間に、眠りにつくことが困難だった頻度はどのくらいか?」との質問への回答で判定した。そのほかに共変量として、BMI、身体活動量、世帯の経済状況などを把握した。

解析対象の子どもたちの特徴

解析対象21万3,879人の年齢は、11歳が32.2%、13歳が34.6%、15歳が33.2%で、男児が49.2%であり、BMIは19.5だった。自分の家が「かなり裕福」と答えたのが19.5%、「裕福」が34.4%、「平均的」が39.0%、「平均以下」が5.7%、「たいへん貧しい」が1.5%。身体活動の頻度は平均4.2回/週だった。

食習慣について

朝食摂取頻度は、平日に全く朝食を食べない子どもが15.7%、毎日食べるのは63.3%であり、週末に全く食べないのは7.1%、2日とも食べるのは79.5%。

野菜の摂取頻度は、全く食べないが4.5%、1日1回が19.0%、1日に2回以上が16.6%、果物については同順に3.0%、17.7%、20.2%。

菓子を全く食べないのは4.1%、1日1回が12.1%、1日に2回以上が11.7%、ソフトドリンクについては同順に11.1%、7.4%、10.4%。

睡眠障害について

毎晩睡眠が困難(every day)と回答した子どもが10.8%、週に2日以上(more than once/week)が10.4%、週1日程度(about every week)が11.0%、月に1回程度(about every month)が16.1%、ほとんどない(rarely or never)が51.7%だった。

栄養改善で睡眠改善

性別、年齢カテゴリー、BMI、身体活動の頻度、世帯の経済的状況の影響を調整したロジスティック回帰モデルにて、睡眠困難に該当しないオッズ比を算出すると、ほとんどの食習慣との有意な関連が認められた。

朝食を欠かさない子どもは睡眠障害でない確率が高い

平日に全く朝食を食べない子どもを基準として、ほかの子どもたちの睡眠障害に該当しないオッズ比をみると、週1回食べる子どもは有意差がなかった。ただし、週に2回食べる子どもはOR1.09(95%CI;1.03~1.16)で、睡眠障害に該当しない確率が有意に高かった。平日に朝食を毎日食べる子どもはOR1.49(1.45~1.54)だった。

週末の朝食については、全く食べない子どもを基準として、1日でも食べる子どもは睡眠障害に該当しない確率が有意に高かった(OR1.16〈1.10~1.22〉)。週末2日とも朝食を食べる子どもはOR1.49(1.43~1.56)だった。

野菜・果物の摂取頻度が高い子どもは睡眠障害でない確率が高い

野菜を全く食べない子どもを基準として、ほかの子どもたちの睡眠障害に該当しないオッズ比をみると、摂食頻度が週1回未満の子どもは有意差がなかった。ただし、週に1回でも野菜を食べる子どもはOR1.08(1.01~1.16)で、睡眠障害に該当しない確率が有意に高かった。野菜を毎日食べる子どもはOR1.09(1.02~1.17)だった。

同様に、果物を全く食べない子どもを基準として、ほかの子どもたちの睡眠障害に該当しないオッズ比をみると、摂食頻度が週1回未満の子どもは有意差がなかった。ただし、週に1回でも果物を食べる子どもはOR1.12(1.03~1.22)で、睡眠障害に該当しない確率が有意に高かった。果物を毎日食べる子どもはOR1.15(1.06~1.25)だった。

菓子やソフトドリンクの摂取頻度が低い子どもは睡眠障害でない確率が高い

菓子を1日に2回以上食べる子どもを基準として、ほかの子どもたちを比較すると、1日1回食べる子どもであってもOR1.17(1.12~1.22)で、睡眠障害に該当しない確率が有意に高かった。菓子の摂取頻度が週に1回未満の子どもはOR1.31(1.25~1.38)だった。

ソフトドリンクを1日に2回以上飲む子どもを基準として、ほかの子どもたちを比較すると、1日1回飲む子どもは睡眠障害に該当しない確率が有意に高いながら、週に5~6回飲む子どもは非有意だった。ただし、摂取頻度が週に2~4回以下の子どもは、以下のように、睡眠障害に該当しない確率が有意に高かった。週に2~4回でOR1.14(1.09~1.20)、週に1回でOR1.19(1.14~1.25)、週に1回未満でOR1.20(1.15~1.26)。

朝食を欠かさずに、菓子やソフトドリンクは週に数日までに制限

著者らは本研究を、「子どもの朝食や野菜・果物の摂取頻度を増やすことの重要性を裏付ける新たなエビデンスであり、睡眠習慣の改善には菓子やソフトドリンクの摂取を週に数日程度までに制限する必要性を示している」と総括。ただし、横断研究であること、摂取エネルギー量や栄養素のバランスが不明であることから、この関連のより深い理解のためにさらなる研究が必要と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Eating habits matter for sleep difficulties in children and adolescents: A cross-sectional study」。〔Front Pediatr. 2023 Jun 12;11:1108031〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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