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十代の若者の朝食摂取率を上げるために必要なこと 欧州23カ国60万人の調査

若い人に朝食欠食が多いという問題は、日本だけのことではないらしい。欧州23カ国、約60万人の十代の若者の朝食摂取状況を、2002~18年にわたって調査した結果、毎日朝食を食べている比率が大半の国で有意に低下していたという。また、経済的に恵まれている家庭ほど子どもの朝食摂取率が高いという関連も明らかになったとのことだ。

十代の若者の朝食摂取率を上げるために必要なことは? 欧州23カ国60万人の調査

約20年間のヨーロッパの国々の十代の若者の朝食摂取状況の推移

朝食は1日の食事の中で最も重要な食事と考えられている。ところが日本では、男性の15%、女性の10%程度が朝食を欠食していて、とくに若年層でその割合が高いことが、国民健康・栄養調査などから明らかになっている。どうやらこのような事態は日本だけではなく、多くの国で起きていることのようだ。

今回報告された研究は、欧州と北米の研究者と世界保健機関(World Health Organization;WHO)との共同研究として実施されている、子どもたちの健康行動に関する研究「HBSC(Health Behaviour in School-aged Children)研究」のデータを解析したもの。HBSC研究はこれまでに、2001/02年、2005/06年、2009/10年、2013/14年、2017/18年と、過去20年弱の間に5回にわたって行われてきており、さまざまな指標の変動を分析できる。調査対象年齢は、11歳、13歳、15歳。今回発表された報告では、朝食摂取状況が分析されている。

論文のイントロダクションによると、本研究は同一プロトコルの下で欧州各国の若者の朝食摂取率の長期間にわたる推移を示した初の研究だという。

毎日朝食を欠かさない割合は、国によって38.1~72.1%に分布

朝食摂取状況の評価には、DBC(daily breakfast consumption.毎日の朝食摂取)という指標が使われた。1週間のうち朝食を食べる曜日の数を問い、それが7の場合、つまりすべての曜日に朝食を食べている場合を「DBC」とし、0~6の場合、つまり1週間のうち1日でも朝食を欠食している場合は「非DBC」として、全体を二分した。

このDBCに関連する社会経済的因子として、以下の質問によって家庭の豊かさを評価した。質問とは、「あなたの家庭は車を保有しているか?」、「自分専用の寝室はあるか?」、「過去1年間に家族旅行に行った頻度は?」、「家族全員が持っているパソコンの台数は?」という内容。このほか、両親と暮らしているか、一人親かについても質問した。

DBC最高はオランダ、最低はスロベニア

解析対象は23カ国・地域の58万9,737人であり、男児が48.8%だった。DBCは、スロベニアの38.1%からオランダの72.1%の範囲に分布していた。

性別で比較すると、全体的に男子より女子のDBCのほうが低い国が多くみられた。単年で最も低いDBCは、2014年のマケドニアの男子(25.2%)と女子(26.3%)だった。

家庭の経済的豊かさ

家庭の経済的な豊かさを3層に分けた場合に、最も豊かな層に該当する割合は、ウクライナが最も少なく7.9%で、最も高い国はノルウェー(60.0%)だった。中程度の豊かさの家庭が最も少ないのはノルウェー(36.0%)であり、反対にスペイン(56.6%)はその割合が最も高かった。最も貧困と分類される家庭の割合はノルウェー(3.5%)が最も少なく、ウクライナ(44.6%)が最も高かった。

両親との同居

両親と同居している子どもの割合は、ロシアが最も低く55.5%であり、マケドニアの86.9%が最も高かった。マケドニアは一人親世帯の子どもが最も少なく8.6%で、その割合が最も高いのはスコットランド(29.4%)だった。

経済的に豊かな家庭の子どもはDBCが高い

3層に分けた家庭の経済的な豊かさで、最も豊かな層に該当する層のDBCを国別に比較すると、最低はスロベニアの37.3%、最高はオランダの72.7%だった。同様に、中程度の豊かさの家庭のDBCは、最低は同じくスロベニアの34.2%であり、最高はポルトガルの65.8%だった。最も貧困と分類される家庭のDBCは、最低はやはりスロベニアで31.3%、最高はオランダで61.2%だった。

ロシアとラトビア以外の大半の国では、経済的に豊かな家庭の子どものDBCが高く、貧しい家庭の子どもは低かった。家庭の経済状況と子どもの朝食摂取率との関連が最も強い国はドイツで、貧しい家庭を基準とする恵まれた家庭の子どもがDBCであるオッズ比は2.09(95%CI;1.89~2.31)だった。

一人親世帯の子どもは朝食欠食が多い

次に、両親との同居か否かと朝食摂取状況との関連を解析すると、調査したすべての国で、一人親の家庭の子どもは両親とともに暮らしている子どもよりも、DBCが低いことが明らかになった。具体的には、両親がいる家庭で暮らす子どものDBCは、37.1%(スロベニア)~72.9%(オランダ)の範囲だったが、一人親の家庭の子どもは31.6%(スロベニア)~63.1%(オランダ)の範囲に分布していた。両親と暮らしている子どもと一人親の子どものDBCの乖離が最も大きな国はノルウェーで、オッズ比は1.72(1.60~1.84)だった。

23カ国中17カ国でDBCが有意に低下

最後に経年変化に目を向けると、2002年から2018年にかけて、DBCが有意に上昇していたのはオランダとマケドニアの2カ国のみであるのに対して、4カ国(英国、チェコ、アイルランド、ノルウェー)は有意に変化がなく、その他の17カ国は有意な低下、つまり、毎日朝食を食べる子どもの有意な減少が観察された。

子どもたちの朝食欠食の原因を特定することの重要性

以上からの結論として著者らは、「今回の研究の結果はDBCが増加傾向にないことを示しており、若者の朝食摂取率を上げるための戦略の必要性を物語っている。また、朝食摂取における社会的不平等を減らすために、さらなる努力がなされるべきで、すべての生徒が栄養価の高い朝食を確実に摂取できることを目的とした取り組みが求められる」と述べている。

さらに、「今回得られたエビデンスは、朝食欠食の原因を調査することの重要性を浮き彫りにしている。その原因は、さまざまなサブグループ間で異なる可能性がある。新型コロナウイルス感染症のパンデミック、戦争、インフレなどの最近の政治的、社会的、経済的事象を考慮して、今後も子どもたちのDBCを監視し続ける必要性を指摘したい」と記している。

今回の研究では、恵まれていないと判定された家庭が最も多く、恵まれていると判定された家庭が最も少なかった国はともにウクライナであり、戦争が同国の子どもたちの食事により影響を及ぼしていないか懸念される。

文献情報

原題のタイトルは、「The Correlation between Adolescent Daily Breakfast Consumption and Socio-Demographic: Trends in 23 European Countries Participating in the Health Behaviour in School-Aged Children Study (2002–2018)」。〔Nutrients. 2023 May 24;15(11):2453〕
原文はこちら(MDPI)

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