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「親子だから食習慣が似ている」は過去のもの? メタ解析の結果、関連性は弱~中程度

子どもの食習慣は親に似てくると一般的に理解されているが、必ずしもそうとは言えないのではないかとする研究結果が報告された。システマティックレビューとメタ解析の結果、摂取エネルギー量や栄養素別の摂取量の相関係数は0.2前後にとどまるという。

「親子だから食習慣が似ている」は過去のもの? メタ解析の結果、関連性は弱~中程度

家族の伝統を引き継ぐ環境が急速に失われている

幼少期に身についた食習慣は、成人後にまで引き継がれることが多く、その食習慣が体格や生活習慣病、アレルギー性疾患のリスクを決定づける一因となり得ると考えられている。子どもの食習慣が親と似たものになるとすることは、無批判に「それはそうだろう」と思いがちだが、果たして本当だろうか。

本論文の著者によると、近年、親子の食習慣の類似性は従来考えられていたほど高くないとする研究報告が散見されるという。その理由として、伝統的な家族モデルが急速に薄れつつあり、親は親、子は子の時間を過ごすことが増え、食事の影響も及びにくい状況になってきたことが考えられるとのことだ。

ただ、それらの研究報告はサンプルサイズが小さいものが多く、エビデンスレベルは高くない。これを背景として本論文の著者らは、過去のこのトピックに関する研究を統合して検討するため、システマティックレビューとメタ解析という手法による研究を行った。

メタ解析対象研究の特徴

PRISMA(システマティックレビューとメタ解析のための優先報告事項)に準拠し、1980~2020年に、PubMed、MEDLINE、Embase、APA PsycNet、CINAHL、Web of Scienceという6件の文献データベースに収載された研究報告を検索。また、Google、Google Scholarなどを用いて灰色文献(雑誌や業界紙を含む学術書ではないメディアの刊行物)も検索した。合計8,040件の報告がヒットし、包括基準に基づき61件が適格と判断され、そのうち45件がメタ解析の対象とされた。

包括基準を満たした研究の大半(95.1%)は高所得国で行われたもので、国別では米国が最も多く42.6%、続いて欧州が34.4%、オーストラリア13.1%であり、カナダ、日本、韓国が各1件(1.6%)で、その他の3件は低~中所得国からの報告だった。全体の80.2%が2000年以降の報告だった。研究デザインは3分の2以上(47件)が横断的研究で、残りの3分の1未満(14件)は縦断的研究だった。

親子のペアのサンプルサイズは36~4,707の範囲であり、子どもの平均年齢は10.6±4.6歳だった。食習慣の把握ツールとして、食物摂取頻度調査票(food frequency questionnaire;FFQ)が37.7%、食事日誌が19.7%、24時間思い出し法が13.1%で使われており、14.8%は複数のツールを組み合わせて評価していた。

親子の摂取量の相関は弱~中程度

メタ解析の結果、親と子どもの摂取量の相関係数(r)は0.19~0.32の範囲であり、全体的に弱い相関が認められた。具体的には以下のとおり。摂取エネルギー量はr=0.19(95%信頼区間0.17~0.22)、炭水化物はr=0.24(同0.20~0.27)、タンパク質r=0.22(0.19~0.25)、脂質r=0.20(0.14~0.26)。

食品群別にみた場合は、野菜や果物において栄養素別の検討よりわずかに相関が強く、r=0.28(0.25~0.31)だった。ただし菓子類はr=0.20(0.17~0.22)だった。全体的な食事摂取量(whole diet〈the overall food consumption of an individual〉)はr=0.32(0.27~0.38)で、相関がやや強く中程度だった。

報告地や報告年、調査法などによる違いも明らかに

報告地や報告年、調査法などによる違いも明らかになった。有意差のみられた項目は以下のとおり。

報告国別の比較

研究が行われた国別に解析すると、米国からの報告は他の地域からの報告に比べて、親子間の食習慣の類似性が低い傾向がみられた。摂取エネルギー量の相関については有意差がなかったものの、脂質は米国で相関がr=0.07と極めて弱いのに対して、欧州ではr=0.30、オーストラリアはr=0.21だった。タンパク質は、米国ではr=0.27、欧州でr=0.30と比較的相関が強い一方、オーストラリアはr=0.16だった。炭水化物や野菜・果物、菓子類の相関は国による有意差がなかった。

報告年代別の比較

報告年代別にみた場合、新しい報告よりも古い報告のほうが、親子間の食習慣の類似性が高い傾向が認められた。摂取エネルギー量の相関については有意差がなかったものの、脂質は1990年代がr=0.34であったのに対して、2000年代はr=0.07だった。同様にタンパク質も1990年代がr=0.30であったのに対して、2000年代はr=0.10だった。

食習慣評価ツール別の比較

食習慣の評価ツールによる結果の相違も観察された。例えば摂取エネルギー量は、FFQでの相関はr=0.14と弱い相関にとどまっていたが、24時間思い出し法ではr=0.21、食事記録ではr=0.20だった。また脂質は、FFQがr=0.19、24時間思い出し法がr=0.11に対して、食事日誌はr=0.34と高値だった。果物・野菜については反対に、FFQがr=0.27、24時間思い出し法がr=0.33と比較的高値だったのに対して、食事日誌はr=0.18と比較的低値だった。

研究デザイン別の比較

タンパク質摂取量について、横断研究ではr=0.17であるのに対して、縦断研究ではr=0.26だった。

子どもの年齢別の比較

幼児(2~5歳)と小児(6~12歳)に分けて比較すると、脂質は幼児がr=0.02と相関が極めて弱く、小児も弱いながらr=0.08であり有意差があった。タンパク質は幼児がr=0.15、小児がr=0.13だった。

著者らは、「親子のペア間の食習慣の類似性は、ほとんどの側面において弱から中程度の相関だった。この結果は、親の食事摂取行動が子どもの食事摂取量を左右するという社会通念に疑問を投げかけるものと言える」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「The myth and reality of familial resemblance in dietary intake: a systematic review and meta-analysis on the resemblance of dietary intake among parent and offspring」。〔EClinicalMedicine. 2023 Jun 2;60:102024〕
原文はこちら(Elsevier)

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